新しい乳酸菌の教科書

著者紹介

2020年11月5日初版の辰巳出版から発刊された本で、著者は中村仁氏です。中村氏は1978年生まれで、2001年より乳酸菌の仕事に関わり、2010年株式会社H&Jを設立され、現在も代表をされています。本文の中に出てくるHJ1乳酸菌を発見されたようです。

新しい乳酸菌の教科書

内容

腸内細菌を増やすために多くの人は生きている乳酸菌を摂取すればいいと考えるでしょうけど、摂取された乳酸菌のほとんどは胃酸などで死ぬか免疫機能に異物と判断されて排泄されてしまいます。

生きたまま人体に良い影響を及ぼす微生物をプロバイオティクスといいます。もともと腸内にいる腸内細菌のエサとなり活性化させるオリゴ糖や食物繊維などの物質はプレバイオティクスと呼ばれます。どちらも腸内環境を整えるためには重要なものですが、必要な量を摂取することは極めて難しいという考えになっています。プロバイオティクスの乳酸菌の細胞壁が腸内細菌のエサとなることがわかり、初めから細胞壁のみを取り出してしまえば効率がいいのではないかと考えられています。乳酸菌の中身はほとんどが水で、加熱殺菌することで細胞壁のみを取り出すことができます。その方が免疫にも追い出されにくくなり、たくさん体内に有効にとり込めます。現在では乳酸菌メーカーでも、生きた乳酸菌から効率のいい死んだ乳酸菌に研究はシフトしています。

乳酸菌が含まれる食品というとヨーグルトやチーズといった乳製品がイメージされますが、しょうゆ・塩麴などの発酵調味料、納豆、ぬか漬けなどの漬物、塩辛にも多く含まれます。納豆にはオリゴ糖や食物繊維が多く含まれ腸内環境を改善する助けとなります。ぬか漬けに含まれる乳酸菌量は1gに約1億個で、白みそスプーン1杯にはヨーグルト100gに相当する乳酸菌が含まれます。大豆には腸内細菌の働きにより抗がん作用のあるエクオールに変化するイソフラボン、食物繊維、タンパク質、カルシウム、マグネシウムなど豊富な栄養素が含まれます。ゴボウ、玉ねぎ、にんにく、グリーンアスパラガスにはオリゴ糖や食物繊維が豊富です。キムチ、ザーサイ、ザワークラフト、ピクルスにも乳酸菌が多く含まれます。

生きている乳酸菌を摂取する場合には自身の体に合ったものを見つけて取り入れないと効果はありません。人それぞれの体質に合った乳酸菌が存在し、もともと腸内にいる細菌との相性が生まれ、一概にどの菌が効くとはいえません。乳酸菌は現在わかっているだけでも350-1000種類あり、すべてが善玉菌というわけではなく悪玉菌に分類されるものもあります。

悪玉菌をすべて退治すればいいかというとそうではなく、体内に入ってくる強力な菌やウイルスのうち、善玉菌で倒せなかったものを退治する働きもします。悪玉菌の作り出す毒素はそれほど強いものではなく、健康で免疫力が高ければ体調を崩すことはほどんどありません。人間の腸内細菌の組成のバランスは母親から遺伝で引き継いだもので乳児期に決まります。抗生剤を使用すると、善玉菌も悪玉菌も日和見菌もダメージを受け、腸内細菌全体が極端に減少して腸はノーガードの状態になってしまいます。

腸内で善玉菌が増えると体内でビタミンB群、ビタミンKなどが生成されます。ビタミンB群はエネルギーの代謝を亢進し、ビタミンKは血流をスムーズにして骨の代謝を高めるため、生活習慣病の改善効果は高まります。

アンジオテンシン返還酵素(ACE)という肥大化した脂肪細胞から作られる物質は、アンジオテンシンⅠを血管収縮させて血圧を上昇させるアンジオテンシンⅡに変更してしまいますが、乳酸菌が作り出すラクトトリペプチドはこの働きを妨害します。血糖をコントロールインスリンはインクレチンと呼ばれる腸のホルモンからの司令により膵臓から分泌されます。インクレチンは乳酸菌などの腸内細菌により強く働きます。腸内細菌は水溶性食物繊維をエサとして増え、糖尿病改善の大きな助けとなります。水溶性食物繊維はネバネバ・ヌルヌル食感の食物に多く含まれ、海藻類、オクラ、里芋、トマト、こんにゃくなどに豊富です。

がん細胞を攻撃してくれる免疫細胞に、マクロファージ、B細胞、ヘルパーT細胞、NK細胞があり、中心的な働きをするのがNK細胞で、体内に50億個以上存在しています。免疫細胞の70%は腸に集中しているので、腸内環境を整えることはがんの予防になるといってもいいでしょう。アメリカ国立ガン研究所の疫学調査では、植物性食品や淡色野菜がガン細胞を抑制することを突き止めています。

