著者紹介・はじめに
2020年10月25日初版の三笠書房から発刊された本で著者は今野清志氏です。今野氏は1953年生まれで中央大学法学部卒業され、慈恵医大アイソトープ化で医学を学ばれ、中医学などを研修して開業され、現在は日本リバース院長をされています。
第5章のツボ&経絡リストと、6章の自宅でする四診の詳細についてはここでは省いています。
不調の9割はこれでよくなる
内容
毎日じっと座ってばかりいるとどうなるでしょうか。血流が鈍くなり、脳や筋肉、内臓などに酸素が十分届かなくなってしまいます。つい背筋が曲がり姿勢がうつむきがちになるとおなかや気道が圧迫されて狭くなり呼吸が浅くなります。酸素不足が病気を作ることは今や世界共通の医学的見解となっています。糖尿病、高血圧、脳卒中、動脈硬化などの生活習慣病も元をただせば血流と酸素の問題にたどり着きます。原因が見つからない不調もたいていは運動不足による酸欠から発しているというのが私の経験則です。運動といっても軽く走ったりジャンプしたりするだけでいいのです。下半身を動かすとふくらはぎの筋肉がポンプとして働き脳にも血液がたっぷり回って心の状態もよくなります。
是非やってほしい健康習慣の第一は腹式呼吸です。ポイントは呼吸を吐くから始めることです。ゆっくり5秒かけて意識してお腹を凹ませながら吐いたら、2-3秒で吸います。できるだけ鼻から吸います。仰向けでだと寝つきにくく横向きだとラクに眠れるという方は、身体がゆがんでいる可能性が大で要注意です。そういう場合日中の姿勢を正しましょう。デスクワーク中は正しい姿勢を保っておなかの圧迫を防ぐように改善し、あごを引いて背筋を延ばすというポイントを念頭に机に向かってください。悪い姿勢のまま筋肉がこり固まると胃腸も柔軟性を失い、ひどくなると消化活動や蠕動運動が衰え栄養を吸収する力も弱まります。身体の外側から胃腸をマッサージし機能をアップしましょう。おすすめは腹もみです。腹もみは胃が活発に働いている食後は避け、食前や起床時・就寝前に行います。息を吐きながらおへそを中心に半径6-8cmほどの範囲を6か所両手の指先を使って時計回りに指圧していきます。1か所3秒間ほどゆっくりやさしく押し、1回3週が目安です。入浴中や座ってしてもいいですが、あおむけでした場合は終わったら両脚をおなかの方にグッと引き寄せて抱え、その姿勢を30秒ほどキープしてみましょう。そうすると胃腸が活性化します。腹もみで固いところがあると感じたら内臓の疲れであるとともに自律神経のバランスが偏っているシグナルでもあります。
なんとなく不調の場合は身体を動かして血流を促し酸素を多く取り入れた方が体にいといえます。日常の歩きを負荷を少し高める歩き方を習慣にしましょう。今までより少し歩幅を広げて歩く、坂道を選んで歩く、エスカレーターには乗らず階段を利用することなどです。段差で足を上げる動作は内臓を持ち上げて刺激するという副効果もあります。不調時はできるだけ自然治癒力でよくするようにし、特に風邪の時は意識的に動いて大量の汗を流します。風邪のウイルスはたいてい熱に弱く体温を上げることで撃退することが可能だからです。
すべての病気は酸素の欠乏症であると野口英世博士が言われています。がんの原因は酸素の不足、酸素は血行を良くする働きがあり動脈硬化を予防するともいわれています。酸素は心も元気にすると考えられます。脳は身体で消費される酸素の25%を使うため酸欠にひときわ弱いのです。十分な量の酸素が送り込まれれば神経細胞働きが活発になり心の状態が良くなります。
私の施術のベースは中国の伝統医学中医学です。自然治癒力の源である気血水の流れを整え病気になる前の未病のうちに治すという特徴があります。目や耳のトラブル解決で広く知られてきましたが、原因がわからない不調などにオールマイティーな効果を上げています。中医学で大切なチェックとケアの一つが口の健康管理です。口を動かし、よく食べ、よくしゃべり、笑うことです。口の元気を奪ってしまうのはドライマウスです。これは口内炎、虫歯、誤嚥、味覚障害のリスクを高め、消化力も弱くなって生命力が衰え病気にかかりやすく万病のもとになります。唾液の量の減らさないために1日1200mlの水分を摂る様にしましょう。これは1日2500ml程度の水分を排泄し、食事から約1000mlの水分を摂取し体内で300mlの水分を作っているからです。汗をかくときはもっと多く摂ります。水分は余計な成分の入ってない水がベストです。一度にたくさんではなくコップ半分程度をこまめに飲むのがおすすめです。起きた時と寝る前にコップ一杯の水を飲むことは厚労省も推奨しています。冷たい水はお腹を冷やすので避けた方がいいです。唾液を増やすために一口30回以上噛むのが理想です。噛み応えのある食材を増やし、グルタミン酸や亜鉛の多い食材を選び、朝食は必ず摂ることです。たくさん声を出すことが大事で、朝起きたらすぐに歯磨きしましょう。睡眠中には細菌が増殖するため、コップ一杯の水は口をゆすいでから飲みましょう。寝る前はスマートフォンをやめて規則正しい生活を心がけ、夜はゆっくり入浴、音楽やアロマ、ストレッチなどでリラックスを心がけ、寝室を暗くして寝ましょう。
