著者紹介
2024年2月14日初版の文響社から発刊された本で、著者は堀江重郎氏と斎藤恵介氏です。堀江氏は1960年生まれで現在順天堂大学泌尿器外科の教授です。斎藤氏は1973年生まれで、帝京大学泌尿器科の講師です。
頻尿・尿もれがみるみる改善する食べ方
内容
50歳を過ぎると約6割の人が夜中に1回以上トイレに行くといいます。暴行の平均用量は300-400mlで、150-200mlの尿がたまると脳に信号が送られ尿意を感じます。この時膀胱の排尿筋と尿道の尿道括約筋が働きます。尿道は男性20cm、女性4cmと異なります。
尿失禁は4つに分けられます。腹圧性尿失禁という、おなかに力が入った瞬間にちょっとだけ漏れるもので、骨盤腔が広く尿道が短い40代以上の女性に多く見られます。切迫性尿失禁は膀胱が過敏になって尿意を感じてしまう症状で過活動膀胱の一症状です。溢流性尿失禁は膀胱の神経が鈍って尿がたまっても感じなくなり、漏れ出てくるしょうじょうで、前立腺肥大や神経因性膀胱による男性に多いです。機能性尿失禁は認知機能低下や体動困難のため排尿できないことです。
正常な排尿回数は1日5-7回で、起床から就寝までに8回以上の場合が頻尿です。就寝中に1回以上トイレのために起きると夜間頻尿といいます。
排尿時間は哺乳類の動物すべてに共通して21(±13)秒という研究結果があります。体重3kg以上の哺乳類は尿道の直径と長さの比率が1:18で共通しています。日本人の研究では70歳以上は排尿時間は30秒前後となります。筋肉量の減少と筋力の低下の影響です。
過活動膀胱とは膀胱に尿が十分たまっていないのに自分の意思とは関係なく膀胱が勝手に縮んだり過激な動きをしたりする病気です。推定患者数は約810万人で、尿失禁を伴う人は約430万人です。原因の2割は脳梗塞やパーキンソン病の脳疾患と脊髄損傷などの脊髄疾患からで、残りは女性の場合は骨盤底筋群のトラブルが原因のことが多く、男性は前立腺肥大が原因になることが多いです。
前立腺とは男性だけにある臓器で、精液の一成分である前立腺液を作る生殖器の一部です。前立腺が肥大すると尿道が圧迫されて狭くなります。肥大する原因は単なるアンドロゲンの増加や減少だけでは説明できず、はっきりとわかってはいません。前立腺肥大の初期症状は頻尿で、その後残尿感が生じ、急性尿閉や尿路感染症を引き起こすこともあります。さらに進行すると慢性的に尿が出づらくなり尿閉という恐ろしい状態になります。前立腺肥大は健康診断では判断できず、尿の回数増加や残尿感や夜間の尿の状態があれば泌尿器科で調べてもらうことになります。薬物以外ではノコギリヤシ(セレノアレペンス)で症状の改善校を認めました。
夜間頻尿の原因は、夜間多尿、膀胱排尿障害、睡眠障害です。夜間につくられる尿量が1日の33%を超えると夜間多尿といいます。原因は就寝時の水分バランスで、就寝前に体内の水分が多いと尿を作ってしまいますので、水分の摂りすぎがあげられます。加齢による筋肉の老化も原因で、日中に下半身に水分が貯まりやすくなり、寝るとき横になると重力の影響が減って足にたまっていた水分が血管に戻って、腎臓への血流が増えて尿が多くつくられます。加齢により抗利尿ホルモン(バゾプレシン)の分泌が減ることも原因となります。朝の起き抜けの尿の色が濃いのは、バゾプレシンにより水分量が減って尿中の水分の割合が小さくなっているからです。高血圧も原因となり、高血圧になると日中の尿だけでは塩分は排出できなくなり、降圧薬のカルシウム拮抗薬も夜間多尿の原因となります。夜間に目が覚めると膀胱が過敏に反応するようになり、ちょっとたまっているだけでもトイレに行きたくなります。睡眠障害で日内リズムが乱れると夜中につくられるバゾプレシンが夜になっても増えなくなります。成長ホルモンやテストステロンの分泌が減って筋肉量の減少が加速してしまいます。
スウェーデンで夜中に3回以上トイレに行く人は2回以下の人の2倍も死亡率が高いと発表され、日本でも2回以上トイレに起きる人は1回以下の人と比べて死亡率が1.98倍になる報告もあります。高齢者では夜間頻尿になると転倒リスクがたかくなり、骨折の可能性も高まります。
