9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方

著者紹介

2023年5月15日初版の青春出版社から発刊された本で著者は金津里佳氏です。金津氏は1970年生まれで、北陸学院短大食物栄養学科を卒業され、現在は医療法人の管理栄養士です。

9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方

内容

ヒトの身体は単純ではなくそして皆同じではないことを無視している健康情報が非常に多いです。食事は治療であり、伝えたいのは対症療法ではなく根本療法です。

昨今たんぱく質ブームともいえるほどたんぱく質に注目が集まっています。たんぱく質が不足してるかどうかは3日分くらいの食事内容を伺いますが、ご自身が思っているほど摂れていないこともかなり多いです。しっかり摂れている場合、肉を食べた時胃がもたれたりお腹がゆるくなることを伺い、不快な症状なく便の状態も良いならたんぱく質は足りていると判断しますがかなり少数です。重要なのはたんぱく質を食べる量ではなく消化吸収できる量です。

たんぱく質を消化するにはたんぱく質が原料の消化酵素と胆汁酸が必要で、不足すると消化不良となり下痢や胃もたれなどの不快症状を引き起こし、アレルギーの原因となったりしてしまいます。

40歳くらいからアブラっぽいものが苦手になる方が増えますが、たんぱく質不足が主な原因であることも少なくありません。胆汁酸が少ないと胃がもたれ、しっかり出る人はすっきりと消化できるのです。

お腹の状態が思わしくない人の原因は消化酵素や胆汁酸の不足にとどまらず、リーキーガット症候群の可能性がとても高いです。リーキーガットとは小腸の上皮粘膜が炎症により粗い網目のようにゆるんだ状態を意味しますが、そうなるとたんぱく質の吸収が途端に悪くなるので、いくら食べてもたんぱく質不足を解消することが難しくなります。

たんぱく質補給目的にプロテインを摂る人が増えましたが、リーキーガット症候群やたんぱく質不足の人では、たんぱく質を補給できないだけでなく身体に負担がかかってしまいます。添加された非ヘム鉄が体内の炎症を大きくするリスクがあり、含有されている人工甘味料や香料を多く摂ることになります。プロテインをおすすめするのは咀嚼が困難になったご高齢の方と大会前のアスリートのみで、アスリートでも腸粘膜が健全なことが前提です。たんぱく質は肉、魚、卵、大豆製品などの食品から摂るようにしたいです。ビタミンB群、亜鉛、ヘム鉄がたっぷり含まれ、身体の代謝に必要な酵素の原料になります。プロテインを継続して摂ると血液中の尿素窒素(BUN)が上昇してきます。この時は体内で筋肉を壊してたんぱく質不足を補っていたり、消化管から出血している可能性があります。

たんぱく質が不足すると、ドーパミンといった神経伝達物質がきちんと分泌されず意欲や集中力の低下につながります。セロトニンも減ってうつのような症状なる場合もあります。メラトニンはセロトニンから作られるため、睡眠の質も低下してしまいます。眠りの質を改善するというグリシンを含むサプリメントがたくさん売られていますが、グリシンは非必須アミノ酸なので、肉や魚などからたんぱく質を補給することをおすすめします。

むくみは体質ではなくたんぱく質不足からくる脱水が主な原因です。血液検査の総蛋白(TP)のベストな値は7.2以上7.5未満で、低すぎても高すぎてもたんぱく質は足りてないことを表します。7.5以上の時はたんぱく質が少ないために血管の外に水分を出して浸透圧を調整している可能性もあります。むくみやすい人はだいたいスイーツや炭水化物好きで、糖質には水を抱え込む性質があり、糖質制限で一気に痩せるのは単に水分が身体から出るからです。

筋肉にたんぱく質は重要ですが、骨もコラーゲンは重要な材料なのでたんぱく質は必要です。骨の半分はコラーゲンです。

厚労省が推奨している1日のたんぱく質摂取量は、体重1kgあたりおよそ1-1.5gです。たんぱく質量はその食品重量の20%程度とされ、肉は加熱すると5-10%減少するため、肉100gに対してたんぱく質は10-15gとなり、1日600gの肉を食べましょうという話になります。これは非現実的です。推奨するのは肉や魚を中心に卵、大豆製品などのたんぱく質が豊富な食品を食べて、気持ちよくお腹いっぱいになれるマックスの量です。ちょっとでも辛くなったらすぐに箸をおいてください。その日によっても異なりますが、計算で算出した量を無理に食べるのは非常によくありません。たんぱく質不足でも無理して摂ろうとせず食べていて気持ちいい量を少しずつ増やしていってほしいです。

