日本呼吸器学会編集で2020年に発刊されました。
膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針
膠原病に伴う間質性肺疾患(CTD-ILD)の診断を行ううえで、HRCTの撮像は必須です。推奨される撮影条件は、微細構造を明瞭化する高周波数強調関数で画像を描画し、2mm以下のスライス厚で全肺を撮像することが必要です。
下肺野優位で比較的気管支に沿って扇形に広がることが多い均等な網状影・すりガラス影を特徴とし、強い容積減少、牽引性細気管支・気管支拡張を示します。胸膜下が比較的軽度で、より内側の陰影が濃厚で密である subpleural sparingも特徴ですが、胸膜下は正常ではなく軽度のすりガラス影が存在しているfNSIPパターンは、SSc、MCTD、SSで最もみられ、食道拡張がみられた場合、SScとMCTDが強く疑われます。 COPにみられる腔内器質化と違い、器質化は肺胞隔壁に取り込まれ、背景の肺胞隔壁の炎症・線維化も強く、COPともNSIPとも一線を画し現在の分類で分類不能に位置づけられ、いわゆるfibrosing organizing pneumonia (FOP)と称される1群があり、この病型は筋炎および抗ARS 抗体・抗MDA5抗体等筋炎関連抗体症候群に特異的です。 従来LIPとされた疾患群は、diffuse lymphoid hyperplasia (DLH)と称せざるを得ないこととなり、ここではDLH/LIPパターンと併記し、頻度は低いもののSSでみられ、さらにまれにRAなど他の膠原病でもみられます。リンパ系細胞の各間質への浸潤を反映して、肺胞隔壁の肥厚を反映したすりガラス影、小葉中心性の淡い陰影、気管支血管束への浸潤が典型で、DLHをはじめとしたリンパ増殖性疾患の共通特徴として嚢胞形成もみられます。 腔内器質化を特徴とするOPパターンは、膠原病ではRAで最もよくみられ他の膠原病もみられます。末梢胸膜下優位の非区域性浸潤影・すりガラス影が典型で、時に結節・塊状影をを呈すことがあります。経過で器質化肺炎が構造境界に位置していくことを反映し、いわゆるperilobular opacitieやreversed halo sign を示します。 局所の容積減少や牽引性気管支拡張を伴う浸潤影・すりガラス影を特徴とするとし、滲出、器質化期、線維化期と線維化が進むほど牽引性気管支拡張はより広汎になり低次気管支へ及ぶDADパターンは、FOP、NSIPに次いで筋炎にみられることの多い組織像で、UIPや fNSIPの急性増悪の組織像の多くもこれです。 小葉中心性分岐粒状影で気管支壁肥厚を伴い、進行すると気管支拡張も示す濾胞性細気管支炎はRA、SSでみられ、びまん性汎細気管支炎類似の細気管支炎も知られ、RAで極めて稀にみられるConstrictive bronchilolitis obliterans(CBO)は、移植後のCBOと異なり過膨張のみ認めます。 リウマチ結節はnecro-biologic noduleの肺内リンパ節の病変で、胸膜に接する半球状ないし方形の結節が特徴で、肺内の球形結節も時にみられます。 SLEでは肺胞出血が稀にみられ、出血量が少ないときは小葉中心性の淡い陰影となり、範囲が拡大すると小葉単位で広がるすりガラス影となり、出血量が増えると浸潤影を呈するようになります。 SScとMCTDにみられる肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症(PVOD/PCH)は、細静脈の閉塞により著しい肺高血圧と時に肺水腫を来し、小葉中心性の淡い陰影や広汎なすりガラス影・小葉間隔壁の肥厚像もみられます。
KL-6とSP-DはSScにおいて、BALと胸部HRCT所見から評価した胞隔炎と関連し、重症度やSSc全体の活動性とも関連があるとされ、将来の進行予測や治療効果判定にも有用とされています。PM/DMにおいてKL-6はILD合併の予測に唯一有用なマーカーであるとされ、治療効果判定の指標にもなり、SP-Dとともに治療開始後4週間以内に上昇を示した場合には予後不良であるとされています。RAでも活動性と相関し、UIPパターンでは予後因子となります。SP-Dの方がKL-6より肺活量やDLCOとの関連が強い傾向です。
6分間歩行試験で運動時低酸素血症(SpO2<88%)の有無や歩行距離の低下は重要な予後予測因子ですが、SScでは歩行時の下肢疼痛や末梢循環障害によるSpO2測定困難のため6 分間歩行試験の評価は難しいとされています。 IPF-UIPよりCTD-UIPのほうが予後良好ですが、RAにUIPパターンを呈する場合は予後不良で急性増悪のリスクも高くなります。RA以外ではCTD-UIPと CTD-NSIPに予後の差は認められません。
