COPDの安心ごはん

初めに

2019年11月30日初版の女子栄養大学出版部より発刊された本で、2人の医師の監修と2人の栄養士の栄養指導、献立作成となっています。

エネルギー・栄養をしっかり摂って体重減少を改善さするための食事のポイントをわかりやすく解説しています。
実際の献立とレシピ・作り方がわかりやすく写真付きで記載されています。COPD全般についても説明されていますが、ここでは省きました

COPDの安心ごはん

内容

COPDの主な原因は喫煙で、タバコの煙によって肺に炎症が起こり、咳や痰、息切れがあるために体を動かすことがつらくなり、次第に食欲もなくなって食べる量が激減、加えて呼吸するためにたくさんのエネルギーを使うのでどんどんやせてしまうことが多いのです。栄養不足が続くと呼吸するための筋肉が衰えて呼吸がうまくできずますます息苦しくなります。しかも体重がどんどん減ってしまうと生活の質が低下するだけでなく命にかかわることがあるのです。
食事療法の基本は脂質の多い高エネルギー食品や筋肉を作るたんぱく質をとることです。現在未診断・未治療のCOPDの人が約530万人いると推定されています。COPDは早めに治療を始めることで病気の悪化を防ぐことができます。

鼻や口から取り込まれた空気は咽頭、喉頭、気管を通って肺に送り込まれます。左右の肺に2つにわかれたものが気管支です。気管支は20回以上もの分岐を繰り返しながら徐々に細くなります。直径2cmあった気管が末端の一番細い部分では直径0.1mmになります。その先端の肺胞管の先に肺胞という空気が入った細胞がブドウの房のようについた構造になっています。肺胞の数は平均4億8000万個で一つの直径はわずか0.1mm程度で、厚さ10μmという薄い壁に囲まれ、そこには網の目のように毛細血管が巡っています。肺の重要な働きは酸素と二酸化炭素のガス交換です。

生活習慣病の多くは体重を減らしましょう、肥満を解消しましょうと指導されますが、COPDの人はその逆です。COPDの人の約9割は徐々に体重が減って痩せてしまいます。COPDになるとやせてしまう原因は大きく分けて呼吸消費エネルギーの増大と、摂取エネルギーの低下の二つです。咳や痰や息切れのために動かない、動かないからおなかが減らない、おなかが減らないから食べない、そのために摂取エネルギーが減ります。ガス交換がうまくできなくなると呼吸に関わる呼吸筋や全身を使って呼吸するために安静にしていてもエネルギーが大量に消費されます。健康な人と比べてCOPDの人は呼吸するために約10倍のエネルギーが必要となります。栄養障害が続くと呼吸筋が減って呼吸機能がますます著しく低下してしまいます。特に気を付けたいのが6か月以内に10%以上の体重減少が起こっている場合です。急激に体重が減少した場合は症状がより大きく悪化する増悪の前兆のこともあります。体重減少、増悪、体重減少…が続くと生活の質が低下するだけでなく命に関わることもあります。適正体重(BMI=22)の90%未満の人は余命が短くなることも報告されています。
呼吸機能を低下させないためにも適正な体重に戻し維持することが重要です。そのためには良質なたんぱく質を充分にとり、高エネルギー食品を利用し、調理法を工夫した食べやすくおいしい料理をしっかり食べることで必要なエネルギー・栄養素をとることができます。これが体重減少の予防・改善につながります。
1日に必要な適正エネルギーは適正体重(kg)×30-35(kcal)です。身長160cmなら1700-2000kcalです。食事のボリュームを増やさずに脂質や間食をプラスしてエネルギーを充足させることが必要です。脂質のエネルギー比率は30%ですので、身長160cmならば540kcalとなり、1日60gとることを目標にします。脂質は呼吸商も低いのでCOPDの人にはメリットです。炭水化物の呼吸商を1とすると、たんぱく質は0.8、脂質は0.7です。ごはんを油で炒めてチャーハンにするとエネルギーもアップし、小麦粉などの衣をまぶして揚げると炒めるよりも吸油率が上がるため少量でも高エネルギーに仕上げることができます。油脂以外にはマヨネーズ、生クリーム、チーズなども脂質が多い高エネルギー食品です。ピーナッツバターなどはペースト状で食べやすいです。しかし食べ過ぎると腹部膨満感や消化不良を起こしやすいので注意が必要です。
筋肉を作るのに欠かせないのがたんぱく質です。たんぱく質が不足すると呼吸筋がますます低下して息切れが悪化ししてしまいます。筋肉の減少に補止めをかけて息切れの悪化を防ぐには、肉、魚、卵、乳製品、豆腐などから良質なたんぱく質を毎日とることが大切です。目安は適正体重(kg)×1.0-1.3(g)で、適正体重60kgなら75g前後になります。自然界には数百種のアミノ酸があるといわれていますが、私たちの体のタンパク質を構成するアミノ酸はわずか20種類です。体内で作り出すことができるものを非必須アミノ酸、体内で合成することができないものを必須アミノ酸と呼んでいます。良質なたんぱく質をとるには、必須アミノ酸をバランスよくとることが大切です。
エネルギーを補うためには炭水化物も大切な栄養素です。日本人の食事摂取基準では炭水化物は総エネルギー50-70%ですが、COPDの人は50-55%が理想的です。脂質30%、タンパク質15-20%となります。そのほかには痰を切りやすくするために水分、併存症の一つである骨粗鬆症の予防・改善に役立つカルシウム、呼吸筋をサポートするミネラルなども大切な成分です。
COPDの人は食が細くなりがちで、食欲を高める工夫が必要になります。酸味の成分には唾液や胃液の分泌を促し、消化・吸収を助ける働きがあります。さっぱりとした味わいなら食欲がない時もおいしく食べられます。ニンニク・ショウガなどの香味野菜、カレー粉・トウガラシなどの香辛料にも食欲増進作用があります。酸味や辛さが強いと咳込むこともあるので、料理のアクセントとして取り入れましょう。食べやすく調理することも大切で、大根などの硬い野菜は隠し包丁を入れて食べやすい大きさに切ったりしましょう。繊維が残るふき・ごぼう・竹の子・セロリなどは繊維を断つように切り、肉類は筋を切る、叩いて薄くする、皮を除くなどの工夫を加えます。加熱調理するときのポイントは片栗粉をまぶしてから焼くとつるんと飲み込みやすくなります。蒸す、煮るなど水分を含めることで食材がふっくらとやわらかく仕上がります。季節を感じられる食材にする、家族そろって会話を楽しみながら食事をするなど食事の楽しみを感じられるような環境作りも必要です。
COPDの人はおなかが張って十分な量を食べられなくなることもあります。空気を飲み込まないようにゆっくりと噛んで食べます。ガスの発生を促す炭酸飲料やビールなどは控えましょう。糖尿病のある人は菓子類の食べ過ぎに注意してください。どうしても食べたいときはご飯を減らしてお菓子を加えましょう。

感想

COPDの人はやせているひとが多く、そういう人の方が早く亡くなられる印象があります。やせが進行してしまうとなかなか回復しませんので、こういった本を参考に早くから栄養療法をしてやせなくする必要があると思います。

 

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