リーキーガット症候群は普通に病院にいっても診断名がつくことはありません。日頃からお腹の調子が悪い人は可能性が高く、睡眠の質が落ち、頭がぼーっとしたり集中できず吹き出物が増えることもあります。たんぱく質と脂質の吸収はがくっと落ちますが、糖の吸収は100%維持され吸収スピードが上がって、血糖値の乱高下が起きやすくなり、自律神経への悪影響などさまざまな不調を起こします。

保険のきかないゾヌリン検査という血液検査で可能性を確認することはできます。リーキーガットでは抗体が作られやすいため、遅延型アレルギー反応がたくさん出た人は可能性が高くなります。

リーキーガットの原因は小麦に含まれるグルテンがあり、ふわふわとしたパンを求めた結果グルテン含有量が以前の40倍になったと言われています。牛乳に含まれるカゼインも原因になります。カンジダ菌の増殖も大きな原因の一つで、抗生剤の服用で増殖することがあります。アルコールから生成されるアセトアルデヒドの増加も腸内細菌叢のバランスを大きく変えます。腸粘膜をケアするためには、グルテンを含む小麦とカゼインを含む乳製品を食べないことです。バターや山羊のチーズやヨーグルトは大丈夫です。グルテンやカゼインはアヘンと同じように脳に侵入してエクソルフィンを分泌させ、中毒のようになっているのです。とにかくまず3日間ほどグルテンやカゼインを完全に断つことです。そうすることでそれらを食べたいという欲求はだんだん薄れ、さらに2週間続けると中毒症状はほとんどなくなります。甘いものもカンジダの餌となるのでできるだけ控えましょう。

日本人に理想的な栄養バランスは、炭水化物50-65%、脂質 20-30%、たんぱく質13-20%とされてきましたが、これには科学的根拠がないのです。アメリカでも科学的根拠はありません。このバランスは身体の組成バランスとまったくあってなく不健康なバランスといえます。身体は水分を除くと4割ほどたんぱく質が占めています。このバランスでは糖尿病は治るはずはなくむしろ悪化してしまいます。

糖質のとりすぎで胃腸が弱くなるメカニズムが明らかになってきました。毎日のように糖質ばかりたくさん摂り続けると胃の蠕動運動が行われない時間が作られることがわかってきました。食べ物が胃の中にとどまると胃壁は胃酸を出し続けます。糖質制限を行うと逆流性食道炎が改善することが知られ、糖質過多で逆流性食道炎になるケースもかなり多いと考えられます。胃酸を抑える薬を飲むと消化吸収力がかなり落ちるので、本当にしんどい時以外は服用期間を極力短くするべきです。

お腹がすいた時はたんぱく質をとるべきですが、すぐに血糖値の上がる糖質を食べたくなるのです。健康状態や食事内容によって血糖値が急上昇し、インスリンが過剰に分泌され血糖値の乱高下につながります。インスリンの血中濃度が高いとレプチンの信号がブロックされて食欲がコントロールできなくなります。血糖値の急上昇を防ぐには糖質を食事の最後に摂ること、たんぱく質や脂質と一緒に摂ることです。

インスリンが過剰になるとインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が高くなります。そうなると甘いものを少し食べただけで血糖値が上がってなかなか下がらずどんどん太ってしまうのです。極端な話糖質は全く摂らなくても生きていけるので、食事はたんぱく質が豊富な肉や魚を優先して食べ、余裕がある場合は野菜を食べ、それでも足りない時は糖質を適量摂る食べ方が理想的です。