BALは肺胞出血の診断や感染・悪性疾患との鑑別に有用ですが、白血球分画で好中球増多が一部重症度と関連するものの、予後や治療効果との関連は乏しいです。
PM/DMは対称性の近位筋優位の筋力低下を来す結合組織病で、眼瞼周囲の浮腫性紅斑や関節伸側に限局した紅斑などの典型的な皮膚症状を呈する場合にはDMと診断され、特発性炎症性筋疾患の1病型に分類されます。男女比は1:2.7で女性に多く小児期と中高年(約3分の2が40~60歳台)に発症します。筋・皮膚症状以外にレイノー現象、関節症状、ILD、心病変、悪性腫瘍を併発することが特徴です。筋症状のみの場合はPMとし、DMに特徴的な皮疹にヘリオトロープ疹とゴットロン丘疹・徴候が挙げられ、これに筋炎症状を認める場合古典的なDMです。特徴的なDM皮疹を認めるも6ヵ月以上にわたり筋力低下など筋炎所見を認めないものはADMと定義されます。CKやアルドラーゼといった筋原性酵素の上昇、筋電図や筋MRIなどの検査所見で軽微な筋炎所見を認めるも自覚症状を認めない場合にはHDMと定義されます。ADMとHDMを合わせたものをCADMといいます。抗MDA5抗体はCADMのみならず古典的DMに伴うこともあります。5~6割で労作時息切れや乾性咳嗽といった呼吸器症状を呈しますが,捻髪音は9割以上で聴取されます。病初期は無症候性のこともありますが、呼吸機能や胸部CTによるILDの評価が必要です。 病因は遺伝的要因と環境による外的要因が挙げられ、遺伝的要因ではHLA領域が最も関与します。環境要因として紫外線、ウイルス感染、喫煙薬剤、性ホルモンなどが挙げられます。 血清フェリチンは活性化マクロファージの指標で、抗MDA5抗体陽性ILDではフェリチン高値例が多く、マクロファージ活性化が予後不良の病態に密接に関与しています。初診時のフェリチン値≧828ng/mLは有意な予後不良因子という報告があります。抗MDA5抗体陽性CADM-ILDは、BALFではCD4/CD8比が高く、末梢血ではCD4+T細胞数や CD8+T細胞数は減少します。 抗ARS抗体と抗MDA5抗体の検出頻度は高く、前者は50%程度、後者はDM/CADM-ILDの30~50%に検出されます。抗ARS抗体陽性例はステロイドに比較的よく反応し生命予後は良好ですが、抗MDA5抗体陽性例はしばしば急速進行性の経過をとり治療抵抗性を示し予後不良です。抗MDA5抗体価は重症度や予後と関連し、治療奏効例では長期経過で緩徐に低下することが報告されています。 HRCTでは浸潤影・すりガラス影が高頻度にみられ、分布は胸膜直下や気管支血管束周囲を主体で、牽引性気管支拡張や網状影も比較的高頻度に認められます。蜂巣肺の頻度は10%以下と少ないです。抗MDA5抗体・抗ARS抗体などの筋炎特異的抗体の保有と胸部画像パターンの関連が報告され、抗MDA5抗体陽性の胸部HRCTでは、胸膜直下を主体とする収縮傾向を伴う浸潤影と周囲のすりガラス影や網状影を伴う所見を認め、典型的なNSIPやOPパターンとは異なります。下葉の末梢側や気管支血管束を主体とする浸潤影やすりガラス影は、予後不良を示唆する画像所見で抗MDA5抗体陽性で高頻度にみられます。 病理ではNSIP所見が約50~70%と最多でUIP所見は10~20%です。治療不応性の剖検肺ではDAD所見を呈することが報告されています。病理所見は予後に関連なく、実臨床で外科的肺生検を実施する意義は少ないです。 機械工の手、関節痛/関節炎、レイノー現象、ADMがILD併発と関連するといわれ、抗ARS抗体と抗MDA5抗体がILDの併発と強く関連する因子で、抗MDA5抗体陽性の93%、抗ARS抗体陽性の81%にILDを併発し、抗Mi-2抗体と抗TIF1-γ抗体は各々11%、12%でした。 生存率は1年85~93%、5年75~86%、10年67~68%で、主な死因は悪性腫瘍とILDで次いで心不全や日和見感染症でした。1年生存率は抗MDA5抗体陽性は66%で1 年以降の生存率はプラトーとなるのに対し、抗ARS抗体陽性・両抗体陰性は96%・95%でその後5年生存率は 80%台へ緩徐に生存率の低下を認めます。高齢発症、急性/亜急性 ILD、CADM、%FVC低下は予後不良と関連があり、マーカー抗体である抗PL-7抗体陽性とともに悪化の予測因子です。 主な合併症は感染症と縦隔気腫で、診断から6ヵ月以内の経過中に33%が重篤感染症を併発し、細菌感染症、真菌感染症、治療を要した CMVウイルス感染症などでした。縦隔気腫の併発例では呼吸不全で死亡することもあり、皮膚潰瘍の存在が縦隔気腫の併発と有意に関連していました。 ILDに伴う呼吸器症状または画像所見の出現から受診までの期間が3ヵ月以上の症例は慢性型 、3ヵ月未満の症例は急性/亜急性型と判断され、治療介入の適応は原則的には呼吸器症状の有無、呼吸機能検査や胸部画像所見の増悪の有無により判断されますが、抗MDA5抗体陽性例では呼吸器症状や肺機能低下が出現する前に治療を開始すべきです。治療は抗体の種類、血清フェリチン値、低酸素血症の有無、呼吸機能検査などを迅速に評価し、予後不良因子の有無を勘案してステロイドやステロイド+免疫抑制薬による治療を導入します。初発症状から4週間以内に日単位の急速な呼吸状態の悪化と胸部陰影の増悪を認める時は、しばしば抗MDA5 抗体陽性DM/CADMはきわめて予後不良で、自己抗体検査の結果を待たずに強力な免疫抑制治療実施を考慮します。
