著者紹介
2021年5月31日初版の主婦の友社より発刊された本で著者は柳澤厚生氏です。柳澤氏は国際オーソモレキュラー医学会の会長をされています。
新型コロナに対してという題名ですが、本文中にもあるように亜鉛は新型コロナだけでなくがんの予防や精神疾患に対しても有効なので、栄養のカテゴリーにしました。
新型コロナウイルスはビタミンC、D、亜鉛で克服できる!
内容
トランプ大統領が新型コロナにかかり改善しましたが、亜鉛とビタミンDを投与されていました。投与量については発表されませんでしたが、1日投与量はビタミンDは1000IU(250μg)、亜鉛は100mgくらいでしょう。
新型コロナウイルスが猛威を振るったとき国際オーソモレキュラー医学会からの提言で
・ビタミンC:3000mg/日(またはそれ以上を2回から数回に分けて服用)
・ビタミンD:2000IU/日(5000IU/日で開始、3週目から2000IU/日)
・亜鉛:20mg/日
・セレン:100μg
・マグネシウム:400mg/日(クエン酸・リンゴ酸・塩化マグネシウムとして)
実際に感染した場合はビタミンCを12.5-25g点滴し、1日1-2回、2-5日連続でします。
アメリカではビタミンCやビタミンDの有効性が多く発信されましたが、日本ではそのような報道は認めませんでした。国民皆保険や混合診療ができない制度上のことや、栄養士の立場が弱いことなどが考えられます。しかし日本でもサプリメントのビタミンD売り上げが数倍以上になったという情報もありました。
多くの現代人は栄養不足に陥っており、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛の補給が必要です。しかしこれらが不足していてもすぐには体に変調はきたさないため、医師も本人も欠乏に無関心なのです。これらの栄養素は新型コロナだけに限らず。インフルエンザやがんやうつにも有効なのです。薬のように効くのではなく、本来の細胞の機能を復活させて、予防と治療に効果を発揮するのです。
風邪にはビタミンCが効きます。風邪症状を緩和するだけでなく発症の予防効果もあり、1日3000mgの摂取が推奨されました。日本人は100mg/日の摂取が基準と定められていますが、新型コロナの感染予防や重症化予防のためには2000-3000mgの摂取が必要です。なぜビタミンCが有効かというと白血球やリンパ球はたくさんのビタミンCが必要だからで、リンパ球を活性化しインターフェロンを増やします。またビタミンCには抗酸化作用もあります。ビタミンCは体内では合成できず、体外への排出スピードも速く、ストレスで急速に消費されてしまいます。
中国で新型コロナに対してビタミンCの12gを1日2回投与とプラセボを比べると死亡率が54%に低下しました。
ビタミンC大量投与は副作用はありません。余剰分は速やかに尿中に排泄されるからです。
ビタミンDの濃度と新型コロナの死亡率は反比例するという研究があります。北緯20度以北と南緯20度以南でビタミンD欠乏が見られますが、太陽光を浴びる時間が減少するからで、新型コロナの第一波は冬の北緯20度以北が中心でした。ビタミンDを正常濃度の30ng/ml以上に保っていれば新型コロナを予防し感染しても重症化になりにくい可能性があります。スペインの研究では新型コロナに感染してもビタミンDの投与で重症化を防ぐことができました。私はビタミンDの血中濃度を40-60ng/mlを保つべきだと考えます。慶應大学医学部付属病院の女性勤務者571人のビタミンD血中濃度の正常者は30%未満で、50%前後が低下状態でした。私の血中濃度は60ng/mlを保っていますが、10年以上ビタミンDのサプリメントを毎日3000-4000IU摂取しているおかげでしょう。
