認知症を防ぐ最高の食べ方

著者紹介

2024年4月17日初版のKADOKAWAから発刊された本で、著者は山根一彦氏です。山根氏はLINEやYouTubeで認知症予防や改善に役立つ知恵を広く発信されています。

認知症を防ぐ最高の食べ方

内容

生活習慣の改善で認知症の40%発症を遅らせることができると報告され、近年注目されている2014年にデール・ブレデセン博士が考案したリコード法をベースに、特に重要と考えている食事法について述べます。

これまで認知症は助けようがないとされてきましたが、レカネマブ(商品名レケンビ)が発売され、早期のアルツハイマー型認知症に対してアミロイドβを掃除する作用で効果をあげますが、完治を目指すものではありません。
認知症の原因は症状が現れる20年前から育っています。アミロイドβは脳に危機をもたらす要因があると集まってそれをやっつけますが、度重なるとアミロイドβが増えすぎて脳神経を攻撃してアルツハイマー型認知症を引き起こします。脳に危機をもたらす要因とは、炎症、毒素、栄養不足の3点に分けられます。

炎症とは体内に入った異物を敵とみなし、免疫系が攻撃することで起きます。脳はあらゆる部位の司令塔で、足指の小さな炎症でもそれが長引けば脳にアミロイドβは蓄積されていきます。糖尿病の患者は認知症の発症リスクが2倍になります。糖尿病はブドウ糖が増えすぎてたんぱく質に結合してAGEsという悪性物質が生成され、痛みなどの自覚症状がないまま全身の血管を傷つけ炎症させます。

ブドウ糖が増えるとインスリンが大量に分泌されますが、それが続くとインスリンはだんだん効きにくくなっていきます。インスリンは脳のエネルギー代謝調節、記憶、学習、神経細胞の新生・維持・修復に必須な存在でもあります。インスリンが効かなくなると脳での働きも効果を示さなくなり、アミロイドβが取り除かれるスピードが落ちて蓄積が増すことがわかっています。またインスリンは最終的にIDEという酵素で分解処理されますが、脳のアミロイドβもIDEで分解されるため、インスリンがたくさん分泌されるとアミロイドβの分解が疎かになるということもあります。
血糖値を上げるのは甘いものとは限らず、パンや麺類などの小麦粉からできたものや、お米やせんべいやイモ類も炭水化物で上げます。

腸の粘膜にダメージを与えて腸もれを引き起こす代表格が、小麦に含まれるグルテンです。乳製品、添加物の多い加工食品、過剰なアルコールカフェインも腸もれを招きます。認知症の方の腸内細菌は多様性が低く善玉菌の割合が低いことがわかっています。善玉菌は腸に定着しにくく、味噌や納豆などの発酵食品をよく食べて、キノコなどの食物繊維、玉ねぎ・ゴボウに多く含まれるオリゴ糖などの餌もおすすめです。飲酒、ストレス、人工甘味料、添加物、抗生物質などの薬で悪玉菌の割合は増えます。1日24g以上食物繊維を摂ると悪玉菌を減らせます。ヨーグルトや乳酸菌飲料に頼るのは勧めません。乳製品は健康上問題が多いです。

血液中のホモシステインの濃度が高い人で認知症の発症リスクが上がることがわかりました。ホモシステインはメチオニンという必須アミノ酸が代謝されるときに生成されます。ホモシステインを減らしてメチオニンを増やすにはビタミンB群の摂取が望まれます。

 

毒素について、水道管から溶け出る鉛はわずかでも長期にわたると問題になる可能性があり、リコード法にも水道水には注意が必要とされ、浄水器の使用が望ましいと考えます。最近は歯周病菌が原因でアミロイドβが増えるとの報告もあります。農薬も問題で、農薬の多くは脂溶性で蓄積性があります。なるべく無農薬・低農薬を選び、よく洗うことや茹でこぼす工夫も必要です。水銀は大型の魚や深海魚に蓄積されやすく、なるべく避けるほうがよさそうです。
解毒は肝臓と腎臓でされますが、それを助ける栄養素のシステインというアミノ酸も摂りたいです。システインはグルタチオンという成分を作りますが、イソチオシアネート、セレン、ビタミンB2も働きを高めます。

脳は約60%の脂質と約40%のたんぱく質からなっており、良質な脂質とたんぱく質の摂取は必要です。ビタミンは13 種類ありますが、ビタミンBとDは脳のシナプスの働きを強化します。認知症の血液中にはビタミンD、B12、B6の減少がみられます。人体に必要なミネラルは16種類ですが、多すぎてもよくなく、認知症の方は、銅が過剰で亜鉛が不足、脳内で鉄が過剰に蓄積、セレンが不足している傾向があります。

小麦には農薬の問題があり、国内自給率は約15%で、アメリカ・カナダ産のほぼすべてからグリホサートという農薬が検出されます。グリホサートは腸内環境を悪化させ、殺虫剤のネオニコチノイド系農薬は神経障害や脳機能を低下させます。ポストハーベストは洗っても焼いても落ちません。50%国産ならば国産小麦と表示できるので注意が必要です。小麦のグルテンが分解されるときにグリアドルフィンが作られ、これが脳内でモルヒネのように中毒症状を示します。トランス脂肪酸はアミロイドβの蓄積を増やし、血中濃度が高いと認知症の発症リスクが高まる可能性があると報告されています。牛乳にはカゼインが含まれ、アレルギーの主な原因となりアミロイドβの蓄積を促します。カゼインが不完全に分解されるとカソモルフィンが発生し、神経障害や認知処理速度を遅くします。動物性脂肪も含まれ動脈硬化の原因になります。また牛の餌には農薬や遺伝子組み換えの問題もあります。どうしても飲みたい人はノンホモ牛乳、グラスフェッドミルクですが1日200mlまでにしましょう。揚げ物はAGEsを多く含有しますが、レモンはAGEsの発生を抑え、唐揚げの下味にレモン汁を混ぜると約40%発生を抑えられた実験報告もあります。炭水化物を多く含む食材を120℃以上で加熱調理すると、発がん物質のアクリルアミドが発生する可能性があります。海藻類は健康にいい食材として推奨されますが、ひじきは無機ヒ素が多く含まれ、無機ヒ素は認知症発症の関与が疑われています。ひじきを食べる際は必ず茹でこぼしをしてから調整してください。これで9割落とせます。