治療は明確なエビデンスは確立してなく、経験的側面に基づいたものですが、第1選択薬はステロイド(CS)で有効性に関してコンセンサスが得られています。しかしステロイド単剤治療は限界があり免疫抑制薬の併用を考慮すべきです。ILDの進行が予測される症例で、欧米ではシクロホスファミド(CYC)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、リツキシマブ(RTX)が用いられることが多く、国内ではカルシニューリン阻害薬(CNI)のシクロスポリン(CYA)やタクロリムス(TAC)やCYC が使用されます。CYAは投与2時間後血中濃度は薬効と関連し、1,000ng/mLの到達が効果を最大限引き出すといわれます。TACは0.075mg/kg/日 2分割投与で開始し、血中トラフ濃度5~10ng/mLで調整で効果を認めますが、CYAとTACの優劣性ははっきりしていません。間歇的CPA静注療法(IVCY)が有効と報告され、PSL 0.5~1.0mg/日にCYA静注 300~800mg/m2を4週ごとに少なくとも6クールで治療し改善が認められました。CS+CNIにIVCYを加えた3剤併用療法の有効性が報告され、最近TACが使用される傾向で、トラフ濃度を10~15ng/mLと通常より高めに設定し腎障害に注意し十分量使用します。MMFは1~3g/日で投与します。CS+TAC+IVCYで治療抵抗例にIVCYからMMFへ切り替えないし追加した後に治療効果があった症例が報告されましたが、症例報告が主体で治療選択肢のひとつとなりうるもののCNIやCYCより効果の優越性があるかは定かでありません。免疫抑制薬による既存治療で抵抗性ILDに対してRTX投与で肺機能改善やCS減量に有用ですが、感染症関連での死亡例もありました。RTXに治療反応性の良好因子は、ILD発症1年以内と急性発症ないし急性増悪の症例でした。多剤併用療法にRTXが追加されて奏功するため、RTX自体の有効性の評価は困難ですが、投与法はRAに準じてRTX 1gを0週と2週の2回投与ないし375mg/m2 を計4回投与で行われていることが多いです。TNF阻害薬は否定的な見解で、IL-6受容体阻害薬のトシリズマブ(TCZ)の効果は不明です。免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)はCSに効果不十分な筋力低下の改善で、ILDに対して現時点で推奨されません。ポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法(PMX-DHP)や血漿交換の有効例も報告されましたが、効果は定かではありません。抗線維化薬は長期的に肺活量の低下を抑制しますが、急性期病変への効果は乏しいと考えられます。 急性/亜急性型では mPSLパルス療法後、後療法として中–高用量のPSL 0.5~1mg/kg/日にTAC(至適トラフ濃度5~10ng/mL)あるいは CYA(トラフ値100~150ng/mL)または IVCY 500~1,000mg/m2/ 回(通常4週間ごと6クール前後)を併用します。上記治療で十分な効果が認められない場合CNIとIVCYの併用を考慮します。慢性型ではPSL 0.5~1mg/kg/日単剤投与あるいは PSL 0.5~1mg/kg/ 日にTAC、CYA、AZA 50~100mg/日、CYC 50~100mg/日 内服もしくは500~1000mg/m2/ 回 点滴静注のいずれかを選択します。慢性型の急性増悪は急性型の治療に準じて行います。 抗MDA5抗体陽性の場合には,原則CS+CNI+IVCYによる三者併用療法を考慮します。CNIの投与量を調整し、CYCの投与量を可能な限り最大限(~ 1,000mg/m2)まで増量したにもかかわらず治療抵抗性の場合、あるいは CNIや CYCの増量でも改善が乏しい見込みと判断した場合、MMF、RTX、トファシチニブ(TOF)、IVIG、血液浄化療法のいずれかを考慮していきます。