ビタミンDには免疫を調整するはたらきがあり、免疫の土台を作る役割を担います。新型コロナのみならずほかの感染症やがんや自己免疫疾患の予防にもなります。骨と筋力の維持にも必要です。
ビタミンDは食事から摂取も考えられ、サケやメカジキやイワシといった魚に多く含まれ、1日2000IUの摂取を目指しますが、サケ1.5切れに該当します。日光を浴びて増やすことも考えられます。日焼けの原因の紫外線UV-BがビタミンDを作ります。1日30分程度外出して日光を浴びる必要があります。サプリメントで摂ることも考えられます。最近ではドイツで開発された検査キットでビタミンDを15分で測定できるようになりました。
脂溶性ビタミンのため過剰摂取を心配される方もいますが、サプリメントの摂りすぎで体調が悪くなったというケースは起こっておらず、1日1万IUまでは毎日飲んでも大丈夫とされています。骨粗鬆症で活性型ビタミンD3製剤を服用されている方は主治医と相談するか血中濃度を測りましょう。
亜鉛は2-4g体内に存在し、味覚や嗅覚を正常に保つ作用がありますが、細胞分裂、ホルモン合成、免疫反応の調整にもかかわっています。普通に食事していれば不足することはありませんが、食品の加工の過程で失われて偏った食事では不足傾向になります。
血中濃度が上がるとリンパ球の一種であるT細胞を増やす効果があります。細胞内に亜鉛が多くあるとコロナウイルスのようなRNAウイルスの複製を阻害します。急性感染症時に経口で亜鉛を摂取しても短時間で細胞内に亜鉛を届けることは困難ですが、クロロキンと亜鉛を同時に投与すると細胞内に亜鉛を迅速に届けることができます。
亜鉛は牡蠣や豚レバー、チーズ、卵黄、アーモンド、抹茶、胡麻などに多く含まれますが、加齢とともに亜鉛の吸収能力が低下するため、70代以降の女性は要注意です。
ビタミンC・D、亜鉛の働きをよくしてくれる他の栄養素としてお茶に含まれるカテキン、必須微量ミネラルのセレンがあります。セレンは体内に10mg程度しかありませんが、酵素反応や抗酸化作用があり、ビタミンCと摂取すると免疫機能が上がります。土壌中に含まれその土地の野菜・果物・家畜に反映され、新型コロナが発生した武漢は土壌中のセレン濃度が低いことがわかっています。日本の土壌にはセレンが多く含まれて吸収率も高いため、通常の食事をしていればセレン不足になることはないと思われます。約600種類の酵素の働きを助けるマグネシウムもあり、約57%は骨に、約40%は臓器や筋肉に存在しており、骨の健康にはマグネシウムの重要性も高まっています。エネルギーを生み出すATPを作り出すことに必要で、またビタミンDを活性化するために欠かせないミネラルでもあります。マグネシウムは緑色野菜に多く含まれ、海藻類や大豆食品や玄米にも多く含まれます。入浴剤の硫酸マグネシウムは皮膚全体から体内に入ります。ストレスにさらされるとマグネシウムは体外にどんどん排泄されてしまいます。体に良いオイルとされているω3脂肪酸は食事から摂取しないといけない必須脂肪酸です。ω3は食材が非常に限定的のため不足しやすいです。皮膚や関節の抗炎症作用があり、中性脂肪やコレステロールの低下作用、アレルギー抑制作用、免疫機能のサポートなどが期待できます。ω3が多く含まれるものに魚、亜麻仁油、シソ油、荏胡麻油などがあります。油類は熱に弱いので生で摂りましょう。サバ、サンマ、イワシに多く含まれるEPAやDHAはω3脂肪酸です。ケルセチンというポリフェノールは、レタスやブロッコリーなどの野菜に多く含まれ、玉ねぎや柑橘類やリンゴなどにも含まれます。亜鉛の吸収率を高めたり、細胞内に取り込みやすくさせます。
感想
当時のトランプ大統領が新型コロナ感染症に対して亜鉛を使用するちょっと前から亜鉛の効果は知っていましたが、実際のところ亜鉛の不足する人はどのくらいいるのか、投与でどのくらいの効果があるのか、わからないところが多く今後に臨床データの集積が望まれます。