「食品の科学」が1冊でまるごとわかる

著者紹介

2019年9月25日初版のベレ出版より発刊された本で、著者は齋藤勝裕氏です。齋藤氏は1945年生まれで、1974年に東北大学大学院理学研究科を終了され、名古屋工業大学名誉教授です。

「食品の科学」が1冊でまるごとわかる

内容

水は1気圧では沸点は100℃ですが、富士山山頂は約0.7気圧で沸点は85℃ほどに低下します。圧力釜は圧力が上がり、沸点も120℃にもなり、魚の骨までやわらかくなります。ウォーターオーブンとは、何百℃、何千℃にも加熱できる水蒸気を使って食品を加熱するのです。水蒸気が液体に戻る時に大量の熱を放出するため、ウォーターオーブンは水蒸気が食品に触れて液体に戻る時にさらに加熱するという二段構えの加熱装置なのです。

物質が溶けたり溶けなかったりする現象は不思議ですが、一般に似たものは似たものを溶かします。砂糖が水に溶けるのな、1分子内に8個のOH基を持つためです。

水には硬水と軟水があり、金属元素が多く溶けているものを硬水といいます。

酸とは水に溶けて水素イオンを出すもので、塩基とは水に溶けてOH-をだすものです。酸性は酸を溶かした水です。強さの尺度にpHがあります。食品の酸性、塩基性は食品そのものの性質ではなく、食品を燃やした後に残ったものを水に溶かした時の溶液の性質で決めます。植物を燃やした後に出る灰とは何でしょうか、植物に含まれたミネラルの酸化物です。カリウムが燃えると塩基なので梅干しもレモンも塩基性食品で、肉や魚の主成分はタンパク質で、窒素や硫黄を含み、これが水に溶けると酸性になるので、酸性食品といわれます。

国産牛肉は和牛と国産牛に分けられ、和牛はわずかです。

2009年の豚肉消費量は約160万トンで45%ほどが輸入肉です。三元豚とは純粋種の中から3種類の品種を掛け合わせた1代雑種の豚をいいます。SPF豚とは清潔な環境で清潔なエサで育てられ、特定の指定細菌に感染していない豚のことで、生では食べられません。

羊肉は1歳未満の子羊から採ったラムとそれ以上のマトンに分けられます。

馬肉はタンパク質が多く脂肪分が少ないです。

鴨肉の多くはマガモとアヒルの交雑種である合鴨です。

肉類の栄養価では、牛肉は高タンパク質で鉄分が多いです。肉類は野菜と比べ飽和脂肪酸が多く牛肉では飽和脂肪酸がほぼ33%です。豚肉にはビタミンB群や亜鉛、鉄分、カリウムなどが豊富です。牛肉より低カロリー高タンパクですが、鉄分は半分から三分の一です。鶏肉も低カロリー高タンパクですが、コレステロールは少々多めです。ササミは脂質が少なく極めて低カロリーで、タンパク質は牛肉や豚肉より多いです。ラムは低カロリー高タンパク低脂質でコレステロールは牛肉豚肉と同程度です。馬肉は低カロリー高タンパクコレステロール低く、鉄分はどの肉よりも多いです。鯨肉は馬肉と似てますが、さらに低脂肪でコレステロールは最も低いです。

タンパク質は非常に長い分子ですが、アミノ酸という小さな単位分子が何百個何千個も繋がっています。アミノ酸は人間では必須アミノ酸9種類、非必須アミノ酸11種類しかありません。アミノ酸が結合したものをポリペプチドといい、大変に複雑でデリケートな立体構造をしたものがタンパク質です。タンパク質は加熱やアルコールなどで壊れてしまい元に戻りません。動物性タンパク質は、酵素やヘモグロビンなどの機能性タンパク質と、体をつくる構造タンパク質があり、構造タンパク質にはケラチンやコラーゲンがあります。動物の全タンパク質の三分の一はコラーゲンといわれています。

筋肉を構成するのは、コラーゲン、筋原繊維タンパク質、筋形質タンパク質の3種類で、75℃を超すとコラーゲンが分解され、長く煮すぎるとコラーゲンの膜が溶けてなくなり、肉の旨味も消えるかもしれません。

ソーセージとハムの違いはハムは塊肉、ソーセージはミンチにかけて細かくした肉を用いることです。生ハムは豚モモ肉を塩漬け塩抜きしたもので、ベーコンは豚のバラ肉を塩漬け塩抜きした後に燻製したものです。コンビーフのコンは塩漬けの意味です。