全身性強皮症(SSc)は皮膚およびさまざまな臓器の線維化、末梢循環障害、自己抗体産生の 3 つを特徴として併せもつ全身性の結合組織疾患です。ILDは SScに伴う臓器病変のなかで最も頻度が高く、死因も約30%に及び最多となっています。その自然歴の把握と適切な治療は予後改善に重要です。 SSc-ILDのCT 所見は、大半の症例でIIPsにおけるNSIPと類似のNSIPパターンを呈し、すりガラス影主体、すりガラス影と網状影の混在が主で 蜂巣肺形成はまれですが、すりガラス影は経過のなかで牽引性気管支拡張や蜂巣肺へと変化します。 初発症状は労作時息切れ、乾性咳嗽ですが、初期には症状を呈さないこともあります。息切れを呈する場合、症状がILDに伴うものか、筋骨格障害、心病変、胃食道逆流症(GERD)、貧血、肺高血圧が原因か評価が必要です。ばち指はまれで、聴診は両側背側肺底部にfine cracklesを聴取します。大規模な生検の検討ではNSIP 78%、UIP 8%、end stage lung 8%と報告されました。NSIPは炎症細胞の浸潤と線維化の程度でcellular NSIP(cNSIP)とfibrotic NSIP(fNSIP)に分けられますが、NSIPの多くがfNSIPで、可逆性が期待できるcNSIPは25%以下でした。ILD発症のリスクは男性、重度な皮膚硬化、抗 Scl-70 抗体陽性、CK 高値で高く、抗Th/To 抗体,抗U11/U12 RNP抗体陽性で高頻度にILDを認めます。逆に抗セントロメア抗体陽性はリスクが低いです。抗RNAPⅢ陽性患者は、抗 Scl-70 抗体陽性と抗セントロメア抗体陽性の中間です。 HRCTの5スライスでのILDと関連するすべての陰影(すりガラス影、網状影、蜂窩影、囊胞影)の占めるおおよその面積比>20 %、または判断が困難な場合は%FVC<70%であれば,5年以内の死亡リスクが50%程度と高くextensive diseaseで、それを満たさなければ死亡リスクは20%以下でlimited diseaseです。また肺高血圧症合併例では3年生存率が約4割ときわめて低いです。%FVC<50%、酸素療法が必要な症例では高度肺機能低下例であり、55歳未満では両肺移植、60歳未満は片肺移植が可能で、移植の可能性を考慮する必要があります。
高度肺機能低下がないextensive diseaseは、初期治療薬として経口CYC(IVCYも可)投与後にAZAまたはMMFで維持療法、 MMF、ニンテダニブ単独あるいは経口CYC(IVCY)またはMMFをニンテダニブに組み合わせます。CYCとMMFの併用は骨髄抑制や過度の免疫抑制を来すリスクが想定され原則不可です。上記いずれかで治療後さらにILDの進展がみられた場合、他の初期治療薬へのスイッチまたは併用を行います。 limited diseaseでも喫煙歴、高齢、DLCO低値、6分歩行後SpO2低下、関節炎、KL-6高値 (>1,273 U/mL)のいずれかがある場合は薬物療法を考慮しますが、6~12ヵ月ごとの病勢評価を行い、進行性が確認されたら高リスクと判断して治療を開始します。初期治療薬は経口CYC(IVCYも可)投与後にAZAまたはMMFで維持療法、MMF、ニンテダニブあるいはTCZを単独または併用します。治療後にILD進展がみられた場合は他の初期治療薬への変更または併用を行います。ILD進行が抑制できない場合は自己末梢血幹細胞移植(auto-PBCST)またはRTXを考慮します。 リオシグアトは肺動脈性肺高血圧症・慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療薬で、皮膚線維芽細胞から産生される細胞外マトリクス構成蛋白質を抑制することが示され、SSc-ILDへの投与で52週後の%FVCは0.7%の改善を示し、治療効果がみられました。
経口CYC 1~2mg/kg/日を12ヵ月間
IVCY 500~750mg/回 1〜3ヵ月毎に計6~12回
MMF 250〜1,000mg 1日2 回 上限3,000mg/日腎機能・病状に応じ適宜投与量調整
TCZ 皮下注射 /162mg/ 週 ニンテダニブ 経口 300mg/ 日 1日2回 状態により200mg/日に減量
関節リウマチ(RA)の有病率は0.5~1.0%で、発症は1:4〜5と女性に多く地域差があります。皮下結節、乾燥性角結膜炎、唾液腺炎、肺病変、多発単神経炎など関節外症状をしばしば伴い(約40%)、環境とHLAとの関連性が示唆されています。環境要因としては感染、喫煙・環境化学物質、性ホルモンなどです。 RAを40~50歳台で発症しILDを60~65歳前後で発症もしくは診断される例が最多で、RAとILDが同時診断される高齢発症例が次に多く、ILD診断後1-7年後にRAを発症する肺病変先行型が10~20%存在します。男女比はやや女性に多く(45~70%)、喫煙歴を有するものは20~65%程度と報告にばらつきがあります。 RA-ILDの有病率はHRCTを用いた検討で約28~67%程度とされ、多くは無症状での診断例で臨床的症状を伴うのは7~29%です。