睡眠の質をよくする食習慣として、朝食は必ず摂ることです。これで体内時計のリズムが作られ、メラトニンが夜に分泌されます。朝食をとる際にはあさのひかりを浴びることも大事です。メラトニンの材料となるトリプトファンは肉・魚、納豆などの豆類、牛乳やチーズなどの乳製品にふくまれ、メラトニンを作るのに必要なビタミンB6は赤身の魚・ヒレ肉、バナナ、パプリカに多く含まれます。テストステロンが少なくなると膀胱の筋肉が硬くなりやすくなりトイレが近くなります。女性も副腎や卵巣で分泌され、閉経後は体内で活躍しますので、男女ともにテストステロンが重要になります。テストステロンを補充するとバゾプレシンの分泌が増えることもわかっていて、バゾプレシンを投与して夜中のトイレの回数が減るとテストステロンの量が増えることもわかっています。テストステロンの分泌を促進する栄養素は、たんぱく質、亜鉛、ビタミンDです。動物性たんぱく質はテストステロンを増やすために重要な栄養素で、鶏ささみ、牛もも肉などの肉類、サーモンやマグロなどの魚類、卵がおすすめです。亜鉛は牡蠣、ホタテ、ウナギなどの魚介類や、アーモンド、カシューナッツなどのナッツ類に多く含まれます。亜鉛は一度にたくさん摂っても吸収率は20-40%で、こまめに摂ることが必要です。ビタミンDは鮭、サンマ、ブリなどの魚類に多く含まれます。キノコや肉類にも含まれますが多くは摂れません。日光浴もお勧めで、1日20-30分で十分です。日光浴にはテストステロンを増やす効果があるとも報告されています。テストステロンの分泌には糖質が不可欠で極端な糖質制限は注意が必要です。肉の大量摂取も腎臓に負担をかけるので、ほとんどがアルカリ性食品である野菜もしっかり摂ることが大切で、水分も1日1.5-2L摂取しましょう。血管能老化を止めるカギとなるのは一酸化窒素です。一酸化窒素を作るために必要なのがアルギニンというアミノ酸です。アルギニンを多く含む食べ物は鶏むね肉・豚ヒレ肉などの肉類、エビやホタテなどの魚介類、豆腐や納豆などの豆類、ゴマやアーモンドなどの種子類です。アルギニンに返還されるシトルリンは、スイカ、メロン、冬瓜などのウリ科の植物に多く含まれ、特にスイカに含まれます。一酸化窒素の生成を妨げるのが酸化ストレスです。酸化ストレスから細胞を守るがの抗酸化作用のある食べ物で、ビタミンCやカロテノイドが多く含まれる緑黄色野菜やフルーツ、ビタミンEが含まれるナッツ類、ポリフェノール類が多く含まれる赤ワインや緑茶、ミネラル類が豊富な海藻や魚です。
トウガラシやワサビなどの香辛料、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類、酢の物、チラミンが含まれるチーズやチョコレート、アスパルテームなどの人工甘味料、炭酸飲料、うま味調味料に含まれるグルタミン酸などが膀胱の粘膜を刺激するといわれますが、個人差があり食べても尿意を感じないようなら控える必要はありません。
塩分は摂りすぎても控えすぎても夜間頻尿にはよくありません。ただし日本人は塩分の摂取量が平均的に多く、少し控えたほうがいいです。調味料を工夫し、だしのうまみや柑橘類の酸味、スパイスなどをうまく活用し、下味でつかうのではなく表面につけて食べるようにして総量を減らします。
太ると膀胱の柔軟性がなくなりますが、活性酸素が増え、テストステロンが減少するからです。過剰なインスリンに交感神経が刺激され尿意を感じやすくなります。脂肪細胞に含まれる炎症物質のサイトカインが増え酸化ストレスが強まり、内臓脂肪による構造的な問題もあります。太らないようにするには緩やかな糖質制限がおすすめです。
便秘によっておなかが膨らんだ状態になると膀胱が圧迫されて十分尿がたまらなくても尿意を感じるようになります。便秘を解消するには腸内環境を整えることです。そのために善玉菌の餌となる食物繊維をたっぷり摂ることです。特に水溶性食物繊維で、玉ねぎ、大根などの野菜類、キウイフルーツやパパイヤなどの果物類、わかめや昆布などの海藻類です。善玉菌を減らさないように、ヨーグルト、みそなどの発酵食品を摂ることもあります。
