著者紹介
2017年6月25日初版のワニブックスPLUSから出版された本で著者は藤田絋一郎氏です。藤田氏は1939年生まれで長崎大学教授などもされた高名な医師で、腸よりも感染症で有名です。2021年に81歳でお亡くなりになられたようです。
隠れ病は「腸もれ」を疑え!
内容
2014年に健常な人の50人中2人に血液中から腸内細菌がみつかり、糖尿病患者50人中14に人から腸内細菌が検出されたと報告されました。
腸には多くの免疫システムが備わっており、免疫の7割を担っているとされています。腸漏れの最大リスクは、体内への異物への侵入を腸が許すことにあります。
腸もれにより炎症が全身に波及し、動脈硬化を引き起こすことや、血管性の認知症、うつ病、がんの発生にも関与するかもしれません。また小児期にそれが起こると重篤なアレルギーを起こす可能性もあり、アナフィラキシーであれば原因もはっきりしますが、遅延性のアレルギーの場合は原因が同定出来ないこともよくあります。過敏性腸症候群も以前はストレスが原因と言われていましたが、最近は腸もれによるアレルギーではないかとも言われています。
腸もれの原因は腸内細菌叢が悪玉菌優勢となり、消化管保護粘膜が傷つけられ細胞と細胞の間は緩み、その状態が長引くとさらにゆるみが広がってしまいます。現代人の腸内細菌数は少なく腸内バランスが乱れやすくなっています。
腸内フローラが良好になると短鎖脂肪酸を作り出し、腸壁を保護する粘液の生成や水分や栄養素の吸収に関わります。
腸内細菌にとって最も良好なエサは食物繊維ですが、近年はその摂取量が減少しています。また食品添加物の摂取も一因と思われ、保存料のみならずpH調整剤や乳化剤も腸内細菌にダメージを与えます。
ストレスは腸内細菌バランスを崩し、腸内で放出されるカテコラミンが大腸菌などの菌に対して病原性増強効果を引き起こし、抗生剤にて腸内細菌のバランスも崩してしまっています。
水溶性の食物繊維が腸もれを防ぎます。水溶性食物繊維を多く含む食品は、昆布やわかめなどの海藻類、豆類・ごぼう・里芋・ニンジンなどの根菜、ニンニク・梅干し・アボガド・かんぴょうなどで、日本人では海藻類が勧められます。不溶性食物繊維も重要で、豆類、イモ類、キノコ類に豊富に含まれます。おからや、切り干し大根やかんぴょうなどの乾物にもおおいです。
腸内細菌を増やすには発酵食品が勧められ、味噌にはたくさんの善玉菌が含まれています。
オリゴ糖は熱や酸に強く、胃で消化されずに腸まで到達しやすく、大豆やゴボウや玉ねぎに多く含まれます。
腸内細菌叢をよくする調味料に酢があります。酢には血圧降下作用や血糖の急上昇を防ぐことやカルシウムの吸収率を上げて骨粗しょう症の予防にもなります。
小腸の粘膜を保つには良好なグルタミン酸が必要で、グルタミン酸は海藻類や白菜、緑茶、イワシ、トマトなどに含まれます。納豆のねばねばはポリグルタミン酸といってグルタミン酸の集合体です。
抗酸化作用が強く抗がん効果が高いものとしてニンニクが挙げられ、抗炎症としてポリフェノールとリコピンがあり、免疫力の強化に働く食物繊維の仲間であるβグルカンも重要で、キノコ類に多く含まれます。
高食物繊維、低脂肪・低糖質にすると太らせにくい腸内細菌が増えます。
調理に使う油にはオメガ3.6.9脂肪酸がそれぞれあり、オメガ3.6脂肪酸は必須脂肪酸と呼ばれています。脂肪酸は細胞膜の原料となり、オメガ3脂肪酸は細胞膜を柔軟にして炎症を抑える働きをし、オメガ6脂肪酸は細胞膜を固く丈夫にして炎症を促します。オメガ3脂肪酸は亜麻仁油、エゴマ油の他に魚介類、ホウレンソウ、チンゲン菜に含まれ、オメガ6脂肪酸は日常的に使用する油に大量に含まれ、加工食品にも多数含まれます。1:4が理想ですが、実際は1:10-50でオメガ6脂肪酸の過剰摂取となっています。オメガ3脂肪酸は酸化しやすく摂取は生が基本です。オメガ3脂肪酸は認知症やがんの予防にも有用とされています。チアシードにはオメガ3脂肪酸が大量に含まれます。食物繊維も豊富ですが、発芽毒があるため、水に浸すことと摂りすぎないようにすることです。オリーブオイルはオメガ9脂肪酸が8割以上含まれるため、加熱する油はオリーブオイルにしましょう。ポリフェノールやビタミンEも多く含まれます。低温圧搾のエキストラバージンオイルがいいです。バターには短鎖脂肪酸の酪酸が含まれ少量ならいいです。マーガリンはトランス脂肪酸のためよくありません。
ヨーグルトの上澄み液のホエイにはインクレチンの分泌を促しインスリンの分泌をよくしてくれる作用があります。ホエイには脂肪が含まれず腸内細菌が整えられます。
ヨーグルトには脂肪分や糖分なども入っていて、善玉菌も多く含まれますがその人に合っているのかはわかりません。乳酸菌の分泌物と菌体成分をエキス化した乳酸菌生成エキスはその人に合った乳酸菌を増やしつつ悪玉菌の増殖を抑えます。
超清潔志向は問題で皮膚も洗いすぎるとかえって不潔になり感染症に罹患しやすくなります。石鹸で手を洗いすぎると皮膚常在菌の90%が洗い流されてしまい、界面活性剤の入っている石鹸ではもっと流されてしまいます。流水10秒で十分です。
腸は37度の時が最も活動力が高いです。頭皮にも皮膚常在菌がいるのでシャンプーも少量にします。普通の臓器は交感神経が優位の時は働きを活性化させますが、腸はリラックスタイムに活性化させます。腸は新陳代謝のスピードが速く、体内時計が狂うと細胞間の連結が緩みやすくなります。朝日を浴びると体内時計はリセットされるので、朝に起きる時間はなるべく変えない方がいいです。眠りを促すメラトニンは朝日を浴びてから15時間後に分泌が盛んになります。
美容のため肛門から37度のお湯などを注いで腸にたまった老廃物や宿便をとる腸洗浄がありますが、腸内細菌フローラを破壊し、腸洗浄しないと便が出ない体になります。
便秘は体内時計に従った生活と腸によい食事で朝食をとるとよくなります。朝食をとらないと超粘膜が萎縮し、腸管の働きが悪くなり吸収能力や排泄尿力が低下します。朝食は体内時計を整える最低限の栄養で十分です。腸の働きには運動も大事です。心の在り方も大事で、日常生活に満足を感じている人ほど体内での慢性炎症は抑えられます。
感想
腸もれの話は少しだけで、一般的な腸の重要性などで、題名から思っていた内容とはちょっと違いました。