年間の累積発症率は0.35~0.41%と報告されています。 血液検査でLDHやKL-6、SP-A、SP-Dなどが上昇します。RF高値と抗CCP抗体価高値はともにILDとの関連が指摘されています。MMP-7やPARCなどを組み合わせるとRA-ILDの早期検出できる可能性があります。 RA-ILDのHRCT所見は多彩で、下肺野・背側・胸膜直下優位の網状影、牽引性気管支・細気管支拡張症や蜂巣肺が主体のUIPと、中下肺野優位で気管支血管束周囲や末梢側の不規則・斑状のすりガラス影や浸潤影、牽引性気管支拡張症、容積減少を呈するNSIPの2パターンが大部分を占めます。UIPが24~79%で最も多く、NSIPが17~40%で蜂巣肺は約16%にみられました。その他OPが約5%にみられDADもまれながらあります。HRCTによる分類が困難な症例も6~52%と一定の頻度で存在します。 病理学的にUIPの場合、胸膜病変や間質へのリンパ球の集簇、胚中心を伴うリンパ濾胞がしばしば観察され、IPFに比べ線維芽細胞巣の頻度が低いことが特徴とされます。NSIPの67~100%はfNSIPでcNSIPは少ないです。OPは約10%でごくまれにDIPの報告もあります。 RA-ILDの合併症は感染症、肺癌、急性増悪が重要で、一般健常者より呼吸器感染症が多いです。気道病変合併の存在、RA自身の免疫異常、RA治療薬による免疫能の低下などが知られ、急性経過では肺炎以外ならPCP、サイトメガロウイルス肺炎、粟粒結核によるARDS、慢性経過では肺結核、肺非結核性抗酸菌症、肺アスペルギルス症、肺クリプトコッカス症などを考慮して起炎菌診断に努めます。 蜂巣肺の嚢胞壁周囲に濃厚な陰影を呈した場合、感染症に加え肺癌の可能性も考慮し、喀痰検査や気管支鏡検査を行います。喫煙歴のあるRA-UIPでは肺癌の発症が多いことが知られ(10~20%)早期発見に努めます。 ILD診断後の生存期間は2.6~10.4年とさまざまです。NSIP・OPは予後良好である一方、UIPでは生存期間中央値が約3年、5年生存率30~40%でIPFと同様に予後不良ですがIPFより良好であったという報告もあります。予後不良因子は男性、高齢、拡散能低下、広範囲な線維化、HRCTでUIPパターン、ILDの急性増悪の合併です。 本邦の主な死因は悪性腫瘍(24.2%)と並び、呼吸器疾患(24.2%)が多く、そのなかでは肺炎(12.1%)に次ぎILD(11.1%)の占める割合が高く、ILDは予後に直接関連する重要な因子です。
RA-UIPにもステロイドや免疫抑制薬などに関する明確なエビデンスはなく、実際ステロイドや免疫抑制薬で改善した症例も存在し、UIPを主体としてNSIPも一部混在し、本来分類不能型とされる症例が相当数存在しているための可能性があります。純粋なステロイド投与量はPSL10~40mg/日程度で、免疫抑制薬としてTAC、CYA、AZA、バイオ製剤としてアバタセプト(ABA)など使用されています。投与を開始した場合は効果判定を早期に行い漫然とした長期投与は避けます。若年で呼吸不全を伴った場合肺移植も検討します。 DMARDsについては薬剤性肺障害の危険・頻度の高いレフルノミドの使用は控えるべきで、呼吸機能が不良、RAに関連したILDの既往、60歳以上、低アルブミン血症,糖尿病などの危険因子をもつ場合はMTXも薬剤性肺障害の危険が高く避けたほうがいいです。生物学的製剤(エタネルセプト・ゴリムマブ・TCZ・ABA)は、UIP合併例では肺感染症のリスクが高いことが明らかにされている一方、関節病変のコントロールが不十分であれば ILDそのものも悪化する可能性があり、これらを十分説明のうえ慎重に開始することを検討します。cNSIPであればステロイド単剤で有効例が多いですが、fNSIPではステロイドに初期治療反応性が良好であっても,しばしば再増悪を来すことがあり免疫抑制薬を初期から併用する場合が多いです。投与量はいずれもPSL初期量0.5~1mg/kg/日で開始し、再燃に注意しながら2~4週毎に5mgずつ漸減し、免疫抑制薬はCYA 2~3mg/kg/日、TAC 0.05~0.075mg/kg/日(保険適応用量 3mg/日)で開始し、血中濃度を見ながら調整します。ただし初期から免疫抑制薬を併用する場合、少量のステロイド(PSL 5~10mg/日)で開始することも考慮します。RAのfNSIPもUIP/IPF同様に線維化が慢性進行性の場合が多いです。RA-OPの治療に必要なエビデンスはないですが、経験的にPSL 0.5mg/kg/日を2~4週投与後に漸減していきます。多くの症例は治療反応性良好ですが、特発性OPより再燃する可能性が指摘されていて、ステロイド治療に抵抗性なものも少数例存在するとされ、その場合CYA、TAC、生物学的製剤の併用も考慮されますが結論が出ていません。 急性増悪はRA-ILDでも起き、危険因子はMTX 使用、高齢、HRCTでUIPパターンが挙げられ、RAの関節炎の活動性とは相関しないことも多いです。中央値8.5 年の観察期間で22%の患者に起き、死亡率は64%とIPFの急性増悪と同様に予後不良です。IPFの急性増悪の治療に準じステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン 500~1,000mg/日)の3日間点滴静注を病状の安定化が得られるまで1週間隔で1~4コース繰り返すことが多いです。さらに他の免疫抑制薬(CYA,TAC,AZA,CYC など)を加えることも検討しますがこれらの治療にエビデンスは乏しいです。
