著者紹介
2022年初版の主婦の友社より発刊された本で、著者は大谷義夫氏です。大谷氏は1963年生まれで群馬大学医学部卒業の呼吸器内科医で、2009年から開業されています。
「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK
内容
食事をするとき、むせたり、咳き込んだりすることは誤嚥ですが、せきをすることで気道に入った飲食物を気道の外に出そうとするせき反射がおき、これは病気ではありません。40代後半で若い頃よりこういうことが増えたりせきの時間が増えていたらのどの機能の衰えが始まっている可能性があります。
誤嚥してもせきをして気づく場合を顕性誤嚥といい、これで肺炎になることはめったにありません。夜間睡眠中に唾液などを誤嚥する場合は気づかず不顕性誤嚥といいます。夜間はせき反射が低下するので、口の中にいる細菌を含む唾液が気道に落ちて肺炎を起こすことがあり、これを誤嚥性肺炎といいます。50歳未満で誤嚥性肺炎を起こす人はいませんが、年齢が上がるにしたがい比率が増えますが、加齢による免疫力の低下もあります。
新型コロナウイルスを含まない肺炎でなくなる日本人は2020年の統計では97.6%が65歳以上となっています。高血圧や糖尿病などで動脈硬化が進んでいると脳の嚥下反射やせき反射を起こす機能が低下して誤嚥しやすくなります。逆流性食道炎も誤嚥性肺炎のリスクです。飲み込む力が衰えると誤嚥しやすく、のどの筋力が必要で、会話が少ない生活ではのどの筋肉を使わないのでだんだん筋力が衰え、のどの違和感や声のかすれものどの筋力が低下している可能性があります。
誤嚥性肺炎の主な原因は4つで、一つ目は免疫力の低下でワクチンで確実に免疫力を上げる方法があります。二つ目は動脈硬化で、脳の微細な血管が詰まるラクナ梗塞があると、せき反射を促すサブスタンスPが作られにくくなります。三つ目は逆流性食道炎で、早食いや食べ過ぎや肥満などが原因になります。四つ目は口腔機能の低下で、原因は複合的で、虫歯や歯周病や入れ歯が合わないことで低下しやすく成ります。
胃ろうの人でも不顕性誤嚥は避けられず誤嚥性肺炎を起こすことがあり、口腔ケアが必要です。
30秒間で唾液の飲み込みが何回できるかで飲み込み力がわかります。10回以上なら問題なく、5回以下なら飲み込み力はかなり低下し誤嚥性肺炎のリスクがあります。6-9回はのどトレを始めましょう。
肺炎は咳、発熱、全身のだるさ、食欲不振の症状があり、かぜと似ていますがまったく違う病気です。かぜはのどや鼻などの上気道にウイルスなどが増殖して炎症を起こす病気で、肺炎は細菌などの病原体が肺まで侵入して炎症を起こす病気で、高熱が続くこともあり重症ですが、高齢者の場合免疫力が低下しているため微熱にとどまることがあります。そのため肺炎と気づかず放置しているうちに重症化することがあるので注意が必要です。息が浅くなる、ぐったりする、食欲がなくなる症状が3-4日続いたら肺炎かもしれません。肺炎かどうかは聴診器で雑音の確認や、血液検査と画像検査するのが一般的です。
肺炎は繰り返しやすいため予防が重要です。肺炎で入院すると短期間でも体力や筋力が低下し、心身の機能が低下してだんだん機能しなくなり、外出を避けると認知機能の低下や飲み込む力が弱くなり誤嚥しやすくなります。
筋肉量は20代でピークを迎え40代くらいから減少します。のどの筋肉も例外ではなく、筋力が低下するとのど仏の位置が下がります。肺炎予防には生活習慣を改善してのどの機能を落とさないことが重要です。のどの筋肉を鍛える飲み込みトレーニング、呼吸筋トレーニング、口腔ケアとラクナ梗塞予防です。飲み込み力の低下は唾液の分泌が減少することも一因で、唾液の飲み込みを30秒間に5-6回を目標に食事前にすることが有効です。よく噛むと唾液の分泌量は増えます。発声力の衰えは飲み込み力も低下するため、よく会話することや、早く口言葉や本の音読が効果的です。カラオケも毎日できればいいと思います。運動やバランスのいい食事を心がけるのも大事で、免疫力の維持にも必要です。歯科検診で歯周病などもみてもらいましょう。海外でのデータでは肺炎で入院すると認知症発症リスクが2.24倍になりました。
英国の雑誌の報告では肺炎球菌ワクチンを接種すると肺炎球菌肺炎の発症を60%以上低下させ、すべての肺炎を約45%減少させました。
歯みがきについて、回数については歯科医師の中でも意見が分かれ、みがき方によって歯のエナメル質を傷めるので注意が必要ですが、就寝前にしっかりみがくことをおすすめします。舌の灰白色や黄白色の苔のような舌苔には細菌が潜んでいることもありますので、舌もみがきましょう。
口呼吸は病原体が侵入しやすくなり、鼻呼吸は鼻毛や鼻粘膜がフィルターとなり防いでくれます。口呼吸しがちな人は舌を上あごにくっつける練習をして鼻呼吸を習慣にしましょう。水分摂取も有効です。寝ているときには口に医療用テープを貼るのも効果的です。
肥満の人は生活習慣病を発症しやすいので、体重が増えてきたらダイエットを心がけましょう。体力を落とさないために、1日3食タンパク質をとることが大事です。朝起きて水一杯飲む習慣をつけるといいでしょう。適度な運動と6時間以上の睡眠を確保しましょう。
肺炎予防にいい栄養素は葉酸で、脳内神経伝達物質のドーパミンに必要で、レバー、ほうれん草、ブロッコリーに含まれます。ビタミンDは急性呼吸器感染症のリスクを12%下げると報告され、魚、卵、キノコ類に含まれ、日光に当たることでも体内で合成されます。食後すぐに横になると胃液が食道に逆流しやすくなるので、食後90分は横にならないようにしましょう。
1日6時間以上座っている人は3時間未満と比べて死亡リスクが19%高くなる報告がありますので、短時間でもいいので立ったり散歩にいきましょう。
睡眠時間が7時間以上の人と比べ、6時間未満は4.2倍かぜにかかる確率が上がり、5時間未満は4.5倍でした。寝付きが悪くならないように入浴は寝る1-2時間前に済ませて、ベッドに入ってからはスマホはやめましょう。
呼吸筋が鍛えられ肺活量もアップする呼吸筋ストレッチの代表的な4つは、背中丸めストレッチ、両手伸ばしストレッチ、胸の呼吸筋ストレッチ、おなかとわき腹の呼吸筋ストレッチです。飲み込み力を高めるには、唾液腺マッサージをして唾液を増やすこととのど筋トレです。唾液腺は顎下腺、舌下腺、耳下腺の3つあり、それぞれマッサージします。のど筋トレはのど仏野あたりに力が入るように手とおでこの押し合い運動、親指とあごの押し合い運動口角引き上げ運動、寝たまま首持ち上げ運動があります。会話のために大事な筋肉の一つが舌で、滑舌よくするためには早口言葉が効果的です。ベロ出し運動で鏡を見ながらベロを大きく動かしてみましょう。口をしっかり動かす「ぱ」「か」「た」をそれぞれ10回ずつはっきりと発声すると唇や喉や下の運動になります。
感想
30秒間で唾液の飲み込みが何回できるか試してみました。結果は7回、むせることはあまりないと思いますが、意外と嚥下機能落ちているかもしれません。早いうちからトレーニングしてもいいかもと思いました。