 

赤身魚と白身魚の違いは筋肉の構造の違いによるものです。瞬発力を司る白筋繊維と持続的な運動を司る赤筋繊維があり、高速で泳ぎ続ける魚は赤筋の比率が高くなります。赤身魚にはω3脂肪酸のEPA・DHAを多く含みます。サケやマスは赤い身ですが、餌としているアスタキサンチンという色素を蓄積しているからで白身魚に分類されます。白身魚はコラーゲンが多く崩れやすく、脂肪量は少なく低カロリーです。貝類には独特の旨味がありますが、日本酒と同じコハク酸によるものです。脂肪・コレステロールともに低く、タウリンというアミノ酸があり健康によいでしょう。エビの身の30%はタンパク質で残りは水分となり、脂質や糖分はほぼゼロです。エビの殻にはカルシウムやビタミンEが豊富で、免疫力を高めるキチン質もあり、血圧降下・血中コレステロール減少効果があります。カニも栄養素は同じと考えられます。カニの足は10本で、タラバガニや毛ガニは8本しかなくカニではなくヤドカリの仲間です。毛ガニは夏でも捕獲できます。イカ・タコは高コレステロールでタウリンも多く含まれます。スッポンは甲羅が角質化されてなくやわらかく、コラーゲンが豊富です。

魚介類には毒をもつ種類がたくさんいて、代表はフグでテトロドトキシンという毒をもちます。トラフグは肝臓と卵巣と血液以外は無毒でこれらを廃棄すれば食用可です。鯉は胆のうに、ウナギは血液に毒があります。

食中毒は細菌自身が悪さするものと毒素を産生するものがありますが、前者はサルモネラ菌や腸炎ビブリオがあり加熱で食中毒を防げます。後者はブドウ球菌、ボツリヌス菌、病原性大腸菌があり、熱に強いものもあります。

 

生体に含まれる油を一般に油脂といい、常温で固体なのを脂肪、液体を脂肪油といいます。牛や豚には脂肪が多く植物や魚は脂肪油が多いです。油脂は動物性と植物性がありますが、動物性油脂は豚からのラード、牛からヘット、鶏からチーユで、植物性油脂は新鮮なうちは液体ですが、長期間放置すると酸化して固化し、油絵などに利用されます。

油脂の一種のリン脂質は何億個も集まって膜状となり細胞膜を作っています。

動物性油脂と植物性油脂はカロリーに違いはありませんが、動物性はコレステロールと飽和脂肪酸が多いです。天然の脂肪酸はシス体で規則的に折り重なって固体になれないのに対し、人工のトランス体は固体になることができ、これをトランス脂肪酸といい体に良くないとされています。

食料を増やすことができたのはなぜでしょうか。植物には三大栄養素の窒素、リン、カリウムがあります。1906年に発表された空中窒素の人工固定法で、大気中の窒素からアンモニアを作り、そこから硝酸カリウムを生成する化学肥料の開発で穀物生産量は増加しました。DDTなどの農薬の利用、高収量品種の開発、灌漑設備の整備、農作業の機械化もあります。

玄米と白米を比べると、白米は脂質が3分の1になり、食物繊維は6分の1になります。私たちが食べる米のデンプンは20%がアミロースで80%はアミロペクチンで、もち米は100%アミロペクチンです。

遺伝子組み換えとはある種の生物のDNAを取り出し、全く異なる他の種のDNAを継ぎ足して新しい種を作り出し成長させる技術で、高品質・多収穫で病虫害に強い作物が何種類も出回っています。日本に輸入が許可されているものは大豆、ジャガイモ、ナタネ、トウモロコシ、ワタ、テンサイ、アルファルファ、パパイアの8種類です。安全性に懐疑的な意見もありますが、実際に害が現れたこともないとされています。遺伝子編集という技術もあり、基本は他の個体の遺伝子を持ち込まないもので、例えば筋肉量の多い魚を誕生させることができます。

 

穀類・野菜・果実の主成分は炭水化物ですが、穀類は多糖類のデンプンが多く、野菜はデンプンと植物繊維のセルロース、果実は熟すにつれて単糖類のブドウ糖や果糖に変化します。リンゴの蜜はソルビトールという糖アルコールの一種で甘く感じません。果実は甘み以外に心地よい香りがあり、アルコールとカルボン酸が脱水結合した化合物のエステルによるものです。人間が合成できないビタミンを野菜や果実に期待します。魚類からもビタミンは摂取できます。野菜は根菜類を除けばカロリーは非常に少なく、ブロッコリーはカロリーもタンパク質も多く、サツマイモはジャガイモの2倍カロリーが高くなっています。キノコ類は低カロリーの高食物繊維が特徴で、果実は食物繊維は多くなく炭水化物は根菜類に次いで多いです。海藻類は海苔でタンパク質が多くなっています。