Sjögren症候群(SS)は、口腔内や角膜を主とした全身の乾燥症状を主症状とする自己免疫疾患で、病理学的に唾液腺・涙腺組織に主にT細胞、B細胞、形質細胞が浸潤し、腺房細胞の障害・萎縮を認めます。 RAの合併率は38.7%、 SLEは22.2%と報告されています。 日本の有病率は0.05%、発病年齢は40〜60歳、男女比は1:9で中年以降の女性に圧倒的に多いと報告されています。 肺病変は1.7~65%と報告があり、ILDと末梢気道病変が多いですが、臨床的に有意なものは約10%程度と推測されます。HRCT所見では中下肺野優位の分布をとることが多く、牽引性気管支拡張を伴うすりガラス影が主体のfNSIP パターンの頻度が高く、RAと同様に胸膜下優位の網状影が主体で牽引性気管支拡張や蜂巣肺による嚢胞を伴うUIPパターンも伴う例もあります。UIPとNSIPパターンなどがオーバーラップする例が多く、OPパターン、気腫合併、PPFE-like病変の合併も報告されています。上肺野かつ内層優位の陰影分布を示したNSIPパターンは、RAや薬剤性肺炎以外にSSも考えるべきです。多発肺嚢胞性病変も、リンパ増殖性肺疾患やアミロイドーシス以外にSSの頻度も高いです。ILDと細気管支病変の合併も多く検出には呼気CTが有用です。 病理報告ではNSIP 45%、UIP 16%、LIP 15%、OP 7%でした。ILD発症の危険因子は男性・60歳以上・喫煙歴あり・リウマトイド因子や抗 CCP抗体価の高値などです。5年生存率は80~90%と予後は良好で、UIPとNSIPとで予後に差はなく個々のパラメーターが重要です。低酸素血症、顕微鏡的蜂巣肺、高二酸化炭素血症、HRCT上の網状影の広がり、線維芽巣の程度などが予後因子として報告されています。 合併症は治療関連の感染症や肺高血圧とILDの急性増悪が重要です。年齢、低酸素血症、FVC、DLCOなどが急性増悪の予測因子にですが、軽症でも急性増悪の可能性があり,自覚症状がなくてもHRCTでの ILD の早期発見に努めます。 急速進行性で有症状のILDには、感染症の検索をしながらOP・cNSIPパターンのILDにはステロイド治療を積極的に導入します。慢性経過のILDには、時間経過での自覚症状、FVC、HRCT線維化の変化から疾患の挙動を見極めて治療適応を決めるべきです。
治療法に関して統一した見解は得られていませんが,第1選択薬はCSです。CS PSLの用量は1mg/kg/日から開始し、NSIPパターンではCSと免疫抑制薬併用の報告多く、欧米ではCYC、AZA、MMFなどが使用され、国内ではCNIのCYA、TACが使用されます。嚢胞陰影の合併が多いためステロイドの長期中等量以上の使用は避けたく、最近のわが国からステロイドパルス療法2コース後に低用量PSL 10mg+TAC投与は耐用性があり、多面的評価でも有用と報告されました。RTX 1gを0週と2週の2回投与ないし 375mg/m2を計4回投与で行われています。 既存の免疫抑制薬の使用継続が忍容性や有効性において困難な場合にRTXは選択肢のひとつとなりますが、保険承認されていません。その他ABT、ベリムマブ(BEL)、JAK阻害薬などの使用報告がありますが検討課題です。
混合性結合組織病(MCTD)はSLE様、SSc様、PM様の症状が混在し、血清学的に抗U1RNP抗体の高力価陽性を特徴とします。それぞれの基準を満たす場合は抗U1RNP抗体陽性でもMCTDと診断しないことが原則です。 20~65%がILDを呈し、NSIPパターンが最も多く胸膜下線状影の頻度が高いです。比較的まれに蜂巣肺が認められOP・UIPパターンも認められます。10%で認められる胸水はSLE様所見を呈する症例で多いです。 抗U1RNP抗体価がMTCD-ILDの間質性陰影の拡大と相関した報告があり、KL-6とSP-DはFVC 低下の予測因子でした。 ILD発症リスク因子は確立してませんが、MCTD-ILDの約90%に食道蠕動障害が認められ、胃食道逆流による不顕性誤嚥が発症リスクとなりえます。HLAとの関連の報告もあります。 5年生存率は1998年の日本の全国調査では 93.7%で、主な死因は肺高血圧、ILD、次いで感染症、悪性腫瘍です。ステロイドに対する反応性は良好で、急性間質性肺炎にはステロイド大量投与を行い、治療抵抗例には免疫抑制薬を併用します。慢性間質性肺炎の高活動性症例ではCYCが選択されることが多いです。イマチニブの有効性を示唆する報告はありますがエビデンスレベルは低いです。
