著者紹介
2024年6月16日初版の宝島社から発刊された本で監修は石黒成治氏です。石黒氏は名古屋大学医学部を卒業され、がんセンターなどで勤務された消火器外科医で、現在は予防医療を行う健康スクールを主宰し、ヘルスコーチして活躍され、YouTubeやSNSで情報を発信されています。
食べても太らない食事術
内容
人体ではエネルギーを作り出す回路は3つあります。糖質をエネルギー源とする解糖系、脂質をエネルギー源とするケトン体回路、タンパク質をエネルギー源とする糖新生です。解糖系がメインで、糖質が枯渇したときに糖新生が稼働しますが、長くは続きません。食べても太らない食事の要となるのがケトン体回路です。ケトン体回路は余分な体脂肪をエネルギーとして消費できるうえに長時間元気に生活できるのですが、解糖系が稼働しているうちはスイッチが入りません。そのため一時的な糖質制限が必要となります。食べる時間を制限して腸内をキレイにする間欠的ファスティングは糖質依存の体質を変えるのに有効です。無理な糖質制限はリバウンドの原因となり、心臓の機能低下や心臓発作などのリスクを高めます。
朝はストレスホルモンのコルチゾールのレベルが高く、新しい習慣を作りたい場合はコルチゾールのレベルが高い方が良いとの報告があり、朝の行動の方が習慣化しやすいのです。運動を習慣化したい場合には朝の空腹時に行うと成長ホルモンが刺激され、筋肉の修復や成長を促すのに最適で、空腹時に運動すると肝臓や筋肉内に蓄えられた糖質を使い切りケトン体回路を稼働させるきっかけにもなります。
加工食品や糖質の摂りすぎでホルモン異常を起こしている人は少なくなく、その異常の一つにインスリン抵抗性があります。インスリン抵抗性はインスリンの効き目が落ちて食後の血糖値が下がりにくくなります。下がりきらないまま次の食事を摂ると高血糖状態が続いてしまいます。このインスリン抵抗性が極端に悪化した状態が糖尿病です。インスリン抵抗性があると脂肪は蓄積しやすくなり、肥満につながり、肥満になると満腹ホルモンのレプチンの効き目が落ちていつまでも食べ続けてしまいます。グレリンは食欲増進ホルモンで、空腹と関連せずに一定の時間ごとに分泌されます。グレリンの誘惑を乗り越えることがダイエットの成功の秘訣となります。グレリンの分泌はピークを迎えてから2時間で低下するので、空腹がウソである可能性を考慮して食べ過ぎないようにしましょう。
やせる・体を変える食事術として推奨する第一は、朝起きて一番にレモン・リンゴ酢水で水分補給することです。水500mlにレモン半分~1個の果汁を搾り、リンゴ酢大さじ2、岩塩を少量加えてつくりますが、白湯でもOKです。レモンを食前に摂取すると食後の血糖値の上昇が抑えられ、幸せホルモンのアディポネクチンが増えます。レモン汁はビタミンC、酵素、食物繊維を摂取できないため必ず新鮮なレモンから搾りましょう。酢の主成分の酢酸は継続的な摂取で内臓脂肪を減らす作用が報告されています。
1日に必要な水分量は体重(kg)×32mlで、これには食事に含まれる水分やお茶・コーヒーは含まず、これ以上は摂取するように午前中は意識して水分摂取をして細胞の脱水状態を防ぎます。午前中は毒素を出す時間帯でしっかりと排泄するために水分補給は重要です。
酸化しやすい悪い油は避けることです。悪い油は細胞を傷つけ体内の炎症を増やし、肥満・病気・ホルモン異常の原因となります。酸化しやすい油の代表はサラダ油です。サラダ油を使ったものは食べない、外食や総菜・冷凍食品は最小限にして自宅ではよい油を使うことです。よい油とはエキストラバージンオリーブオイル、ココナッツオイル・MCTオイル、アボガドオイル、ギーなどです。またインスリン抵抗性に陥っていると体脂肪は増えやすくやせることが難しいため、糖質を控えて体内の炎症を鎮めるようにするとインスリン抵抗性は改善します。
脂肪を燃やす体を整えるため、1日を食べていい時間と田場ない時間に分ける間欠的ファスティングをします。朝7時~19時の時間に食事をすませ、12時間の食べない時間を作ることから始めましょう。食べない時間は水、ノンシュガーのコーヒー・紅茶、お茶で対応します。最終的には食べない時間を16時間にするのが目標です。食べない時間を作るとインスリンの分泌量が抑えられ、体重や体脂肪は減少しインスリン抵抗性の改善も期待できます。さらに胃や小腸内にある食物残渣やバクテリアを押し流す掃除機能MMC(空腹強収縮群)で腸内環境が整います。MMCは90分ごとに起きますが、胃に食物が入ると止まるため食べない時間を作ることで正常化されます。
