断食でがんは治る

著者紹介・はじめに

2013年12月18日初版の双葉社から発刊された本で著者は鶴見隆史氏です。鶴見氏は1948年生まれで金沢伊医科大学卒業され、西洋医学から東洋医学・鍼灸・筋診断法・食養法などを追及され、鶴見クリニック院長をされています。
10年以上前の本ですが、酵素を生かすための半断食療法で、題名からは内容が想像できませんでした。がん治療のファスティングコースの具体的な食事内容や、がんにならないためのライフスタイルについてもありましたがここでは一部しか触れていません。

断食でがんは治る

内容

1977年に米国議会で発表されたマクガバンレポートは、専門家を3000人集め2年にわたって調査と考察を行ったもので、がんの原因の90%以上は食事と報告されました。
がんになる人の特徴は次のような点があります。
・日常的に便秘や下痢気味で薬を常用している
・頭痛、腰痛、胃痛などをはじめとして常に症状をかかえている
・口内炎や気管支炎、腸炎、皮膚炎、関節炎など慢性炎症を持っている
・便が極端に悪臭で形状も悪い
・おならがいつも音なしで非常に臭い
・加熱食ばかり、甘い食べ物が大好き、毎日夜食を食べる
・毎日大量の飲酒、タバコも大量に吸う
・昼夜逆転の生活、日光に当たらない生活をしている

3大療法は手術、抗がん剤、放射線療法ですが、手術は活性酸素を生み出し体に酸化ストレスを与えます。人間の臓器で不必要な臓器はなく一度失ったら取り返しがつきませんので受けるべき治療ではありません。手術のミスや後遺症も考えられます。放射線治療もがんにしか当たらない放射線というのはありませんし、がんを散らばらせる可能性もあり信用していません。抗がん剤は正常細胞も痛めつけ、一部のがんにしか効かず新しい病気が出現することもあります。
アメリカの開業医は国の健康施策の影響もあり1980年過ぎから栄養学の勉強を開始し、大学医学部の60%以上で代替医療の講座が導入されています。日本では病気と食は無関係と言い切る医師が大勢を占めている状態で、本当のがん治療は病気の根本を考えその元から治すという方法で、3大療法から離れなければ治療は難しいです。

がんという病気は不可逆性で、なってしまったら元へは戻れないと考えられていましたが、進行したがんであっても可逆性だと考えています。末期と言われたがん患者さんでもよくなるケース出ていますが、それを可能とするのが酵素医療です。
食品添加物やトランス脂肪酸という毒と、生野菜を摂らないためのビタミンやミネラルと食物繊維の不足、電磁波や過度のストレスも病気の原因です。これらの原因ががんを作っていることを知り、まず原因を排除しながら対策をとっていくことが必要なのです。

がんは少し前まではがんになった臓器の病気だと思われていましたが、がんは全身病で患部のある臓器だけのものではないというのが定説となっていて、その一部ががんなら全部の細胞が悪い細胞で、特にひどい細胞ががんになっているのです。この悪い細胞の入れ替えをファスティングで行うのです。
私の医療の根本は酵素です。人間は食物を摂取して栄養素を吸収してエネルギーにします。主力エネルギーはたんぱく質、炭水化物、脂肪の3大栄養素ですがこれだけでは動きません。体の至るところで起こっている代謝活動という化学反応は酵素という触媒の力を借りなければ成立しないのです。がん治療においても酵素が働く代謝が大きなカギを握っています。酵素は5-20ナノメートルという顕微鏡ではとても見られないミクロ物質です。酵素の中身は、以前はたんぱく質といわれていましたが、酵素は21種類のアミノ酸に取り囲まれているもののそれはあくまで外殻で、その殻の中で独自の働きをしているのです。酵素にも耐用期間があり、長くても数十日で消費されると考えられています。酵素には最適温度があり体内では38-40度で最も活性します。最適pHもあります。酵素には代謝酵素と消化酵素があり、代謝酵素は修復・解毒・排泄に関わり、病気になるかどうかはこの働きにかかっています。現在わかっているのは2万種類あり、膨大で無限ですが無尽蔵ではなく年齢とともに生産量が減少します。消化酵素は食べ物を分解して栄養にします。この2つの酵素はどちらも大事ですが重要なのはバランスです。酵素は1日に製造される量が決まっていて、消化作業に多くの消化酵素が使われると代謝酵素は使えなくなります。消化酵素を大量に消費させるのは悪しき食事と食のスタイルです。一番気を付けなければならない食事は動物性たんぱく質です。次がショ糖(白砂糖)に代表される高GI食、トランス脂肪酸、酸化した油、リノール酸の過剰摂取で揚げ物はだめです。焼いたり炒めたりするのもAGE(終末糖化産物)が出るから駄目です。チーズやヨーグルトもカゼインたんぱく質の量が問題となりだめです。カゼインたんぱく質はIGF-1というファクターを保持して、成長ホルモンを無尽蔵に繁殖させるのです。玄米は1食/日ならばいいですが、アブシジン酸というホルモン様物質が含まれ酵素を阻害します。アブシジン酸を解除するには20時間以上の浸水で発芽状態にしてから炊きます。圧力なべで炊くとアクリルアミドという発がん物質が発生しますので圧力なべは使用しません。
生の食物は自分の酵素で自分を溶かしているので、私たちが食べるときに消化酵素の使用を少なくできるのです。それで代謝酵素が十分に解毒や排泄ができるようになります。食物酵素は熱に弱いため生での摂取が必要です。ビタミンとミネラルは抗酸化物質で代謝酵素の補因子でもあり、生の摂取はビタミンとミネラルの摂取にもなります。スイカ・みかん、ブドウなどの種は生で食べてはいけません。生の種は酵素阻害物質で体内酵素の消費が膨大になります。

