2023年12月27日初版のプレジデント社から発刊された本です。
間違いだらけの健康常識
内容
2018年のランセットの報告では、健康に良いアルコール摂取量は存在せず、1日1杯でも飲まない人に比べがんや糖尿病などのアルコールに関連する23の健康問題のリスクが0.5%上がります。1日2杯では7%、5杯飲む人は37%でした。
砂糖の依存性はモルヒネやヘロインに匹敵し、急激にやめると離脱症状が起きるので徐々に減らす必要があります。果汁100%も健康に悪いと報告され、スポーツドリンクにも糖分は多く含まれます。人工甘味料を普段から使用している人は、肥満・糖尿病・心臓病のリスクが高い結果が報告されました。
チョコレートの原料のカカオ豆にはフラバノールというフィトケミカルが含まれ、抗酸化作用や血管拡張作用があります。2週間連続で摂取すると、健康な人の血圧を2mmHg低下させる効果がありましたが、実用的な意味はないと言えるでしょう。チョコレートには媚薬的要素があると言われますが、カフェイン・テオブロミン・フェニルエチルアミン・極微量のアナンダミドなど脳を興奮させる物質が含まれているからです、恋愛中の人々の尿からフェニルエチルアミンの分解物が豊富に見つかっていますが、チョコレートを摂取してもフェニルエチルアミンは胃酸で分解されて血中濃度は少しも上昇しません。テオブロミンはカフェインと似た分子構造を持ち、大量摂取にて食欲低下・頭痛・心拍上昇を引き起こします。犬はテオブロミン分解能力が低く、中毒症状が出やすいです。
コーヒー1杯に100mg近いカフェインが含まれ脳を活性化します。抗酸化物質も含まれ寿命を延ばすと言われています。一部の人には睡眠障害や不安を引き起こします。妊婦ではカフェインを分解する酵素の働きが低下しているので、慎重な摂取が望まれます。
牛乳で身長が伸びる通説には信憑性に大きな疑問があります。牛乳を摂取しても骨は強くならず、血管などに障害を引き起こす可能性があります。日本人はカルシウム不足と言われていますが疑わしいです。
日本人の保険リテラシーは、世界15ヵ国で調べたところ最低の結果で、がんは死に至る恐ろしい病というイメージをいまだに抱えています。年齢別のがん罹患率は55歳で4%、65歳では15%、75歳では約3分の1となります。日本はがん罹患率、死亡率ともに世界第一位ですが、同じ年齢で比較すると欧米と大差ありません。がんを減らす第一歩は原因を知ることで、原因はタバコ、感染症、酒です。タバコは肺がんのみならずさまざまながんを引き起こします。ピロリ菌は60代では約半数が感染していますが、10代では5%しか感染していません。顔が赤くなる人が深酒すると、食道がんのリスクが50倍に跳ね上がります。運動不足も原因になりますが、座り過ぎでもリスクが8割アップするデータもあります。焦げの摂取はトン単位で摂取しなければ大丈夫ですし、日本人は紫外線ではがんにほぼなりません。ストレスも大きな相関はありません。
がんは遺伝約5%、タバコや食事などの生活習慣が約3分の2で、残りの約3分の1はその人の運なのです。そのため重要になるのががん検診による早期発見です。がん検診はエビデンスを国が認め、健康増進法の裏付けがあるため公費で補助されています。年1回受ければがんの死亡率は大幅に低下します。早期の固形がんなら、最近は手術でなく放射線治療を選ぶ人も増えてきています。最近は体に負担が少ない治療法も開発され、金銭的なメリットもあります。
早死する人の死の兆候は赤ら顔です。血行が良い証しともいわれましたが、漢方医学では瘀血で血が滞っていることを示しています。西洋医学的にはコレステロールや中性脂肪や、尿素窒素・尿酸などの老廃物が溜まって血液がドロドロになっている状態です。その結果は脳梗塞や心筋梗塞、がんです。
頭痛も早死にと関係があり、瘀血によるものです。痛みのほかには痺れも危険な兆候です。左右片方だけなら脳からきている場合が多く、両側では血行が悪いことが考えられます。
体の筋肉量は体重の40%を占め、そのうち70%は下半身に集中しています。筋肉が細くなると今まで支えていた体重が支えられなくなり、膝や腰の負担が増え膝痛・腰痛が発生しやすく、同時に糖尿病・高血圧・痛風も増えてくる傾向があります。老化を遅らせるには筋肉を鍛えればいいのです。早死する生活習慣はタバコです。タバコには煙を吐くことにより、リラックスを司る副交感神経がよく働き、緊張・戦いと呼応する交感神経を和らげますが、タバコは百害あります。家庭内不和や不倫も死を早めます。交感神経が常に働くからです。夜型生活もホルモンバランスの乱れを起こします。リンパ球が一番よく働くのが午前0時から2時で、この間に就寝していないと免疫力が上がらずあらゆる病気にかかりやすくなります。適度なサウナ習慣は心不全の予防に寄与することがわかっています。少し低め65℃のサウナに15分、週3回入ると状態が改善する報告があります。フィンランドで週1から7の人まで調べたところ、頻度が高い人ほどあらゆる病気の罹患率が少ないことがわかりました。空腹の時にオートファジーで細胞が若返りますが、食べ過ぎもよくありません。
