はじめに
2019年11月1日初版のわかさ出版から発刊されたムックで、数名の医師が解説されています。
ヨガのポーズやあおむけ平泳ぎは写真付きで分かりやすく説明してあります。
肺気腫自力克服大全
内容
今から50年ほど前、日本の男性の喫煙率は80%を超えていました。長年にわたりタバコを吸い続けた人の肺はすでに相当なダメージをうけているのです。セキやタンが慢性的に続いたり、少し歩いただけで息切れがしたりするようならCOPDを発症している疑いが濃厚でしょう。COPDはタバコや空気中の有害物質を吸い込むことで起こる病気の総称で、具体的に肺気腫・慢性気管支炎と診断されます。COPDになると細い気管支や肺が慢性的に炎症を起こして内側が狭くなることで、空気を吐き出せなくなったり呼吸が苦しくなったりするのです。COPDの怖いところは病気が進行するにつれて肺胞が破壊され安静時にも息苦しくなって呼吸困難が起こることです。ぜんそくを併発した状態をACOSといいます。COPDになると肺ガンや心不全、糖尿病など数多くの病気を引き起こしやすくなります。同じ量のタバコを吸っていても、COPDの人はそうでない人に比べて肺ガンに10倍かかりやすいことがわかっています。COPDの人に心不全が起こりやすいのは動脈硬化が進行しやすいからと考えられます。
日本ではCOPDの人が確実に増えており、約530万人いると推計されています。60代の8人に1人、70代の6人に1人がCOPDといわれているのです。医療機関で治療を受けている人は1割にも達していないと考えられています。COPDはゆっくり進行し、60代以降にならないと症状が現れない病気だからでしょう。
大切なことは早期発見で、早く治療を開始すればCOPDに伴って起こる病気を未然に防げるでしょう。喫煙している人は一刻も早く禁煙し、呼吸器症状があれば早めに呼吸器科を受診するようにしてください。
40歳以降で喫煙経験のある人、過去に長い間吸っていた人もなりやすいです。
COPDの検査は、問診、呼吸機能検査、画像検査でします。呼吸機能検査で1秒率が70%未満で他に肺の病気が認められない場合COPDと診断されます。治療は病気の進行を抑制したりすることを目的に薬物療法が行われます。薬物療法で中心になるのは吸入用気管支拡張薬で、直接吸い込んで気管支を広げて空気の通りをよくして呼吸を楽にする効果があります。主に用いられるのはβ2刺激薬、抗コリン薬、テオフィリンの3種類で、症状が重い場合は吸入ステロイド薬を用いることもあります。息苦しさを改善するために、運動療法、栄養療法、在宅酸素療法が行われます。他の肺疾患を合併すると重症化しやすくなるので、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種を受けることも大切です。
息切れパニックは末梢気道が狭くなり過呼吸が起こっている状態です。息切れパニックを鎮めるのに口すぼめ安静という対処法があります。その名のとおり、口をすぼめながら吸ったときの2倍の時間をかけて息を吐いて呼吸の状態を整えます。腹式呼吸でやればより効果的です。腹式呼吸とは鼻から息を吸い込みお腹をへこませるようにしながら口からゆっくり息を吐き出す呼吸法で、横隔膜がよく働き肺の働きもアップします。口すぼめ呼吸は息切れパニックと関係なしに普段から習慣にすると息切れパニックの頻度はぐっと減少します。腕を上げる、腕を使って動作を繰り返す、しゃがむ、息を止める動作が息切れパニックの引き金となります。動作に呼吸を合わせるのではなく、呼吸に動作を合わせることで、息を止めてはいけません。適度に休みを入れて呼吸を整えましょう。
4-2歩きという、歩きだす前に息を吸って、4歩進む前に息を吐き、次の2歩進む間に息を吸います。この動作を繰り返しながら歩くようにするのです4歩進む前に息を吐ききってしまう場合は3歩でもかまいません。5-2歩きでもかまいません。