果物に含まれる果糖はもっとも控えてほしいです。果糖はブドウ糖より血糖値を上げにくいですが、中性脂肪になりやすいです。果糖は肝臓のみで代謝されるので、果糖の摂取が増えると肝臓に負荷がかかり脂肪肝などの原因になります。果糖を酔わないアルコールと呼ぶ人もいます。身体にいいと思いご自身で作った果物・野菜ジュースを飲んでいる人もいますが、水溶性ビタミンは空気に触れるとすぐに壊れてしまい、ジュースにした段階でほとんどなくなります。脂溶性ビタミンも供給源になるほどの量は含まれません。ミネラルや食物繊維もほとんど残っておらず、糖質だけの飲み物と一緒なのです。搾りかすもとれば食物繊維はとれますがのどごしは悪くなります。市販のジュースはデメリットの方が多いです。ここ数十年の品種改良で果物のビタミンやミネラルの含有量は大きく減っています。唯一増えたのは糖質です。果物が好きな人はジュースにせず咀嚼して食べてください。それでも毎日は控えて旬のものを、キウイやベリー系のように種ごと食べられるものがよいでしょう。イチゴは農薬が気になるので少しにしましょう。

人工甘味料については発がん性があるというデータのあるものもあり、摂取は勧められません。甘味料ならば、羅漢果という中国原産の果物と糖アルコールのエリストールで作られた甘味料がおすすめです。砂糖を摂るならテンサイから作られた糖は腸内細菌の餌になるオリゴ糖が入っているのでおすすめです。ハチミツ、メープルシロップ、アガベシロップは果糖が多いので勧められません。

太るからと脂質を摂らずにたんぱく質のみ摂る方がいますが、筋肉をつけるためには脂質もしっかり摂る必要があります。脂溶性ビタミンも一緒に摂ると身体に吸収されやすくなります。

カロリー計算をする方もいますが、カロリー計算は無意味で、たんぱく質や糖質の量に注意すべきです。メタボリックシンドロームで指摘されるお腹周りについた脂肪は、糖質摂取によりインスリンが分泌されて身体に蓄えられたもので、脂質の摂りすぎで作られるわけではありません。脂質は摂りすぎても便と一緒に体外に排出されるので怖くありません。多量の糖質と一緒に摂ると、脂質が遊離脂肪酸となって、インスリンがたくさん分泌され脂質も脂肪細胞に取り込まれてしまいます。

全粒粉の小麦は血糖値も上がり、外皮に含まれるフィチン酸は体内に入ると鉄や亜鉛といったミネラルを吸着して外に出してしまいます。一時流行したマクロビオティックが貧血になるのはこのためで、動物性たんぱく質に含まれるビタミンB12が不足もします。玄米食の人も鉄やビタミンB12が不足して元気がなくなっていきます。

肉のアブラを代表とする飽和脂肪酸は動脈硬化を促進するのでなるべく摂らないほうが良いと信じられてきました。2017年に食事全体の脂肪エネルギー比が35%ほどの飽和脂肪酸摂取の多い人は少ない人に比べ心血管疾患による死亡リスクは低いという研究結果が発表されました。オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸は加熱すると酸化して細胞膜を硬くしてしまう原因になります。肉はどの部位でも構いませんが、アレルゲンを作りやすくなるので、いろいろな種類をローテーションで食べると安全です。

コレステロールの8割は身体の中で作られ、食事からはわずか2割ですので、食事から摂るコレステロールと血中コレステロール濃度に因果関係はないことが明らかになりました。悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールは、血中に増えると血栓のもとになり動脈硬化につながると思われていますが、動脈硬化を招くのはLDLの中の酸化LDLコレステロールです。飽和脂肪酸で上がるのは大型低密度LDLコレステロールで、血栓をできやすくする小型高密度LDLコレステロールは糖質により増えます。コレステロール値が高くてもすぐに心配する必要はなく、特に中高年の女性は高くなり、ある程度高いほうが良いです。高めを維持して酸化LDLコレステロールを作らないのが理想で、糖質の摂り方に気をつけましょう。ただしコレステロールの高い人の中には生まれつき体質的に高くなる人がいて、食事のコレステロールの感受性が高い家族性高コレステロール血症の可能性があり、別の食事指導と治療が必要になるため、信頼できる医師に相談しましょう。自費診療でないと測れませんが酸化LDLコレステロールを測って薬を飲むか検討すべきと思います。