食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなり腸内環境を整えますが、体脂肪撃退のためにも欠かせない栄養素です。糖の吸収をゆるやかにして脂肪の蓄積を止める短鎖脂肪酸を産生する作用があります。食物繊維には水に溶けない不溶性と溶ける水溶性がありますが、不溶性食物繊維は保水性が高く、胃や腸で膨らみ腸を刺激して便を排出する動きを活発にします。水溶性食物繊維は腸内でゲル状になり、糖の吸収をゆるやかにさせてインスリンの大量分泌を防ぎます。食物繊維は不足しがちで、きのこと海藻を毎食摂取するのがコツです。主食を水溶性食物繊維が豊富な穀物・もち麦や、オートミール・ライ麦パン・全粒粉パンに置き換えるのもいいでしょう。
きのこは水溶性・不溶性両方の食物繊維が豊富で、ナイアシンなどのビタミンB群やミネラルも多く含まれ、βグルカンは血糖値を下げコレステロール値を整え、免疫力の向上にも作用します。食事の最後に食べると効果がより大きくなります。海藻は水溶性食物繊維のフコイダンが豊富に含まれ、ぬめり成分であるアルギン酸も食後血糖値の急上昇を防ぎ、亜鉛やマグネシウムなどのミネラルも豊富です。一度に大量に摂るよりも少量でも毎食摂る方が効果的です。積極的に野菜や果物を食べて食物繊維、植物栄養素(ファイトケミカル)、ビタミン・ミネラルを不足させないようにします。植物栄養素とは苦みや色素成分で、高い抗酸化作用があり活性酸素から細胞を守ります。ブロッコリー、にんにく、ねぎ、柑橘類の果物・リンゴを意識して摂りたいです。
緑茶にはカテキンが含まれ、肝臓や脂肪細胞における脂質代謝の活性化、血中の中性脂肪値の上昇抑制作用があり、食後だけでなく食前も飲むようにしましょう。お茶に抽出されるのは茶葉の成分の20%といわれ、茶葉を食べると70%吸収できるとする研究報告もあり、茶葉をフードプロセッサーで粉末にして料理に混ぜるなどもいいでしょう。
加工食品は大量の砂糖や植物油、保存料・着色料・人工甘味料などを使用したものがほとんどで、これらの加工食品やお菓子をなる別凝らないようにすることがポイントです。食品添加物の中には腸の粘膜にダメージを与えます。加工食品を摂らない代わりに食材を丸ごと食べられるホールフードを食べるようにしましょう。
タンパク質は消化・吸収するために消費されるエネルギーが糖質や脂質より高く、糖質を控えるにあたって積極的にとりたい栄養素です。しかし肉や乳製品などを過剰に摂取すると発がんリスクが高まるという報告もあります。筋肉を増やすためには動物性タンパク質と植物性タンパク質を1:1でとることが理想的とされています。小麦製品の過剰摂取は腸の粘膜を荒らす可能性があります。小麦に含まれるグルテンは粘りや弾力性のもとですが、消化されにくく腸壁にはりついて負担をかけます。放置すると腸の粘膜に隙間ができて有害物質が血液中に漏れ出るリーキーガットを引き起こします。乳製品に含まれるカゼインにも同様のリスクがあります。
腸の中には39兆個の細菌がいますが、多様性が高い状態をよく腸内環境といいます。菌種によって好む食材が異なるため、偏った食事では腸内細菌も偏り肥満の原因となります。腸内細菌は大きくフィルミクティス門とバクテロイデス門に分けられ、太るか痩せるかはこの比率にあることがわかりました。太っている人の腸内細菌はフィルミクティス門の細菌が20%多く、バクテロイデス門の細菌が90%少なかったのです。腸内細菌の偏りを減らすにはたくさんの食材を偏りなくとることが大切です。1週間に30種類以上の野菜・果物を食べる人は腸内細菌の多様性が高く悪玉菌が少ないことが判明しました。5食の野菜や果物を取り入れたカラフルサラダがおすすめです。腸内環境の良し悪しのキーワードは短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸の作用は腸のエネルギー源となる、腸内環境を改善させる、免疫機能を正常に働かせる、です。短鎖脂肪酸は大腸粘膜から吸収されないと役割を果たせず、腸内環境が悪いと吸収されずに短鎖脂肪酸は便とともに排出されるため、便の中の短鎖脂肪酸の量が腸内環境悪化の一つの指標となります。