前立腺肥大を予防するにはポリフェノールの一種であるイソフラボンがあります。肥大を加速させているのが、テストステロンから活性化されたジヒドロテストステロンと考えられており、イソフラボンがその活性を妨げます。大豆を原料とする食べ物に多く含まれ、イタリアの研究では野菜摂取の多い人に前立腺肥大になりにくいというデータもあります。玉ねぎとニンニクにも抑える効果があると報告されています。イソフラボンを多く摂ると前立腺がんの死亡リスクが上がったというデータもあり注意が必要です。
排尿にかかわる筋肉を元気にする成分として働くのがマグネシウムです。マグネシウム不足はこむら返りの原因ともいわれています。マグネシウムを多く含む食べ物は銀杏と山芋です。銀杏は1日5-6粒摂取が目安といわれています。
サプリメントで有用なのは、ノコギリヤシ、ペポカボチャの種、アルギニン・シトルリン、アスタキサンチンがあります。
腹圧性尿失禁の治療法に、薬物療法、水分摂取制限、骨盤底筋群のトレーニングなどがありますが、症状が重い場合手術も考慮されます。最新の治療では高周波磁気により骨盤底筋群を刺激して筋力を取り戻す治療です。レーザーにより膀胱周囲を温めて機能回復させる治療もあります。
1日に食事と飲水でとる水分は約2Lでよくて、それ以上とっても尿として体外に排出されるだけです。排尿日記で野の回数と量を測定して1日の尿量が2L以上ある方は水分を摂りすぎているので、摂取を控えて尿量を減らすことができます。水分をたくさん摂ると血液がサラサラになる、寝る前に水分摂取すると夜間や早朝の脳梗塞や心筋梗塞を予防できるということは今のところ証明されていません。身体から必要とされる水分量の1%が失われるとイライラしたりボーッとなったりし、2-3%で体温が上昇し、循環器系にも影響が出る熱中症症状となり、5%で運動能力が低下、7%で幻覚を見て、20%で死に至るので脱水は避けなくてはいけません。夜間頻尿を避けるには日中にしっかり摂取して、寝る2時間前の水分摂取量を減らすことです。のどが乾いたらうがいで口の中を湿らせると楽になります。どうしてもとりたいときは温かいものにすると飲む量が少なくて済みます。夏なら氷がいいかもしれません。利尿作用のあるものは注意が必要で、アルコールの利尿作用は4時間ですので寝る4時間前までに飲みましょう。カリウムの含まれる量によって利尿効果が異なり、ビールとワインが多く含まれ、その中でも黒ビールと赤ワインは多いです。ビールはホップの量が多いほど利尿効果は高いです。ノンアルコールビールにもホップの成分のクエルシトリンが含まれているため利尿効果があります。利尿作用の高いアルコールは1L飲んだら1.1Lの水分を失うとされていますので、水分も摂取しましょう。カフェインは15-30分で早期利尿効果がありますが、そのくらいの時間で覚醒効果も見られます。利尿効果は長く続かないので寝る前でなければ大丈夫です。
前立腺肥大の治療は薬物療法以外に手術がありますが、レーザーのホーレップ手術とロボットを使うアクアブレーション手術があります。アクアブレーションは低侵襲で内視鏡やカテーテル治療で、ウロリフトとレジュームが保険適応となっています。治療時間が10分以内で短く日帰り治療も可能です。
夜間頻尿の睡眠障害を改善させる生活習慣は、寝る前に温かいシャワーを浴びて深部体温を下がりやすくさせる方法です。お湯につかると体温が高くなりすぎて下がるまで時間がかかるので、全身シャワーの方がすぐに眠りにつけます。午後3時までの30分以内の昼寝は睡眠障害に有効とされますが、1時間以上の昼寝は認知症のリスクが2倍になるデータもあります。下半身にたまる水分を身体全体に循環させるのにおすすめの方法は1回5分程度の青竹踏みです。頻尿や尿漏れには骨盤底筋群体操です。日中の運動は血流をよくして筋力の維持に有用で、テストステロンの量も増え尿トラブルが減ります。手足が冷える人は湯たんぽでおなかを温めると効果的です。尿もれなどで外出しなくなると認知症リスクが高まるので、尿もれパッドはおむつをすることも考えます。
感想
題名のようにみるみるは改善しないと思いますが、こういう知識を得て生活習慣を改善させると尿にもいい影響があると考えられます。高齢者になればなるほど尿の問題は増えていきますので、気を付けて少しでも問題が出ないようにしたいものです。