高血圧の改善には薬物療法と生活習慣の改善があります。生活習慣の改善では減塩と運動が大事ですが、減塩は簡単ではありません。運動も1日1万歩も歩くのは、時間的にも体力的にも続けることができない人も出ます。そこでその場でジャンプするだけの8秒を考案しました。両足を肩幅くらいに広げ、足が少し浮くくらいの高さで真上にジャンプするだけで、目安は1秒に2回ですが最初は1秒1回でも構いません。ポイントは楽しみながら持続してすることです。この運動は有酸素運動と筋トレを兼ね備えて効果的なのです。
体に溜まった中性脂肪を減らすには、より激しい運動を短時間かつ低頻度でも減ることが近年わかってきました。ポイントはもうこれ以上できないと感じるほどの強い運動と、休息あるいは強度を落とした運動を短いインターバルで繰り返すことです。腕立て伏せを全力で20秒して10秒休憩、を8セットするような方法で、5-15分のトレーニングで、これをHIITと言われ、週に数回だけします。注意点はいきなりして怪我をしないようにすること、心疾患がある場合はより注意が必要です。
重度の歯周病は歯だけでなく全身の健康にも悪影響を与えることが知られています。歯周病には歯肉炎と歯周炎があります。歯肉炎の原因は歯肉についたばい菌で、ばい菌の塊のプラークを取りさえすればいいのです。歯周炎について、ばい菌を破壊するために白血球が自爆する時に、周囲の歯周組織も巻き込んで破壊してしまい、場合によって歯周ポケットができることもあり、さらにひどくなると歯根膜や歯を支える歯槽骨まで破壊が進み、これが重度の歯周炎です。歯肉炎から歯周炎に進行するのは間違いありませんが、なぜ歯周ポケットができるのかは分かってぃません。
口の中には常在菌が700種類近く生息し、歯をしっかり磨いている人でも1000億から2000億個にも及びます。それをすべて殺菌するのは無理があり、数ヶ月に一回歯周ポケットの中の歯石を取り除くスケーリングや、歯の根面を滑らかにするルートプレーニングが提案されますが、その処置から1日もたてば歯周ポケットの中の細菌は元通りになってしまいます。重要なのは歯周ポケットに空気を送り込み環境を変えることを意識することです。歯周病菌のほとんどは偏性嫌気性菌で酸素が多いと増殖できません。歯周ポケットの中を歯ブラシでかき回してあげれば、歯周病菌が繁殖できないようなバランスに整い、毎日しないと繁殖してしまいます。歯周病菌を取り除くために歯を磨くわけではないので、歯磨き粉やマウスウォッシュは口内生態系を壊して悪い方向に働く可能性もあります。片山式ブラッシングは、歯磨き粉は使わず、の黄ばみや色素沈着のあるときのみ使用します。片山式ブラッシングは、歯と歯の間に歯ブラシの毛先を突っ込み細かく振動させます。柔らかい毛で1列もしくは2列の歯ブラシを使います。歯茎のマッサージのために、歯肉に刺激を与えるようにゴシゴシ磨き、これは歯肉にあった固さで3列の歯ブラシを使います。歯を磨きすぎると歯茎が下がるという言説がありますが、膨らんでいた歯肉が落ち着き健康になったと考えるべきで、歯を長く磨く街はほとんどありません。フロスは歯周病の治療に必須ではなく、フロスで横向きの力がかかることで歯に悪影響を与える可能性もあります。水を使った口腔洗浄機も、粘着性のあるプラークは水でうがいする程度では落ちず、歯ブラシでこすり落とす方がいいでしょう。
肩こりの根本的な原因部位は肩関節ではなく頚椎です。頚椎は椎骨が縦に積み重なっていますが、椎骨と椎骨の間にはクッションの役割をする椎間板という軟骨があり、椎間板はゼラチン状の髄核とそれを取り囲む線維輪から成っています。首を前に出した状態を続けると髄核がずれて線維輪に亀裂が生じます。そうすると頚椎の周りの筋肉が緊張してコリや痛みの原因になります。肩こりの代表的な筋肉は僧帽筋で、頚椎から肩甲骨についています。髄核が線維輪の傷口から外へ飛び出ると神経を圧迫する頚椎椎間板ヘルニアになります。肩こりを治す第一の対策は姿勢を正すことです。スマホやパソコンの画面を覗き込むときの片寄った首の姿勢が原因になるので、パソコンを長時間使う人はあごを引いた姿勢で操作をしましょう。モニターの大きさや高さも工夫しましょう。スマホは画面を覗き込まないようにすることも大切で、顔の高さまで持ち上げ、顔をまっすぐ前を向いた状態で見るようにしましょう。肩こりの改善には首引き体操で髄核のズレを戻すことができます。カバンではショルダーバッグは良くなく、体が傾いて背骨に負担がかかり背骨が曲がる要因にもなります。リュックサックもバランスを保つため前傾姿勢になり首や腰に負担がかかります。リュックは荷物を軽くしてストラップをきちんと締め、リュックを背中に密着させましょう。重い荷物の場合はキャリーケースが一番です。
