肝臓から脂肪を落とす食事術

著者紹介

2022年4月21日初版のKADOKAWAから発刊された本で著者は尾形哲氏です。尾形氏は1995年神戸大学医学部卒業され、肝臓移植手術などに従事されていましたが、2017年に肥満、糖尿病改善のためスマート外来をスタートされました。
3人のモデルケースを物語形式での実際的な経過についてわかりやすく説明されています。

肝臓から脂肪を落とす食事術

内容

かつては肝臓を傷害する原因はアルコールか肝炎ウイルスでしたが、2016年のデータでは日本人の2266万人が脂肪肝という病気にかかっています。脂肪肝とは肝臓の周りに脂肪がつくのではなく、肝細胞の中に脂肪がたまって起こる病気で、1-2割の方が5-10年で肝硬変に陥る脂肪肝炎に罹患しています。

脂肪肝になる3つの要因は、運動しないこと、空腹感がなくても食べること、多量の穀物を食べることです。脂肪肝で肥満がある人は体重の7%を目標に減量し、それから標準体重を目指していきます。

7%以上の減量で肝細胞の脂肪化や脂肪肝炎が軽減し、10%の減量で肝臓が固化する組織の変化や肝線維化も改善することが知られています。2型糖尿病のうち1年で体重が15kg以上減った方の86%は完全に糖尿病の薬をやめることができました。

肝臓にたまる脂肪のうち、食事からとった油や肉・魚などの油が直接影響するのは14%にすぎず、体についている皮下脂肪と内臓脂肪から溶け出した脂が60%で、糖質から肝臓で合成される脂肪が26%です。

体の中で糖質が増えすぎると肝臓はそれを中性脂肪という形でため込みます。インスリンは血糖を細胞の中に押し込んで血糖値を下げますが、余ったブドウ糖はインスリンの働きで中性脂肪に変換されて脂肪として蓄積されるので、インスリンは肥満ホルモンとも呼ばれます。脂肪肝の人の約半数は境界型糖尿病や糖尿病です。

糖質を減らすために食べ物より飲み物の方が圧倒的に影響が大きいです。人工甘味料は太ることや有害だという明確なエビデンスはありませんが、食欲増進作用があります。果糖には直接肝臓の細胞を傷害する作用がありますが、食物繊維と一緒にゆっくり吸収されれば小腸の酵素でブドウ糖に変わります。

極意の5か条は、体重を1日1回測定して食事内容とともに記録する、甘い飲み物はやめる、野菜を増やす、糖質を減らす、加工食品を減らす、です。

最初の1か月はまず糖質を控えて余計な脂肪を減らします。1か月で体重を2kg減らせた人は3か月で5kg体重を減らせています。米、パン、麺はすべて脂肪になりやすい精製糖質で砂糖と同じと考えます。主食半分でおかずを増やすスタイルで、具体的にはご飯は半膳で70g、パンは菓子パンは避けて食パン6枚切り1枚で60g、うどんなら半玉で120g、パスタなら乾麺で35gになります。この量で糖質量は大体25gで、おかずと合わせて1食の合計糖質量を40gに収めるのが基本です。野菜は1日350gが目安です。野菜は1皿70gと考えるといいです。350gは食物繊維20g以上の目標の目安となります。野菜以外の食物繊維の多いキノコやわかめなどの海藻も1皿に数えます。野菜スープや野菜炒めは2皿分と数えます。加工食品は食品添加物が多く肝臓は休まりません。空腹時にはナッツ類やゆで卵の間食でしのぎます。野菜スティックも出いいです。ナッツ類は手のひらに軽く乗る程度の25gくらいまでにして、ゆで卵は1回1個で、1日2個までを推奨しています。

その後はそれだけでは体は弱ってしまうので、筋肉量を減らさず、できれば増やす食事スタイルにします。具体的にはタンパク源を加えます。毎食タンパク質を20-30g摂るようにします。肉と魚は100gでたんぱく質量20gです。卵1個、納豆1パック、豆腐3分の1丁、無糖ヨーグルト150gはそれぞれたんぱく質量が7gです。

人工的に作られた果糖ぶとう糖液糖は、ブドウ糖より甘く、冷凍やけを防ぎ、簡単に混ぜやすく、パンなどを柔らかくし、焼き目をうまくつけられるという食品メーカーに好都合な添加物で、ありとあらゆる加工食品に使われていますが、脂肪肝には避けたい添加物です。サプリメントにも添加物は入っており注意が必要です。

体内の水分が少ないと肝臓への血流が落ちるので、減量中こそ水分を積極的に摂りましょう。食事の前後30分の間にスクワットするのもおすすめです。

朝食を抜くかについて、セカンドミール効果という、最初にとった食事が2回目の食後血糖値に影響を与えることが発表され、糖質少なく食物繊維が豊富な朝食を食べると朝食後だけでなく昼食後の高血糖も抑えられますので、重要な朝食は抜いてはいけません。

筋トレをすると筋肉に貯蔵されているグリコーゲンが消費され、食事で糖が入ってきても速やかに筋肉に蓄えることができて血糖値が上がりにくくなります。筋トレで筋肉量が増えればグリコーゲンの貯蔵量も増えるので肝臓に蓄えられにくくなります。食事と筋トレで減量効果は倍増します。

内臓脂肪とは、胃、腸に流れる血管を覆う膜にたまっていく脂肪のことで、男性に比べて女性は皮下脂肪に付きやすく内臓脂肪には着きにくいのですが、エストロゲンが内臓脂肪の増加を抑えるためです。閉経に近づくとエストロゲンが減って内臓脂肪がつきやすくなります。脂肪肝になるリスクも40代後半から急激に高くなります。

アルコールを飲むと肝臓はアルコールを解毒することを優先して働くため、アルコールと一緒に摂った糖質や脂質はエネルギーとして使われないため効率よく中性脂肪となって体にたまっていきます。

大腸でも腸内細菌の働きによってさらに栄養を分解し吸収されています。肥満のある方ほど、糖質や脂肪から栄養を吸収してくれる腸内細菌が多くなっていることがわかってきました。便秘になると食べ物を長く腸内にとどめてどんどん栄養が吸収されます。

空腹になると肝臓内のグリコーゲンが分解されてブドウ糖になり、低くなった血糖値が維持されるようになっていて、空腹でグリコーゲンが使い始めるときに脂肪がエネルギーに変換されるスイッチが入ります。グリコーゲンを使い始める前に食事をしてしまうと体内の脂肪がエネルギーに変わることはなくなってしまいます。空腹なくして脂肪が減って痩せていくことはありません。糖新生とは食事で摂る糖質が少ないと脂肪やタンパク質などから糖を生み出されることで、この働きは肝臓で行われるため脂肪を減らすという意味でも有効です。ケトン体は糖新生の代謝産物ですが、糖尿病でない人ではケトン体は脂肪を分解して生まれる物質で、糖に変わって体を動かすエネルギーになります。

体脂肪率について、男性は25-30%未満が中等度肥満、それ以上が重度肥満、女性は35-40%未満が中等度肥満、それ以上が重度肥満です。

体重(kg)×体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)
体重(kg)-体脂肪量(kg)=除脂肪量(kg)
除脂肪量(kg)×0.5=骨格筋量(kg)
骨格筋量、男性は18-29歳 24.9、30代 25.6、40代 25.3、50代 23.6
女性は18-29歳 15.9、30代 16.1、40代 16.4、50代 15.8

感想

肝臓から脂肪を落とすのに特有の方法はありませんが、具体的な量の記載が多いため、実践しやすいと感じました。脂肪肝も侮っていると痛い目にあうことがありますので、注意しましょう。

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