ヨガにはさまざまな呼吸法があり、中でも重要なのが腹式呼吸です。またヨガでは深い呼吸をするために必要な呼吸筋を鍛えるポーズが多くあり、ヨガを続けると腹式呼吸が楽に行えるようになります。おすすめなのがアンテナのポーズと三角のポーズです。アンテナのポーズは正座かイスに座った状態で行い、おしりがうかないように、息を吸いながら両手を上げ、耳に挟むようにっすぐ上に伸ばします。両ひじを伸ばしたまま息を吐きながら上体を右へ倒し、この状態で3回呼吸して上体を戻し、今度は上体を左に倒して呼吸をし、これを1回として1日に10回を目安に行います。三角のポーズはリラックスして両足を肩幅に開いて立ち、息を口から吐きながら上体を右にゆっくり倒し同時に左手は上に向かってまっすぐ伸ばし、右手は右足外側に沿って伸ばし、この状態で3回呼吸します。その後鼻から息を吸いながらを上体を起こします。次は逆に上体を左に倒すことをします。これを1回として1日に10回を目安に行います。
息を吐いても肺には意外と多くの空気が残っていて、これを残気といいます。COPDが悪化した人は残気が多くなり、1.8リットル以上に達することがわかっています。残気量を減らすために呼吸筋を強める海女さん式呼吸筋エクサを行うことで、海女さん呼吸とあおむけ平泳ぎです。海女さん呼吸は鼻から息を吸って胸を大きく開き口をすぼめて息を吐くだけで、コツとしては腹筋に力を入れて9秒くらいかけて息を吐き切ることです。海女さん呼吸は最低でも1日に朝と晩10回ずつくらいしてください。
あおむけ平泳ぎは畳、布団、ベットの上で仰向けでやります。両腕と両足を平泳ぎをするように大きく動かしますが、実際に泳いでいるように足を大きく動かすのがポイントで、大きく動かす動作を1回として、朝と晩20回ずつくらい.海女さん呼吸セットで行うといいです。
カラオケは会話するときよりも声帯を強く振動させ、大量の息を肺に吸い込み、深く長く吐き出しますので、嚥下に関わる喉の筋肉や肺を拡張・収縮させる横隔膜をバックに鍛えられ、脳の血流量も増えるので注目しています。鼻腔を振動させながら声を細かく震わせて歌うビブラート発声では喉の筋肉がよく使われます。カラオケする時は腹式呼吸を行い、背筋を伸ばしてます。誤嚥性肺炎や認知症の呼ぼにも期待できます。
COPDの慢性症状を抑えるなら全身の気を漢方薬で補うことが大切です。補中益気湯が中心となり、タンの排泄を促すには二陳湯、体力が衰えているときは滋陰至宝湯、喉に炎症があってタンが絡みやすいときは桔梗湯があります。
気管支を広げタンを出しやすくする神秘湯がありますが、エフェドリンを含む麻黄が配合され、循環器疾患や排尿障害のある人は症状を悪化させる可能性があります。セキやタンでイライラして安眠できないときは竹筎温胆湯があります。COPDは睡眠時無呼吸症候群を併発していることが多いので注意が必要です。胃腸障害を合併することもあり茯苓飲合半夏厚朴湯がおすすめです。
肺からの酸素摂取には限界があり、消化器から酸素を体内に取りこもうとする新たな試みが始まり、酸素補給水を飲むことで可能になりました。毎日飲むことで症状が軽減した報告もあり試してみるといいでしょう。
実際に禁煙を1 年以上継続できたのは5% しかいません。肉体的・精神的依存にどっぷり漬かっているからです。タバコには200種類以上の有害物質、50種類以上の発ガン物質があり約10年寿命を短くさせます。肌の老化が5-10年早く進みます。タバコの年々値上りし1年で約16万円もかかります。タバコの先端から立ち上がる副流煙は有害成分の濃度が高く受動喫煙の健康リスクを高めます。禁煙後数日で味覚と嗅覚が改善して食べ物が美味しく感じられ1-2週で睡眠の質が向上して肌トラブルが減るなどの体調が変化します。最初の3日が禁断症状のピークで吸いたくなったら飲水や糖質を抑えたガムを噛むなどもありますがおすすめは般若心経を唱えることです。禁煙外来を利用することもおすすめです。
感想
テオフィリンの吸入薬はなくCOPDについては誤ったところもわずかにありますが、4-2歩きやあおむけ平泳ぎなんかは実際有用だと思います。9秒くらいかけて息を吐くとありましたが、なかなか実践するのは難しく、それでもやることにより症状の改善が期待できます。