著者は加藤治文氏と福島茂氏で、加藤治文氏は1942年生まれの呼吸器外科医で、国際医療福祉大大学院の教授や東京医大名誉教授です。福島茂氏は元朝日新聞記者となっています。この本は講談社発行のブルーバックスで2012年9月20日が初版です。
咳の気になる人が読む本
内容
咳は心因的なものを除けば肺などの呼吸器にほとんどの問題があり、気道内の異物や分泌物を除去するための防御反応ですので、咳と痰が多いときに咳止めを飲むのはよくなくて出した方がいいです。乾いた咳は原因によって治療法が異なります。高い熱が伴う場合は風邪、肺炎・胸膜炎、インフルエンザなどが疑われ、微熱出痰が出ないものの倦怠感を伴うものは肺結核の可能性もあり、熱があまり出ないものの長引く咳は肺がんのおそれもあります。咳をした場合痛む場合は肺結核、胸膜炎の可能性もあり、身体を動かしたときに息切れがする場合は肺気腫や慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった深刻な病気の可能性があります。
激しい咳が続く場合は気管支喘息や心臓喘息の可能性があります。胸痛を伴い呼吸困難が感じられる場合は自然気胸や肺炎などのおそれがあります。頑固な咳、粘っこい痰が出る場合は慢性気管支炎の可能性があります。特に注意しなければいけないのは深い咳やゴホゴホと湿った咳が続く場合で、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、マイコプラズマ肺炎、気管支喘息など深刻な病気も考えられますので早めに医師を受診することを勧めます。いずれの病気も診断には検査が必要です。
咳は呼吸に関する筋肉を働かせますのでカロリー消費も多く高齢者や病気などで体力の落ちている人には疲労も問題になります。咳によって胸全体の筋肉痛を訴えたり、ろっ骨骨折を起こしたり、肺に穴が開く気胸やヘルニア(脱腸)を起こしたりします。
寝るときに咳がひどくなると訴えられる方もいて、体が温まって気道の分泌物が多くなり、咳が誘発されるケースや横になって分泌物が移動して咳が誘発されるケースなどが考えられます。
子供の咳は風邪によるものが大半ですが、インフルエンザに感染している可能性もあり年齢によっても異なるので要注意です。新生児ではRSウイルスが細い気管支に炎症を起こし重症化しやすい傾向にあります。冬季に乳児が鼻水を出し「ぜーぜー」というというような咳をした場合はRSウイルス感染症の可能性があります。乳幼児の場合は重症化しやすく特別な治療法はなく、早めに小児科にみていただき重症化を防ぐことが大事です。少ないですが「ヒューヒュー」と吸い込むような咳をしてそのうち「コンコン」とする百日咳があり、これは治療法があるのですぐに小児科に行く必要があります。さらにまれになりましたが喉頭ジフテリアというジフテリア菌に感染してなる病気があり、犬の遠吠え用の咳と息切れを訴え、抗生剤投与でほとんど治癒します。風邪に似た症状でその後発疹がでる「はしか」もあります。少し変だなと思ったら小児科受診するように。
肺の構造の説明があり、肺は外気にさらされていて、血液も肺を必ず通るため、病気にかかりやすく、肺炎、肺癌、COPDが死亡原因の上位を占めるため、咳が止まらないなどの症状が出たら風邪だと思わずにこじらせないようにする早めに受診し、風邪なら養生し、深刻な病気だったら早めに治療を開始することはとても大切です。
各論で風邪症候群、気管支炎、インフルエンザ、肺炎から、胸が痛くなる場合、息切れになる場合が挙げられ、最後に肺癌について詳細に書いてあります。
感想
まずは外科医の書いた本だなっていう印象です。肺の構造やら肺癌について詳しく記載してあり、咳については咳以外の症状によってこういう病気が疑われるから早めに医療機関で検査してもらいなさいと、咳の原因究明については医療機関任せになっています。