口の中には腸内と同じように細菌が住む口腔内フローラがあり、そこに住む乳酸菌は糖やタンパクをエサに増え続け、歯肉などの組織を破壊して歯周病をおこすジンジバリス菌、葉を溶かして虫歯の原因となるミュータンス菌と戦ってくれます。

花粉症は花粉を異物と認識してIgE抗体が作られ、排除しようとしてくしゃみ・鼻水・目のかゆみなどの症状となります。この抗体の産出を指令しているのがヘルパーT細胞の2型で、乳酸菌はその指令と反応を抑制します。

活性酸素は細胞に作用して変性させてがん細胞したり、老化を促進して肌の細胞を傷つけ攻撃を受けた肌にはシミやシワができやすくなります。腸内環境が整っていれば、腸内細菌が食物繊維を分解する過程で発生する水素が活性酸素を消してくれます。便秘などで腸内環境自体が悪くなると、腸内に腐敗物や有毒ガスがたまり、腸の粘膜の毛細血管を通して全身に回ります。これが皮膚から皮脂や汗とともに排出され、炎症を起こしてニキビや肌荒れの原因となるのです。しかし腸内環境が整備され便秘が解消すればすぐに治ります。

乳酸菌の中には内臓脂肪の蓄積を抑える働きを持つものもあり、腸壁にバリアを張って糖脂質を通さないようにしてくれます。高脂肪食を食べ続けたマウスは腸内細菌が変化して悪玉菌が増えることが確認され、食事によって腸内細菌を太りやすい環境に変えてしまうのです。

糖質制限ダイエットは糖質をエサとする乳酸菌にとっては兵糧攻めをされるようなもので、栄養源を断たれると体内の乳酸菌は数週間で餓死します。断食で食物を摂らないと、腸の粘膜は急激に委縮し、腸内での粘液分泌も減少して腸管が働かなくなります。極端な糖質カットは腸にとってハイリスクのため、ほどほどに気長に行うのが賢明です。運動も軽い運動でもトレーニングでも自分自身が楽しく続けられる範囲がベストです。

質の良い睡眠にはメラトニンは必要不可欠です。メラトニンは松果体から分泌されるホルモンで、年齢とともに分泌量が減るため、メラトニンの分泌を促すには腸内環境を整えることが重要です。摂取されたタンパク質は腸内細菌によって分解・合成され、メラトニンの生成不可欠なトリプトファンを作り出します。

乳酸菌製品の選び方は、成分表示は信用できるものか必ずチェックする必要があります。腸に吸収されやすいに乳酸菌は、サイズが小さくくっつかないことです。おすすめなのはEF2001乳酸菌とHJ1乳酸菌です。前者は免疫増強作用がとびぬけて高く、白血球の栄養源であるBRMが多いです。後者は植物性乳酸菌で、乳酸菌同士がくっつかずに腸からの吸収がスムーズで、少量でも様々な効果を期待できます。

サプリメントを販売している会社は数多くありますが、GMP認証の工場で製造された製品であることが安全性や信頼性の目安となります。

牛乳は乳糖が含まれますが、高タンパク質・高栄養で健康や骨を丈夫にする食品としておなじみでしたが、1日1杯の牛乳を2年間摂取した女性は全く摂取しなかった女性に比べて骨量が2倍の速さで減少したという報告があります。乳糖不耐症の人でもヨーグルトは発酵の過程でタンパク質が変化しており、摂取して消化・吸収はできます。

油脂分の摂取も気を付ける必要があり、ほとんどの脂は製品化される時点ですでに酸化されています。摂取すると体内も酸化してしまい、血行不良が生じて血管の疾患や肩こりなどを引き起こす原因となり、老化、慢性疲労、肌荒れなどの症状も出てきます。とくにマーガリンに多く含まれるトランス脂肪酸は老化を促進する活性酸素を制せし、体内のコレステロールバランスを崩して心臓病の一因となります。

がん細胞の抑制に効果が期待できるのは、体重50kg前後の人の場合乳酸菌を5000億個摂取することが目安となります。それを食事だけで摂取するのは難しく、死んでいる乳酸菌のサプリメントの摂取がおすすめです。白菜・大根・レタス、キュウリなどの痰黄色野菜は水溶性食物繊維が多く白血球のエサとなります。

感想

腸内環境の重要さは最近よく耳にしますが、ではどうすればいいのかについてはなかなかわからないことが多いと思います。こういう知識を得て自分に合った食事・乳酸菌の摂取していくことが重要なのではないでしょうか。

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