全身性エリテマトーデス(SLE)関連の胸郭内病変は非常に多彩で、胸水・心嚢水などの漿膜病変や横隔膜の機能障害、びまん性肺胞出血、急性ループス肺炎、急性/亜急性あるいは慢性ILD、肺胞蛋白症などです。気道病変、肺高血圧症を合併する症例もみられます。頻度は3~13%とされますが、HRCTでは32%に認めたという報告もあり、軽症例も含めるとまれな病態とはいえません。急性ループス肺炎はわが国では0.5~1.1%とまれですが,予後を左右する重要な臓器障害で、少数例ですが亜急性に進行するOPも報告されています。 ILDの有無の判定にKL-6とSP-Dが有用ですが、日和見感染症や薬剤性肺障害においても上昇することがあるため注意を要します。またBALも重要で、びまん性肺胞出血(DAH)における赤色BAL液 や,肺胞蛋白症における米のとぎ汁様白色BAL液は診断に直結します。 急性ループス肺炎は発熱、乾性咳漱、呼吸困難、頻呼吸、胸痛 、血痰など非特異的症状ですが死亡率約 50%とされ、人工呼吸器を要するほどの急性呼吸不全になることもあり、急性期離脱後に慢性化するケースもあります。 呼吸器症状も軽度で肺病変の進行もないケースでは、無治療で経過観察も選択肢となりますが、肺病変が広範囲に存在や呼吸不全を伴うケースや急速進行性の場合には早期の治療開始が肝要です。当初は複数の抗菌薬も併用したステロイド投与を考慮します。DAHや急性ループス肺炎などの急速進行例では,ステロイドパルス療法を開始3日後の呼吸状態、胸部画像所見、血清LDHなどを参考として治療方針を再検討します。抗dsDNA抗体価、血清補体価、肺外病変によるSLEの活動性も参考としますが、エビデンスレベルの高い確立した治療は存在しません。 急性ループス肺炎には大量ステロイド、呼吸不全合併時はパルス療法、呼吸不全の合併がない場合はPSL1~1.5mg/kg/ 日で治療を行いますが予後は不良です。ステロイドの反応が不十分な場合はIVCYあるいはMMFの追加治療を行い、これらに不応性の場合CNI、AZAなどの免疫抑制薬、さらにRTX、IVIG、血漿交換療法の併用が行われます。慢性ILDには感染・重複症候群などに留意しながらステロイドによる治療が行われ、反応性が乏しい際はCYC、MMF、AZA、RTX の使用が試みられます。すでに不可逆的な肺の線維化を生じている際の治療は困難で、できる限り免疫抑制療法は減量・中止が求められます。重症の呼吸器感染症の合併、あるいは除外が困難な際にはIVIG の選択が考慮されます。
わが国のANCA関連血管炎(AAV)は高齢で、MPO-ANCA陽性率が高く、MPAの罹患率が GPAより高いといった特徴があります。日本人のGPAにMPO-ANCA陽性率が比較的高く、PR3-ANCA陽性のMPAやMPO-ANCA陽性の GPAが存在し、必ずしも疾患とANCAが1対1対応とはならず、MPO-ANCAは薬剤誘発性血管炎や粉塵吸入誘発血管炎などでも陽転化します。 MPAではDAHやILDが多く、GPAでは気道狭窄などの気道病変や肺内結節陰影、空洞性陰影、DAHを認め、EGPAは多くは喘息が基礎にあり、好酸球性肺炎やDAHなどを呈します。また全身血管炎を伴わずANCAのみ陽性である ILD患者が存在し、近年ANCA-associated interstitial pneumonia without vasculitis という概念も提唱されています。AAVのILDの発症機序は不明です。 MPAに肺病変は46%に認められ,DAHは10.6 %に認められました。欧州と比較して日本のほうが肺病変、特にILDの頻度が高くDAHの頻度は低く遺伝学的な要因によると推測されています。 MPO-ANCA陽性ILDの特徴は、高齢男性に多く、5ヵ月から数年ILDが先行しMPAに進展する例が22~35%存在し、病理学的にUIPパターンが主体の組織所見が多くを占める(80%)ものの水腫様の線維化やNSIPパターンの混在し、リンパ濾胞の形成ならびに細気管支炎の合併など多彩でCTD-ILDに類似しています。壊死性血管炎はまれにしか証明されず、肺生検組織からの血管炎診断が難しいことが示唆されています。予後は5年生存率が50~60%と不良と示されています。 IIPsの8.5%でMPO-ANCAが陽性で、陽性例の24.3%は後にMPAに進展し、陰性例でMPAを発症した例はいなかったと報告されました。