著者紹介
2017年11月1日初版の評言社から発刊された本で、著者はコリン・キャンベル氏です。キャンベル氏は50年以上栄養科学研究の第一線で活躍し、栄養学分野のアインシュタインと称されています。1980年代前半に健康と栄養に関する研究チャイナスタディをされました。第Ⅱ部ではこの本の訳者で医師でもある鈴木晴恵氏からプラントベースドホールフーズ(PBWF)で末期がんから生還した人たちの症例提示と、1980年代に1年間玄米菜食をされた羽間鋭雄氏の記録も収録されています。
低炭水化物ダイエットへの警鐘
内容
米国では肥満率が上昇していましたが、そこに1980年代にロバートアトキンス博士が低炭水化物ダイエットを提唱しました。それまでのダイエットは脂質を減らす野菜中心の食事でしたが、低炭水化物ダイエットは肉類を食べられ、それで短期的には体重減少もするということで、非常にもてはやされました。併発するものとして便秘と頭痛と口臭が多い傾向がありました。
以前は摂取カロリーが燃焼カロリーを上回っているため肥満になるということでしたが、低カロリーでは短期的に実行できるものの長続きはできません。カロリーとは単に分子の中に含まれる熱量の値で、数値としてのカロリー摂取またはカロリー消費は大した問題ではありません。
アメリカ政府は脂質過剰を問題にして低脂質食品を推奨しましたが、肥満は急激に増加したため、脂質はよく炭水化物が悪いということになりました。
食物繊維は一般に腸内で消化・吸収されず、腸内微生物により特に小腸内で有用な物質に分解され、人体に健康効果をもたらします。二糖類であるスクロース(ショ糖)を単体で摂取することは人体に有害です。高果糖コーンシロップもショ糖と同様かより重篤な有害性があります。抽出された食物繊維がブランとして配合されたものは、長期的な健康問題を予防したり治癒する選択肢になりえず、食物繊維を含むホールフーズ(自然食品)はがんの罹病率の低下やコレステロール値の改善に関連付けられます。低炭水化物ダイエットは精製された糖だけでなく炭水化物自体を悪にして、おのずから高脂質、高たんぱくとなり、動物由来の食事が強調され、これが低炭水化物ダイエット支持者の最大のモチベーションとなっています。
最小量(総カロリーの5%)のタンパク質摂取したグループははるかに低いがん罹病率を示しました。
ネズミの実験で5%の低タンパク食と20%の高タンパク食与えてがん病巣の成長を観察した研究で、低タンパク食では病巣は減少し、高タンパク食では病巣は成長しました。動物性たんぱくはがんを促進させるが可逆性であること、発がん物質の量より摂取する栄養素の方ががんの成長促進には影響が大きいことを見出しました。現在では動物性たんぱく質に含まれるメチオニンががんを引き起こし、メチオニンは魚と鶏肉、次いで卵、牛肉、牛乳などの動物性食材に多く、植物性食材には少ないことがわかってきました。
一般的にプラントベースドホールフーズ(PBWF)を実践すると心臓病、糖尿病、および一定のがん(肝臓がん・膵臓がん)、黒色腫、自己免疫疾患のような重篤疾患を予防するだけでなく、疾患の進行を食い止め場合によっては治療する効果があります。
植物しか含まない食事というのは多くの人にとって馬鹿げた考えに聞こえることはよくわかっています。でもそれは変わり始めています。この考えはどんどん広がっています。
感想
低炭水化物ダイエットについて問題点を列挙してプラントベースドホールフーズ(PBWF)こそが体にはいいとせっ説得力を持って解説されていました。炭水化物を減らしたら好きな肉を食べても体にいいというのは非常に魅力的ですけど、やはりそんなうまい話しはありませんよね。