薄毛治療の民間療法のほとんどは医学的根拠が明確ではありません。発毛を司る毛包の状態によっては発毛が見込めないことがあり、頭皮をブラッシングしても叩き続けても無駄に傷つけるだけです。予防は確立していませんが、進行を遅らせる対策はあります。油分や塩分を摂りすぎると薄毛になり、わかめを食べると毛が生えることは医学的に確認されていません。AGAの治療では内服薬を処方されることがあり、フィナステリドとデュタステリドの2種類です。脱毛の進化を抑える目的で投与しますが、半年ほどの服用で効果を認めます。ミノキシジルの内服は日本では認可されていません。副作用は男性機能の低下で、リスクが1.39です。喫煙習慣は発毛によくありません。
シワの予防には皮膚の潤いを保つことと薬草を吸わないことです。シワをとる治療法は、ヒアルロン酸を注入して肌の凹みをふくらませる、超音波をあてて皮膚を引き上げるなど、メスをいれない方法もあります。手術はしっかり取れるメリットがあり、二度できないこともありません。
入浴は41℃位で、5年後の脈波伝播速度の数値が低くなることがわかりました。シャワーより週5回以上湯船に浸かったほうがBNPが低くなり心臓にいいこともわかっています。睡眠にも41℃20分浸かるのがいいと言えます。睡眠にはGABAや乳酸菌で期待できる成分がありますが、実際に使用した体感で選ぶといいでしょう。
赤ワインは抗酸化作用の高いポリフェノールが含まれ認知症の予防効果があります。厚労省の推奨する1日あたりの飲酒適量は、ビール500ml、ワインなら200mlです。
欧米人はBMIが25を超えると死亡率が増えるのに対し、日本人を含めたアジア人はBMIが22.5を下回ると死亡率が上昇します。筋肉を保つことが重要となり、そのためにはたんぱく質を摂取し運動することです。必須アミノ酸の分枝鎖アミノ酸はマグロ・カツオの赤身、鶏肉、牛肉、卵、牛乳に多く含まれ、グルタミンも筋肉を作るのに重要で、レバー、豚肉、大豆、魚、卵、小麦粉、チーズに多く含まれ、成長ホルモンの合成を促すアルギニンは、鶏肉、大豆、エビ、マグロに多く含まれます。
糖質制限ダイエットは筋肉量が減少するので極端な制限は勧めません。腸活ダイエットは食物繊維を摂って糖質や脂質の過剰な吸収を防ぎますが、ダイエットにつながるかわかりません。断食は食べ過ぎをリセットするにはいいですが、1日3食規則正しく摂ってエネルギー消費も上がりやせやすい体になります。サプリは健康的に確実にやせられると言えるものは明らかではありません。レコーディングダイエットは有効だと思います。記録して傾向に気づき改善して体重を適正に管理出来ます。
日本人の腸内を研究したところ、バランス型、ヘルシー型、肉多め型、糖・脂質多め型、炭水化物多め型の5タイプに分けられます。バランスとヘルシー型はリスクが低いですが、他の型は肥満や老化リスクが高いです。
ブラウティア菌は日本人の腸内細菌の3-11%を占め、酪酸や酢酸を作る善玉菌です。そのためには食物繊維をたくさん摂るのがいいですが、茶色い炭水化物を摂るのが効果的です。白米を玄米に、食パンを全粒粉パンにするなどです。近年、アッカーマン・ムシニフィラという菌が肥満や糖尿病に有効との結果が出ました。クリステンセネラシアイ科の菌は痩せている人に多いことを発見しました。ビフィズス菌BB536はアレルギー関連の症状改善に広く用いられます。ヤクルト創始者の代田稔博士が発見したシロタ株は、乳酸菌の一種のラクトバチルス属カゼイ菌に属し、睡眠の質を高めてくれます。Yakult1000で睡眠の質が向上したというデータが出ました。ビフィズス菌MCC1274は認知機能改善作用があることが判明しました。JCM805株というプラズマ乳酸菌は免疫作用を高めました。iMUSEで発売されています。酪酸菌は腸内環境を整え善玉菌を増やして整腸作用を発揮しますが、その中に宮入菌があります。宮入菌はミヤBMとして処方薬にあり、耐熱性、胃酸に対する安定性が高く、各種抗生剤度同時投与でも腸内で発芽・増殖することが確認されています。腸管出血性大腸菌の毒素産生を抑え、感染を防ぐ作用もあります。
感想
健康常識は変わることもありますが、最新の常識を知ることは大切であり、こういった本で知識の再確認やアップデートすることは必要と思います。