調味料にも栄養価があり、醬油と比べて味噌は大豆成分を残しているためカロリーと炭水化物が多くなっています。酢はカロリーがほとんどなく、マヨネーズは食用油と卵が原料のため高カロリーとなっています。製塩は最近はイオン交換膜と真空式蒸発缶を用いて作られますが、以前と比べて塩化ナトリウム濃度は変わっていないもののカリウムイオンが増えて硫酸イオンが減っています。

味噌は茹でた大豆に塩と麹を加えて発酵させて作ります。赤味噌と白味噌は発酵期間の違いで、メイラード反応で赤くなるからです。醤油は味噌をさらに発酵させたものと考えられます。酢には3-4%の酢酸を含み、アルコール発酵させて作ったエタノールを酢酸菌によって酢酸にして作ります。味醂は40-50%の糖分と14%程度のアルコールを含みます。

 

牛乳は、水分以外は脂肪分と無脂固形分で脂肪は動物性脂肪のため飽和脂肪酸が高く低脂肪牛乳も製造されています。無脂固形分にはタンパク質、乳糖、ビタミンやミネラルが含まれます。乳糖はブドウ糖とガラクトースからできています。脂肪は水に溶けないはずですが、ミルクに脂肪が溶けているのはコロイド溶液という特殊な溶液だからです。市販の牛乳には成分無調整と調整がありますが、冬場は脂肪分が高くなり夏場は減るため、それを調整しているのが成分調整牛乳です。脂肪分を減らして低脂肪乳やカルシウムを加えているものもあります。牛乳の脂肪球を2μm以下に均一化(ホモナイズ)をしていないものをノンホモ牛乳といい、クリーム状の脂肪球が凝集して浮くことがあります。ミルク=牛乳と考えている人もいますが正しくはなく、牛以外のお乳も含めてミルクといいます。

遠心分離機でミルクをコロイド状態から脱したものをクリームといい、18-30%のライトクリームはコーヒー用、30-48%のヘビークリームはホイップ用となります。クリームを激しく攪拌すると脂肪球がくっつき大きな組織となり、内部に気泡を含むようになるとホイップクリームになります。牛乳の脂肪分を固めたものをバターといいます。クリームを10度以下の温度で激しく攪拌すると、脂肪球が凝集して大豆くらいの大きさのバター塊となります。それを練り合わせるとバターの出来上がりです。チーズの主成分はミルクに含まれるタンパク質のカゼインです。酸や乳酸菌を加えて酸性にし、レンネット(凝乳酵素)を加えるとし親水性部分が加水分解ではなされ、カゼイン分子は凝集して沈殿し、これがチーズとなります。その後カビをつけたりして長期間熟成されます。ミルクに乳酸菌を作用させ乳酸発酵させると固化した部分と液体部分に分離し、固化した部分がヨーグルトで液体部分が乳清(ホエイ)となります。乳酸菌は乳糖も分解するため、乳糖不耐性の人もヨーグルトは食べられます。カゼインにアレルギーがある人は牛乳アレルギーですが、通常は2-3歳になると耐性を獲得して消失します。乳糖を分解する酵素のラクターゼの働きが弱いと乳糖不耐症となり、牛乳で下痢をしたりします。ヨーグルトの栄養価は牛乳と変わりなく、チーズ・クリーム・バターは水分が少なくなるためカロリーが上がります。バターは脂肪の塊でコレステロールも多く、チーズは脂肪とタンパク質が多くなっています。マーガリンはコレステロールが極めて低いですが、トランス脂肪酸の問題があります。

卵は殻と卵白と卵黄の重量比はおよそ1:6:3です。卵黄の色は飼料によるもので、大きさは主に卵白によるものです。温泉卵は卵黄の凝固温度が約70度で、卵白の凝固温度80度より低いため65-68度に30分程度つけておくとできます。卵アレルギーの多くは卵白に含まれるタンパク質で、子供の腸膜は薄く通過しやすいからで、成長につれて克服することが多いようです。