食べ物と食後血糖値の関係を数値化したGIがありますが、最近は食品の一般的な1食分の摂取量に対しての血糖値の上がり方を示す値のGLもあります。赤ワインにはレスベラトロールというポリフェノールがアミロイドβを減らす効果がありますが、飲酒量が増えるほど脳は萎縮し、断酒を続けると萎縮が改善することがわかっています。人工甘味料は糖尿病リスクを増やし、一部の腸内細菌を増やし、抗酸化物質のグルタチオンを減少させます。果糖ぶどう糖液糖は血糖値を急激に上昇させ、果糖は肝臓に負担をかけ、輸入トウモロコシで作られることがあり農薬の問題もあります。

 

認知症の方は脱水になっていることが多く、こまめに水をとりましょう。1日1.5Lを目標にします。少しずつ飲むのがコツです。汗をかいた時は0.2%の塩水がおすすめです。ブロッコリーには抗炎症力・抗酸化力に優れたイソチオシアネートが含まれます。食物繊維も豊富なので食べ過ぎは腹痛や下痢の原因となり、毎日四分の一株(約50g)の摂取が理想的です。新芽のスプラウトにはイソチオシアネート類のスルフォラファンが含まれます。ニラの葉先にアリインとメチインが含まれ、強い抗酸化力とピロリ菌増殖抑制作用があります。認知症の方はピロリ菌感染率が高いことがわかっています。ニラにはビタミンやカリウムも豊富です。刻んで冷凍するとアリインとメチインが増えます。ニンニクにのみ含まれるS-アリルシステインは強い抗酸化力があり、アミロイドβの蓄積を抑え、海馬の神経細胞の再生を助けます。キノコ類を1週間に300g以上食べると軽度認知障害のリスクが50%低下する可能性があるとわかりました。理由はエルゴチオネインが影響しているとされます。過剰摂取すると不溶性食物繊維はかえって腸の働きを悪くします。EPAとDHAは脳の側頭皮質と前頭皮質の体積減少を抑制できるため、多く含まれるサンマ、サケなどの小型魚の積極的摂取がおすすめです。脂の乗ったサンマに特に多く、サケには抗酸化力に優れたアスタキサンチンが含まれます。肉にはたんぱく質が多く含まれますが、摂りすぎはホモシステインも増えるのでしっかり運動しましょう。牛肉は脂肪や亜鉛・鉄多くビタミン少な目、豚肉はビタミンB多くミネラル少な目、鶏肉は脂肪少なく純粋なタンパク源として優秀です。貝に含まれるタウリンは動物実験で認知症に有用性が確認され、タコやイカからも摂取できます。牡蠣には亜鉛も多く含まれます。卵には卵黄にレシチンが含まれ認知症の予防に期待が持てます。1日1-2個なら全然問題はありません。納豆にもレシチンが含まれ、それ以外にも健康に寄与する成分が非常に豊富でパーフェクトな食べ物と考えています。甘すぎる果物はよくありませんが、ベリー類と柑橘類はビタミンとポリフェノールが摂れます。イチゴは糖分の多いものや残留農薬が懸念されます。ベリー類にはアントシアニン、柑橘類にはノビレチンが含まれ、シークワーサーはノビレチンの含有量が飛び抜けています。緑茶にはエピガロカテキンガレートと呼ばれるカテキンがアミロイドβの凝集を抑えます。カフェインも含まれますので、午後3時までには飲み終えたほうがいいでしょう。ビタミンCの血中濃度が高いと認知症になるリスクが減るという報告もありますが、ビタミンCは2時間もすれば使われない分は尿から体外に出てしまいます。パプリカ・ブロッコリー・菜の花にも多く含まれますが、有機レモン果汁をこまめに摂るのもおすすめです。濃すぎるレモン果汁に含まれるクエン酸は酸性で歯の表面を溶かす恐れもあります。焼き芋を冷ますとレジスタントスターチが増えます。食物繊維のような状態の糖質で、吸収が遅く血糖値の上昇は穏やかになります。サツマイモには水溶性と不溶性の食物繊維がバランスよく含まれ腸内環境の改善に有用です。ビタミンCも多いですが、甘い品種には糖質も多いです。

 

睡眠の問題があるとアルツハイマー型認知症の発症率は1.55倍になります。腹八分目にとどめると睡眠の質を高めます。よく噛むと脳の血流量が約50%増加し、噛まないと海馬の神経細胞が30%減少すると報告されています。噛むイメージでも効果はあり、水分も噛むイメージで飲みます。生肉の調理に湯煎するとAGEsの産生を防げますが、肉の殺菌に75℃1分以上加熱する必要があります。加熱調理に使える脂はオリーブオイル一択です。

感想

認知症は現在の医療技術では治すことは困難ですが、生活や食事習慣で発症をある程度予防することができますので、こういった知識を持って効率的に予防しましょう。こういった認知症予防の食事はがんの発生や生活習慣病の予防にもなると思われます。

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