薬を服用すると自然治癒力が低下しやすくなります。薬は不調を根治するものでなく急性の症状を一時的に抑えるもので、飲む場合は1週間をめどにして回復傾向がなければ一旦やめて様子を見た方がいいです。代わりに少しでも多く自力で動くことです。よくなると信じ、あきらめない気持ちを脳に伝えましょう。脳が活性化して臓器や神経に前向きな信号を送るからです。症状の重い方は転地療法がいいかもしれません。
今野式トレーニングには様々ありますが3つから始めるようにしてください。
1つ目はペットボトル呼吸法で、底に直径1.5-2mmほどの小さな穴を3か所あけた500mlペットボトルを口にくわえて深く息をするトレーニングです。飲み口をくわえ鼻から息を吸い、6秒以上かけてゆっくり息を吐き切り、1セット10回の5セットで1日50回を目標に繰り返します。次のレベルは穴の1つを手でふさいで2つの穴で繰り返し呼吸をします。最高レベルは2つの穴のままで10秒以上かけて息を吐き切るようにします。これで呼吸筋が鍛えられ肺機能がみるみる高まります。2週間ほど続けると嬉しい変化が表れるでしょう。
2つ目はニコニコエアジャンプで、ほんの2-3cmだけでも足が浮けば十分で、無理に飛び上がろうとはせず、かかとを上下させるだけでもOKです。飛び上がる時は口角を上げ笑顔でジャンプし、着地時に口角を戻します。1日トータル500回を目標に繰り返します。これで筋肉や骨が強くなり、内臓が揺さぶられ全身の器官が活気づき、ふくらはぎが収縮するため血流もよくなります。
3つ目はもも上げ運動で、ももが床と並行かそれより高くなる感じまで上げ、肘を90度くらいまで曲げます。ペースは1回1秒を目安で、最初は左右25回ずつ1日50回を目標にし、慣れたら回数を増やします。これで太ももや股関節が鍛えられ下垂しがちな胃腸をグッと持ち上げられます。上半身と下半身をつなぐインナーマッスルである大腰筋が働き、胃腸が下から押し上げられお腹全体の緊張がほぐれ自律神経のバランスが良くなります。
これらのトレーニングを最大化するには継続であり、継続するには習慣化がポイントです。できるときにできるものをやり、疲れを感じたときなど気分転換として行う、隙間時間にする、時間をあらかじめ決めてやるなども考えられます。
経絡は12ある正経と8つある奇経という脈から成り立っています。奇経のうち督脈と任脈は独自のツボも持つため、この2つと正経で主な経絡は14としています。経絡が鉄道の路線でツボが駅とよくたとえられ、2つ以上の経絡が交わる盛んなツボを交会穴といいます。ツボは経絡に沿って全身に分布し、その数はWHOが認定しているものだけで361に及びます。そのうちの32のツボをベストとしてお勧めしたいです。
ツボは経絡上の要所で各器官の不調が表れやすい場所で、器官が不調になればなるほど刺激すると痛むようになります。ツボは大まかに見当をつけて刺激すれば効果はきちんと出ます。ツボをたたく方法をタッピングといい1秒に3回の速さで5秒、それを2度繰り返すのを目安にします。イタ気持ちいい強さを意識します。ラップフィルムの芯などの軽く固すぎない棒でたたく方法もあります。スプーンを45度くらいの湯で温めて丸く膨らんだ面でたたいたりグーッと押してもいいでしょう。指もいろんな指、2つの指でグリグリしたりそっと押したりしてイタ気持ちいいところを見つけます。いろいろなツボを押して痛むところがあれば、ケアを始めた方がいいです。承山というツボは押して痛むのが健康で、逆に痛まなければ自律神経が乱れている可能性があります。承山はふくらはぎの中央ライン上の人の字のくぼみの中にあります。
経絡は五臓六腑と深いかかわりがあり、五臓は肝、心、脾、肺、腎、六腑は胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦です。脾は脾臓と異なり消化器系全体の機能を指し、腎は内分泌系・生殖器の働きも含めた存在です。三焦は中医学独自の考え方で、水分代謝をつかさどる存在です。西洋医学は身体をパーツで診る、数値化できなければ診断できないという限界があります。最近では中医学にアプローチして治癒率を上げる研究が世界的に進んでいます。
中医学は四診法で全身の状態をつかむところから治療をスタートします。
望診で全身の外見を観察し、歩き方や舌の状態も確認します。
聞診では声の強さや口臭・体臭なども確認します。
問診では症状、取り巻く環境、通院歴や検査結果も確認します。
切診は触診にあたり、おなかで全身の状態を知る腹診や脈を診る脈診、ツボを刺激することもあります。
感想
経絡やツボについてはよく知りませんが、体に不調があるとその場所になんらかの不具合が生じ、精通した人はツボなどで感じることができるのでしょう。なかなかそこまで精通するには難しいですが、体を丈夫にするトレーニング方法もあり、参考になりました。