LPS(リポ多糖類)は腸内細菌の細胞壁を構成する成分でもともと腸内に豊富にある物質ですが、増加しすぎると腸粘膜が損傷するリーキーガットを引き起こしてLPSが腸から血液内に漏れ出し炎症が誘発され、食欲の増進と体重の増加にもつながります。腸と脳は密接に交信しているのですが、LPSはこの交信を阻害します。高血糖・高脂肪食などによる腸内環境の悪化で、腸の組織に有害な物質や発がん性物質が増加して大腸がんの発生のリスクを高めると考えられています。腸内環境の悪化で糖尿病や動脈硬化の誘発で心臓疾患・脳血管疾患が引き起こされます。腸と密接なかかわりのある脳の不調によりうつ病も引き起こします。腸内環境を良好に保つコツは食生活の改善以外に生活リズムを体内時計に合わせることがあります。腸の活動も概日リズムにより制御されていて、便を排泄させるために起こる蠕動運動は朝に最も活発になります。蠕動運動は胃に食物が到達すると強まるので、朝食を抜くと排便の機会を逃がして腸の不調につながる便秘を招くことになりかねません。体内時計は地球の自転周期と微妙なずれがあり、起床したら朝日を浴びて朝食をしっかりとってリセットすると腸と体全体の健康につながります。腸内環境を悪化させるものに、抗生物質と清涼飲料水や加工食品に多く使われる果糖ブドウ糖液糖があり、どちらもできるだけ避けたいものです。
筋肉量が多い人ほどやせやすい傾向があります。筋肉量を維持したり筋肉を使ったりする際に多くのエネルギーが消費されるためです。脂肪をエネルギー源として燃焼させる臓器は筋肉(骨格筋)なのです。筋肉を維持するためには良質のたんぱく質を摂取することと運動して筋肉を使うことです。カナダから座っている時間が長いほど脂肪及び心臓病による死亡リスクが高まることが報告されました。筋トレをすれば筋肉量の維持・増加だけでなくマイオカインと呼ばれる生理活性物質が分泌されやせやすくなることもわかっています。毎朝筋トレをする習慣をつけましょう。おすすめの筋トレは肩甲骨プルダウンで、背中の筋肉を鍛えるとともに左右の肩甲骨の間にある褐色脂肪細胞を刺激することです。もう一つは菓子の筋肉を鍛えるイスでスクワットです。肥満を抑制・改善するために積極的にとりたい栄養の一つにビタミンDがあります。ビタミンDは骨や歯の材料とするほか筋肉の合成にもかかわります。骨が強化されると肥満抑制の作用があるオステオカルシンが骨芽細胞から分泌されます。ビタミンDは日光を浴びることで体内で合成できる唯一のビタミンですが、サケ・サンマ・カレイ、シラス干しなどの魚介類や干しシイタケ・渇きクラゲなどのきのこ類にも豊富に含まれ、摂取したいものです。朝の運動が習慣化したら1日30秒から2分にトレーニング時間を延ばしましょう。
健康を保ち肥満予防の効果のある理想的な睡眠時間は7時間です。入眠前にはテレビ・パソコン・スマホなどの神経を興奮状態にする光刺激は避けて、リラックス時に働く副交感神経を優位にする深呼吸は試してみて、ゆっくり長く息を吐いて、横隔膜がゆったりゆるんでリラックスして心地よい入眠と質の良い睡眠を得ましょう。
糖質制限をスムーズに受け入れるため、ボーンブロススープを飲んで体に必要な栄養素はしっかりと摂取してファスティングすることを推奨しています。糖質は依存性の高い中毒物質ですが、経験上5日間程度糖質を断つと禁断症状は落ち着きます。初めてボーンブロスファスティングに挑戦する人はまず2日間行ってみましょう。糖尿病の方、子供、妊娠中の方・妊娠を考えている方、やせ気味の方、摂食障害の既往のある方は担当医の許可なくやってはいけません。
間欠的ファスティングによって食事量が減ると、筋肉内にため込まれた糖質と筋肉のたんぱく質がエネルギー源として使われます。ここでしっかり筋肉を鍛えておかないと筋肉量がどんどん減ってしまいます。推奨するのはTABATA式インターバルトレーニングで、全力で20秒の運動をした後10秒休憩することを4分間繰り返すというものです。20秒の運動は全力で筋トレをしましょう。毎日のトレーニングを増やすとしても翌日に持ち越さないために2セット8分までにしましょ
感想
間欠的ファスティングが推奨されていますが、それをすれば食べても太らないのか具体的には書かれていなかったと思われ、題名がちょっとそぐわないと思いました。また概日リズムを整えるため朝食が大事のようなことも書いていましたが、間欠的ファスティングとはちょっと矛盾するように思うのですが、それについての言及もなく結局朝食はどうしたらいいのかという疑問は残りました。しかし間欠的ファスティングの有用性や、それをするときお運動の必要性などわかりやすく記載されており、納得できることも多くとてもためになりました。