初診時ANCA陰性でIIPsと診断された症例においても、定期的にANCA関連血管炎を疑う臨床所見(糸球体腎炎、皮膚血管炎、末梢神経障害など)が新たに生じていないか評価し、臨床的に疑われる場合ANCA測定などが必要と考えられます。 胸部CTでは51%にILDを認め、そのうち61%が UIPもしくはpossible UIPパターンで、IPFでは通常認められない軽微な浸潤影や気管支壁肥厚が10%、嚢胞が4%、蜂巣肺周囲や牽引性気管支拡張周囲のすりガラス影が14%認められました。 寛解導入治療の標準治療はステロイド+CYCで、静注CYCパルス療法が経口CYC より安全性の面から優先されます。RTXも治療薬の候補ですが重症感染症の合併に注意が必要です。高齢者、副作用のリスクが高い場合、重症臓器病変がない場合はステロイド単独の場合もあります。重症な腎障害や肺胞出血を伴う AAVでは、血漿交換を併用で予後の改善が示され考慮すべき治療法です。 寛解維持治療は低用量のステロイドとAZAが推奨されます。 ANCAのみ陽性で他臓器病変を認めない症例の治療は定まった推奨がなく、病理学的に細胞浸潤の多いNSIPパターンならステロイド治療を優先し,細胞浸潤の乏しいUIPが主体なら抗線維化薬が優先されます。しかし高齢者に多い疾患でVATS肺生検のリスクを慎重に評価し、リスクとベネフィットを勘案し生検を検討すべきです。
IPAFは2015年に提唱された概念で、鑑別可能な疾患の除外されたILDが存在し、いずれの膠原病の基準も満たさず、臨床ドメイン、血清学ドメイン、形態学ドメインのうち 2 つ以上を満たすことです。臨床ドメインには機械工の手、指先潰瘍、関節炎または60分以上朝のこわばり、手掌の血管拡張、レイノー現象、原因不明の手指の腫脹、ゴットロン徴候の7つの所見のいずれかを満たすことです。血清学ドメインは、膠原病に関連する自己抗体の評価が含まれ、抗核抗体(ANA)はdiffuse、homogeneous、speckledパターンでは特に高齢者では健常者でも上昇するため,320倍以上を基準とします。形態学ドメインは、HRCTによるILDのパターン、外科的肺生検の病理組織学的特徴、マルチコンパートメント所見(画像・病理組織、右心カテーテルまたは呼吸機能検査により評価された追加の肺病変)より構成されています。 治療管理の明確な指針はなく、抗炎症薬に加え抗線維化薬も治療戦略のひとつとなることが見込まれます。 IPAFの予後はIPFに比し良好との報告が多いですが、UIPを呈するIPAFはIPFと予後に差がない報告が多いです。 IPF以外のIIPsあるいはその他の膠原病も含むILDsのなかに、IPFと類似の進行性線維化性の臨床経過を呈し、ステロイド・免疫抑制薬でも線維化が進行し、肺機能が低下し症状が悪化・予後不良のフェノタイプが存在し、「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」 としてニンテダニブが承認されました。
CTD-ILDに肺高血圧症を合併すると予後不良との報告が多く、特に合併頻度が高いSSc、MCTD、SLEにおいてはスクリーニングを行うことが望ましいです。スクリーニングにはドプラ心エコー検査、肺拡散能(DLCO)や胸部CTにおける肺動脈幹分枝レベルでの主肺動脈径などが参考になります。ドプラエコーで測定された三尖弁逆流速度(TRV)>3.4m/ 秒、もしくは推定右室収縮期圧(eRVSP)>50mmHg の場合には肺高血圧症が存在する可能性が高いです。TRV≦3.4m/秒もしくは eRVSP≦50mmHg の場合でも、肺動脈弁逆流の流速上昇、右室から肺動脈への流出血流の加速時間短縮、右房を含めた右心系の拡大、心室中隔の扁平化、右室壁肥大や肺動脈主幹部の拡大など肺高血圧症合併を示唆する所見を認める場合には肺高血圧症が存在する可能性があります。 肺高血圧症の確定診断は右心カテーテル検査で平均肺動脈圧(mPAP)>20mmHgかつ肺血管抵抗(PVR)≧3 wood units (WU)を確認することが必要で、肺高血圧症に対する治療を検討する場合には行うことが望ましいです。膠原病に伴う肺高血圧症では、第1群~第5群すべての要素が関わっている可能性があるため病態は複雑で、特に第3群の要素の評価が望まれます。CTD-ILDに合併する肺高血圧症に対する肺血管拡張薬の有効性はいまだ確立されてはいませんが、効果を示す場合もあるため、病態に肺動脈性肺高血圧症(PAH)の要素が大きいと考えられれば慎重に投与を行ってもいいです。ただし酸素化や運動耐容能の悪化などがみられる場合があり注意が必要です。第3群の要素が大きいと考えられる場合、特にSLE、MCTDなどでは、免疫抑制治療が肺高血圧症に対しても効果を示すことがあります。日本の調査ではMCTDで7.0%、SScで5.0%、SLEで1.7%で、PM/DMにはみられませんでした。