脂肪は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられ、不飽和脂肪酸はω3、ω6、ω9に分けられω3と6は身体の中では作られないため摂取が必要ですが、ω6系は加工食品などに入っているため過剰にとっていることが多く、ω3系を意識して摂りましょう。亜麻仁油やえごま油などですが、非常に酸化しやすく加熱してはいけません。無味無臭なのでサラダや飲み物にスプーン1-2杯入れるといいでしょう。ただし必ず低温圧搾、コールドプレスと表記されているものを選びましょう。加熱料理には飽和脂肪酸が望ましく、ラード、バター、牛脂がいいでしょう。ココナッツオイルは植物由来ですが飽和脂肪酸が多く加熱できます。MCTオイルとともに中鎖脂肪酸に分類され、小腸から肝臓にいきすぐにエネルギーになります。ラウリン酸など抗菌作用を持つ成分が含まれ非常に良いアブラと思います。しかし産地によっては粗悪品もありよく確認しましょう。オリーブオイルは、含まれるオレイン酸は体内でも作られ、加熱により酸化するのであえて摂る必要はないと思いますが、抗酸化作用の高いポリフェノールを含んでいますので、かけて摂るのはいいでしょう。不飽和脂肪酸は光と熱に弱く酸化しやすいので、外食の揚げ物には注意が必要です。スナック菓子のアブラも非常に酸化しているので、植物油脂や食用油脂と書いてある場合摂らないようにしてください。トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングなどに使用されますが、身体で代謝できないので細胞膜のダメージが蓄積される恐れがあります。

バター以外の乳製品と小麦は抜きましょう。小麦製品の代替は米粉100%のパンや麺などの商品で、ハトムギ以外の麦の名前のつくものにはグルテン様たんぱく質が含まれるので摂らないようにします、ビールにもグルテンは含まれ、ウイスキーにも量は少ないですがグルテンは含まれます。麦茶も控えたほうがいいでしょう。青汁も大麦を原料にしていることが多く飲まないようにしましょう。乳製品の代替は豆乳、アーモンドミルク、山羊の乳で作られたものがあります。一般に流通している牛乳には、乳牛のエサの影響でホルモンを撹乱させる成分が含まれている可能性があります。女性では乳がんや卵巣がん、男性では前立腺がんや精巣がんなどに罹患するリスクが増大します。

肉について、安い肉は質の悪い飼料で育てられた可能性が高く、アブラの質も悪くなり、アブラが黄色いものは避けましょう。A5ランク級の牛も糖質たっぷりのエサで育てられ炎症を起こすω6系脂肪酸のアブラが多い肉で、おいしいサシは要注意です。大豆ミートにはビタミンB12が全く含まれず肉の代替にはなりません。

魚介は良質なたんぱく質と脂質が入って素晴らしい食品ですが、可食部分が少ないのが難点です。加熱しないためたんぱく質量が目減りしない刺身がおすすめです。ただし多くの魚には水銀の問題がありマグロなどの大型魚は多くても週1回にしましょう。

卵は1日3個くらい食べても大丈夫ですが、アレルゲンとなりやすく、週2日ほど食べない日を作ってください。

大豆はアミノ酸スコアが動物性たんぱく質より落ち、不足分を補うものとして摂るようにしてください。豆類にはレクチンという腸粘膜をあらす物質が含まれるので、適量を食べるようにするといいでしょう。発酵した納豆の豆は大丈夫です。

糖質制限をする人がいますが、それにはしっかりとたんぱく質が摂れるようになっていることが必要です。たんぱく質が摂れずに糖質制限すると体調を壊すことがあります。最低でも1食150g程度の肉が食べられる様になってからです。

感想

たんぱく質が不足すると消化酵素と胆汁酸が不足してたんぱく質が吸収されないので、たんぱく質をたくさん摂りましょうということだと思うのですが、題名のように摂り方が間違っているのではなく、摂る量を間違っているのでしょうか。全粒粉の小麦を摂るとミネラルが排泄されるとは初めて知りました。リーキーガットがあるか健診などで検査できるようになればいいと思いました。

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