ファスティングとは断食ですが、断食はがん細胞を餓死させてアポトーシス(自発的な細胞死)に導きます。また腸管がきれいになって腸管免疫が活性化されてがんを殺すNK細胞などが活性化します。絶食後半日程度で糖新生と呼ばれる糖質以外の物質からグリコーゲンの生成が始まります。糖新生でもエネルギーが枯渇するとケトン体産生に移行して脂肪が使われます。ケトン体とは脂肪を分解する過程で作られるアセトン、アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸の総称です。ケトン体のエネルギーはブドウ糖より大きく、血液脳関門を通過して脳のエネルギー源にもなります。脂肪細胞には発がん物質が多く含まれ、絶食で脂肪細胞が消化されていくため細胞内の毒素が抜けます。絶食中に3-ヒドロキシ酪酸が脳に入ってエネルギーになるとα波が増大し、この脳のいい影響が全身に広がります。細胞をきれいにするには60-120日で行えます。
がんがぶとう糖のみをえさにする理由は謎ですが、単細胞のシナノバクテリアにそっくりで、酵素を使わず糖のみをエネルギーとし、酸化されずいつまでも死にません。

私のファスティングは半断食で、摂るのは梅干し、生野菜、野菜のすりおろし、果物、玄米など少量です。他には無農薬野菜のぬか漬け、動物性食品の入っていないキムチ、梅干し、発酵させたピクルス、納豆や大豆製品です。

腸の腐敗ががんを含めたすべての病気の大元です。抗がん剤は腸絨毛の栄養吸収細胞を破壊して、栄養分の摂取や免疫力も障害します。腸内では消化吸収の後4つの現象が起こります。発酵、腐敗、異常発酵、酸敗で、発酵のみ健康に向かいます。腐敗は悪玉菌がたんぱく質に群がって起きる現象で、小腸で吸収されず大腸に行ってしまい、たんぱく質が悪玉菌に分解されて窒素残留物となり発がん物質のニトロソアミンを作り出します。炭水化物の摂りすぎで起こる異常発酵、脂肪の摂りすぎで起こる酸敗も腐敗の一種で、酸敗は二次胆汁酸を作ってしまい、ニトロソアミンと一緒になると大腸がんの原因となります。
発酵とは質の良い炭水化物(特に海藻などの水溶性食物繊維)を適量食べるときに起こる現象ですが、短鎖脂肪酸が生じます。短鎖脂肪酸は炭素数6以下の飽和脂肪酸ですが、体脂肪として蓄積されるのは鎖が16以上の長鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸はすぐにエネルギー源として利用できる良質な飽和脂肪酸といえます。胃液も膵液も腸液も胆汁も短鎖脂肪酸が作っていて、便秘をして腸が腐敗すると短鎖脂肪酸ができにくくなり様々な病気の原因となります。短鎖脂肪酸は細胞内のミトコンドリアにも働きエネルギー活性化の促進や、腸のpHを下げて殺菌力を高めています。
食物繊維は水溶性と不溶性があり、前者は熟した果物や海藻、後者は米・麦・大豆・根菜類に含まれます。食物繊維は発がん物質を吸着して排泄し、善玉菌を増やして短鎖脂肪酸を作ります。

感想

この本を題名だけ見て、絶食だけでがんが治るのかと思いましたが、実際は半断食で悪い細胞を入れ替えるために絶食にして代謝酵素を働かせる療法でした。10年以上前の本ですが、古い感じはしない内容だと思いました。

 

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