弱った体がよみがえる!「亜鉛」健康法

著者紹介

2022年12月6日初版のPHP研究所から発刊された本で著者は栗原毅氏です。栗原氏は肝臓学会専門医のクリニック院長です。

本の中には栄養士さんの協力で亜鉛レシピも21個あります。

 

弱った体がよみがえる!「亜鉛」健康法

内容

亜鉛は体中に2g存在しています。人体に欠かすことのできないミネラルは16種類あり亜鉛はそのうちの一つです。それ以外はカルシウム、リン、カリウム、硫黄、塩素、ナトリウム、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルトです。これらは体内では作ることできず摂取しなくてはいけません。肝臓で作られる酵素のアルカリホスファターゼ(ALP)は亜鉛を必要とするため、血清ALPが低値の場合亜鉛が不足しているか肝臓が弱っていることがわかります。

 

血液中の亜鉛の量は健康な人は80-130μl/dlですが、60μl/dl未満は欠乏症と推測されます。

亜鉛は筋肉に最も含まれ、骨、皮膚、毛髪の順に含まれます。臓器では肝臓、膵臓、脾臓、目を形成する網膜、脈絡膜、毛様体で、脳にも含まれています。男性では前立腺、女性では卵巣に含まれています。

亜鉛は成人女性では1日8mg、男性では11mgを食事から摂取することが推奨され、妊婦は10mg、授乳婦は12mgとなっています。

亜鉛は肉や魚に多く含まれます。圧倒的に多いのは牡蠣です。摂取しても吸収が悪いと亜鉛不足になりますが、正常な人でも吸収されるのは20-40%です。珈琲、オレンジジュース、カルシウム、フィチン酸は亜鉛の吸収を妨げます。肝臓や腸の病気でも吸収が悪くなることがあり、加齢によっても吸収力は落ちます。激しいスポーツをするアスリートの中には汗や尿から亜鉛が排出して亜鉛不足となり貧血になることがあります。関節リウマチ、パーキンソン病、痛風、糖尿病、不眠症、うつ病などの治療に使われる薬の中には亜鉛の排出を促すものもあります。

 

亜鉛の働きは多様ですが酵素の材料になります。体内には5000の酵素がありますが、そのうち300の材料となります。代表的なものにSODがあり、老化やがんの原因となる活性酸素の除去をします。ホルモンにも亜鉛は欠かせません。インスリンには亜鉛が必要です。DNAの複製に欠かせないジンクフィンガーにも亜鉛が使われ、舌に味を感じる味蕾があり、個々の細胞は新陳代謝が速く10-30日で新しく入れ替わるのですが、亜鉛が不足すると味覚障害が現れることがあります。脳の海馬にも多く含まれ、亜鉛が不足すると無気力やうつ病につながることが知られています。

皮膚に含まれる亜鉛は特に表皮に多いです。皮膚を作るコラーゲンの生成にはビタミンCと亜鉛が必要です。髪の毛を構成する主要なたんぱく質のケラチンの合成を助け、ケラチンの不足で紙が細くなり白髪や抜け毛の原因となります。5αリダクターゼという酵素が男性ホルモンと結びついて抜け毛を促すのですが、亜鉛は5αリダクターゼを阻害する働きがあります。亜鉛不足で爪がもろくなります。

感染症の急性期には肝臓でアミノ酸の取込みが増えるのですが、アミノ酸に結合している亜鉛も同時に取り込まれて血中の亜鉛が少なくなります。

亜鉛はRNAを複製する酵素を阻害するため新型コロナウイルスのようなRNAウイルスの増殖を防ぐ働きがあります。

 

亜鉛が不足すると、消化管の粘膜が萎縮して消化液の分泌が減少し、消化管の動きが鈍くなり、脳から出る食欲を促すニューロペプチドYは出にくくなり食欲が落ちます。β細胞が減少して抗体の産生も減少するため免疫力が低下します。神経伝達物質のグルタミンの伝達に関わっていて、精神疾患や認知症に影響します。

感想

亜鉛といえば味覚障害でしたが、味覚以外にもいろいろ有用な作用があるのですね。健康診断の項目に亜鉛もあればと思いました。

 

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