パンは穀物粉に水と酵母を混ぜて練り、アルコール発酵させて発生させた二酸化炭素で発泡した生地を焼いたものです。麺は穀物粉を水を加えて練って粘土状になった物を紐状に裁断します。小麦粉は小麦の種子を挽いて製粉したものです。100g当たり炭水化物は72.2gでそのうち食物繊維は10.8gです。脂肪は3.1gで飽和脂肪酸0.56gです。10.6gのタンパク質も含み、水を吸収するとグルテンとなります。果皮や胚芽をつけたままだと全粒粉、除くと精製紛で、グルテンの量で薄力粉・中力粉・強力粉に分かれます。薄力粉はグルテン8.5%以上ですがそれよりも少ないものもあります。うどんは薄力粉、中華麺は中力粉、パスタは強力粉の栄養価を引き継ぎます。

 

ケーキの匂いで代表的なものはバニラの香りです。バニラは長さ60mにもなるツル性の木になるバニラビーンズという30cm程の細長い豆から種子を採ります。湿気を加えて発酵させると香りが出ます。バニラの匂いはバニリンを合成して作ることもできます。シナモンは桂皮という植物の樹皮で、匂い分子はシンナムアルデヒドという物質です。

お茶、コーヒー、チョコレートにはカフェインが含まれます。カフェインの成人許容摂取量は1日400mgで妊婦や授乳婦は200mgです。100mg当たりの含有量はコーヒー60mg、紅茶30mg、煎茶と烏龍茶は20mg、玉露は160mgです。チョコレートはカカオの実に20-50粒入った種子(カカオ豆)を焙煎してペースト状にしたカカオマスに砂糖やココアバターを加えて練って作ります。ココアバターはカカオマスに40-50%含まれる脂肪分で、ホワイトチョコはココアバターだけから作ります。

豆腐のつくりかたは大豆を一晩水に漬けてやわらかくなったものをミキサーでつぶし、加熱した後に布で絞って濾します。絞って残った固体成分をおから、液体成分を豆乳といいます。豆乳を再度加熱して70度くらいになったらニガリの水溶液を加え、数回かき回して放置すると固まります。水切り穴のついた容器に入れて、穴から水が出てきたら重しを載せてさらに水を切ります。水が出なくなったら冷水に晒しニガリを取り除いて完成です。豆乳を加熱し続けて表面に浮かぶ膜状のものが生湯葉です。豆乳はコロイド溶液で牛乳に似ています。

コンニャクは、コンニャクイモを茹でて皮をむき、ミキサーにかけて粉砕し、水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムの水溶液を入れて攪拌し、茹でて石灰分を溶出して作ります。原料はコンニャクイモに含まれるグルコマンナンで、重量の96-97%は水分です。

麩は小麦粉に含まれるグルテンを使った食材で、グルテンを成形して蒸したものが生麩です。生麩を揚げると揚げ麩、煮てから乾燥させると乾燥麩になります。

コラーゲンを純粋な形で取り出したものをゼラチンといいます。ゼラチンを水に溶かすと溶液状になりますが、冷やすとケージ状の個体構造となり、中に果汁などの液体を取り込んだゼリーとなります。キウイやパイナップルにはタンパク質分解酵素が多く含まれるためゼリーは固まりません。ゼリーを作るにはあらかじめ加熱してタンパク質を分解しないといけません。グミはゼリーのゼラチンを増やしたものです。

寒天は海藻のテングサを煮てろ過して不純物を除き、常温に置くと固まってできます。寒天溶液に味付けしたり、中に野菜や魚肉を入れて固めたものが寒天よせです。寒天の原料はアガロースやアガロペクチンという多糖類で植物繊維です。食用ではないですが微生物を培養する寒天培地も広く使われています。

ナタデココの原料はココナッツの実です。ココナッツの殻の中には果肉と液状のココナッツ水があり、ココナッツ水に水や砂糖を加えて酢酸菌の一種であるアセトバクター・キシリナムという菌を加えて発酵させます。2週間もすると15mmほどの膜ができ、それがナタデココです。キャッサバの根から採ったデンプンに水を加えて糊化させて回転させると球状となり、これが乾燥したものがタピオカパールで、煮戻したものがタピオカになります。

ジャムは果実に含まれるペクチンを集合固化して固い粘液状になった物で、酸を加えて集合固化せせる必要があります。マーマレードは果実の代わりに果皮を利用しただけで原理はジャムと一緒です。フルーチェは牛乳にペクチンを加えて固めたものです。マシュマロはゼラチンと卵白を使った完全動物性食品です。

感想

思っていたないようとはちょっと異なりましたが、乳製品についてなどあやふやな知識がまとまって腑に落ちたように感じられました。

 

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